「どこかに隠れているんだろう」と乙が言いました。
そしていつまで待っていても、太郎の姿は見えませんでした。その日はそれで帰りましたが、また次の日になっても太郎の姿は見えませんでした。学校へ行っても、家へ帰ってから出かけていっても、とうとう太郎の姿は見えませんでした。子どもたちは口々に「どうしたんだろう」と言い合っていました。
するとそこへ、隣村から見知らぬ男の人が子どもたちの遊んでいるところへやってきて言いました。
「おい、お前たちはよく太郎とけんかをしていたが、太郎はもういなくなったぞ」
その男の人がそう言いました。子どもたちは顔を見合わせて、その見知らぬ男に尋ねました。
「おじさん、太郎くんはどこへ行ったんだい?」
「どこへ行ったか私も知らない。太郎は遠くへ行ってしまったんだ」と、その男は言いました。子どもたちは不思議でたまりませんでした。
しかしある日、雨が降った翌日が晴れの日になり、雪の上は鏡のように堅く凍って、どこまでも歩いていけるようになりました。村の子どもたちはちょうど日曜日だったこともあり、みんな連れ立って歌いながら雪の野原を越え、はるかかなたに海が見える方までやってきました。すると、かなたには灰色の海が物悲しく見えて、その沖の方は暗く、ものすごい様子でした。
「ああ、これは太郎が吹いていたハーモニカだ。こんなところに落ちていたよ」
そう言って乙は、雪の上に落ちていたニッケル製のハーモニカを拾い上げました。それはいつか太郎が吹いているのを見て、見覚えのあるものでした。
「どうしてこんなところに落ちていたんだろうね」と丙が言いました。
「きっと太郎は海のあっちへ行って、自分の味方を連れてくるんだ。そして、仕返しをするんだろう。そう思うと恐ろしいな」と乙が言いました。
みんな、恐怖を抱いて海の方を眺めました。そして大声を上げて村の方へ逃げ帰りました。寒い北風が吹いています。
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