初級翻訳・若草物語 第15話

オルコット ルイーザ・メイ

靴を履きながら、エミイは言い返しました。
「メグお姉さんがいいって言ったんだから、あたし行くわ。自分の切符は自分で買うから、ローリイに迷惑はかけないもの」
「あたしたちの席は指定席なのよ。それに、あなた一人を離しておくわけにはいかないし、そうするとローリイが自分の席を譲ることになるわ。それじゃつまらないでしょう? もしかしたらローリイが切符をもう一枚買うかもしれないけれど、そんなのずうずうしいわ。だから、おとなしく待っていらっしゃい」
 ジョウは仕度に慌てていて針で指を刺してしまい、ますます不機嫌になってエミイを叱りつけました。エミイが泣き出すのをメグがなだめていると、階下でローリイが二人を呼ぶ声がしたので、姉妹は急いで降りていきました。
 二人が出かけていくのを窓から見下ろしながら、エミイはおどかすように叫びました。
「今に後悔するわよ。ジョウ、覚えていらっしゃい!」
「ばかなことを!」
 ジョウがやり返して、玄関の扉をぴしゃりと閉めました。

「七つの城」のお芝居はとても素晴らしく、三人は楽しく観劇しました。けれどジョウは、ときどき綺麗な王子や王女に見とれながらも、心に暗い影がさすのを感じていました。妹の「後悔するわよ」という言葉が、不吉な響きとなって耳に残っていたからです。
 ジョウとエミイは、前からよく激しい喧嘩をしていました。二人とも気が短く、カッとなるとひどい言い合いになってしまうのです。けれど、二人とも長く怒り続けることはなく、喧嘩のあとには仲直りしようとするのですが、日が経つとまた同じことを繰り返してしまうのでした。

 二人が家へ帰ったとき、エミイは知らん顔をして本を読んでいました。ジョウは帽子を二階へしまいに行きましたが、以前喧嘩をしたときにエミイが引き出しをひっくり返したことがあったので、念のためタンスやカバン、棚の上などを調べてみました。しかし、何事も変わった様子はなかったので、ジョウは「エミイはもう許してくれたんだ」と思いました。
 けれど、それはジョウの思い違いであることが、翌日になって分かりました。
 その日の午後、ジョウは血相を変えて、メグとベスとエミイが話し合っている部屋へ飛び込んできて、息を切らして尋ねました。
「誰か、あたしの原稿をとった?」
 メグとベスは「いいえ」と答えましたが、エミイは炉の火をつついて黙り込んでいました。
「エミイ、あなたですね?」
「あたし、持ってないわ」
「じゃあ、どこにあるの?」
「知らないわ」
「うそつき! 知らないとは言わせないわ。さあ、早く白状しなさい。白状しないの?」
 ジョウはものすごい剣幕で怒鳴りました。
「いくらでも怒ればいいわ。あんなつまらない原稿なんか、もう出てこないわよ」
 エミイは、どうにでもなれというような投げやりな言い方をしました。
「どうして!」
「あたしが燃やしちゃったから」「なんですって!? あんなに一生懸命苦労して、お父様が帰ってくるまでに書き上げようとしていた、あの大切な原稿を、本当に燃やしちゃったの!?」

ジョウは顔を真っ青にし、目を血走らせて、震える手でエミイに飛びかかりました。

「ええ、燃やしたわよ! 昨日の夜、あたしにいじわるしたからよ。覚えておきなさいって言ったでしょう!」

ジョウは、悲しみと怒りで頭に血がのぼり、叫びました。
「バカ! バカ! もう二度と書けないのよ! あたし、一生あなたを許さないから!」

メグもベスも、ただおろおろするばかりで、どうすることもできませんでした。
ジョウはエミイの頬をひっぱたくと、勢いよく部屋を飛び出し、屋根裏部屋のソファに突っ伏して激しく泣きました。

お母さんは家に帰ってきてその話を聞くと、エミイを厳しく叱りました。
エミイも、自分がなんて悪いことをしてしまったんだろうと反省しました。
けれど、ジョウの原稿は、五、六編の可愛らしいおとぎ話ではあったものの、自分の文才とすべてのエネルギーを何年も注ぎ込んで書き上げたものでした。ジョウにとってそれは、二度と取り戻せない大損失だったのです。そのため、夕食のお茶を知らせるベルが鳴ったとき、ジョウはこれ以上ないほど怖い顔をして部屋から出てきました。

エミイは、ありったけの勇気を振り絞って、
「ジョウお姉ちゃん、ごめんなさい。あたし、本当に悪いことをしちゃったわ」と謝りました。
しかしジョウは、冷たく、
「許してあげるもんですか」と答えるだけで、エミイの相手をしようとはしませんでした。

他の誰も、この大事件について口を開こうとはしませんでした。ジョウの怒りが収まるまでは、何を言っても無駄だと分かっていたからです。
そんなわけで、その日の夜はちっとも楽しくなく、みんな黙ったまま針仕事をしていました。
お母さんが面白いお話をして聞かせても、どこか物足りなさが残り、家の中の平和はすっかり乱れてしまっていました。
重苦しい空気は、メグとお母さんが歌を歌ってみても、少しも晴れません。

お母さんは、ジョウにおやすみのキスをするとき、優しい声でこう囁きました。
「ねえ、怒りを明日まで持ち越さないように、今夜のうちに機嫌を直しましょうね。お互いに許し合って、助け合うのよ。明日からはまた、楽しく過ごしましょうね」

ジョウはお母さんの胸に顔をうずめました。
悲しみも怒りも、涙と一緒にすべて洗い流してしまいたかったのです。
けれど、心の傷があまりにも深すぎたため、ジョウは首を横に振り、エミイに聞こえるような大声で言いました。
「あんなにひどいことをされたんですもの、絶対に許せませんわ!」
そう吐き捨てると、ジョウはさっさと寝室へ行ってしまいました。こうして、その夜は重苦しい空気のまま終わったのです。

次の日になってもどんよりとした空気は消えず、みんなつまらなそうに過ごしていました。
ジョウはまだぷんぷん怒っていて、ローリーを誘ってスケートにでも行こうと、家を出ていきました。
エミイは、自分から進んで謝ったのに、ジョウがまだ怒り続けているのを見て、ますますへそを曲げてしまいました。

メグはそんなエミイに向かって言いました。
「あなたが悪かったのよ。あんなに大切な原稿を台無しにされたんだもの、すぐに許せないのも無理はないわ。でも、良いタイミングを見計らって、もう一度謝ればいいと思うの。だから、あなたもスケートに行ってごらんなさい。ジョウがローリーと遊んで機嫌が良くなったところで、ジョウにキスをしたり、何か優しいことをしてあげるの。そうすれば、きっと心から仲直りしてくれるはずよ」

このアドバイスが気に入ったエミイは、いそいそと支度をして、ジョウの後を追いかけました。
川まではそれほど遠くありませんでしたが、エミイが着いたときには、二人はもう滑る準備を済ませていました。
ジョウはエミイの姿を見つけると、ぷいっと後ろを向いてしまいました。
ローリーはエミイが来たことに気づかず、氷の厚さを調べるために、氷の響く音に耳をすませながら、用心深く岸に沿って滑っていきました。

ローリーは川の曲がり角を曲がるとき、
「岸に沿ってついておいで! 真ん中は危ないぞ!」
と叫び、そのまま姿が見えなくなりました。

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