初級翻訳・虹猫の話 第2話

ファイルマン ローズ

お前はいったい、何ができるって言うんだ?」
「わたしには、あなたの心の中がすっかりお見通しなのさ」
「ふーん、そうかい。
じゃあ、今このおれが何を考えているか、当ててみなさいよ!」
「そんなの、わけもないことさ。
あなたは自分の足をケガしたことに腹を立てて、足をぶつけさせたあいつを掴(つか)まえてやろうって、今まさに思っているんじゃないのかい?」

――実はこれ、七色の虹猫がさっきツバメからちゃーんと聞いて知っていたことでした。
雷様はびっくり仰天(ぎょうてん)しました。
「うおっ、こいつは驚いた!
おい、そのスゴい術を、おれにも教えてくれないか?」
「それはもちろん、教えてあげてもいいけれどさ。
でもまずは、お前に魔法の才能があるかないか、テストをしてみなくちゃいけないね。
さあ、そこに座りなさい!」

雷様は、言われるがままにちょこんと座りました。
七色の虹猫はそのまわりをグルグルと三びんまわると、口の中でなんだかわけのわからない呪文をぶつぶつとつぶやきました。
「さあ、言ってみてごらん。
わたしが今、何を考えていたか当ててみなさい!」と、猫はききました。
大男の雷様はぼんやりした顔で、猫の顔を見上げました。
なにしろ雷様は、あまり頭がよくないのです。
「たぶんお前は、『おれがこんなところでぼんやり座っているなんて、すっごくバカげているな』って考えていたんだろ?」
「すばらしい!
たまげたねえ。
それだけの頭があるなら、修業して一人前になる見こみは十分にあるぞ!
わたしは今まで、こんなに頭のいい弟子を持ったことがないよ」
「じゃあ、もう一回やってみるか?」
雷様は、すっかり自分がものすごく賢いと思い込んでしまいました。
「よろしい。
じゃあ、今のわたしが何を考えているか、また当ててごらん!」

雷様はなんだか賢そうな顔を作って、その小さくてバカげた目で、ぼんやりと虹猫の顔をジッと見つめました。
「ビフテキとタマネギ!」
と、雷様は突然、大声で叫びました。
「こりゃすごい!」
猫は、まるで本当にびっくりしたかのように大げさに言って、しりもちをつきました。
「すっかり当たっちまったよ!
どうしてそんなことが分かったんだい?」
「いや、なにね、ふっと心の中に思い浮かんだだけさ」と、雷様は得意げに言いました。
猫はとってもまじめな顔を作って、こう言いました。
「あなたはそのすばらしい才能を、これからしっかり育てていかなくちゃいけないね。
これはもう、ものすごい才能だよ!」
「どうやって育てるんだい?」と、雷様はワクワクしながらききました。
人の心をよむなんて、なんだかすごく愉快(ゆかい)なことだと思ったのです。
「なんでもないさ!」
猫は、「しめた!」と心の中でほくそ笑みながら、さらに出まかせをペラペラとしゃべりました。
「おうちに帰って、まず二、三時間はぐっすり寝るんだ。それからちょっとお菓子を食べて、また二、三時間は眠る。そのあとで目が覚めたら、あついお茶を一杯のむんだよ。
だけど、おとなしくジッとしていないとダメだよ。
そうさえすれば、明日の朝にはきっと、誰の心でもカンタンに読めるようになるからね!」

雷様は、今すぐおうちに飛んで帰りたい気持ちでいっぱいになりました。
でも、さすがに礼儀だけはちゃんとわきまえています。
「どうもありがとう!
だけどニヤンプウ子先生、これを教えていただいたお礼に、いったい何を差し上げたらいいだろうね?」
七色の虹猫は、少しの間わざとらしく考え込んでから、こう言いました。
「わたし、ちょっとばかり『いなづま』が欲しいんだよね。だから、ほんのちょっぴり分けてくれないか?」

大男の雷様はポケットに手ををつっこむと、
「そんなの安いもんさ!
それじゃあここに一束(ひとたば)あるから、これを持って行きなよ。
何か用があるときは、その結んであるヒモをほどけば、おもしろいようないなづまが飛び出すからさ!」と言いました。
「どうもありがとう!」
そう言って、七色の虹猫はいなづまをひとたば受け取り、二人はていねいにガッチリと握手をしてお別れをしました。

大男の雷様は、大いそぎでおうちに帰ると、言いつけられたとおりのことをさっそく実行しました。
それからというもの、雷様は「自分は何でも人の心を当てることができるんだ!」とすっかり信じ込んでしまいました。
そのおかげで、雷様はすっかりおとなしくおさまりかえり、もう誰にも、めったな迷惑をかけなくなったのでした。
そして七色の虹猫は、もらったいなづまの束をしっかり持って、すぐにお城へと帰っていったのです。そこにいた人たちは、猫がしてくれたことを心から喜び、口々にありがとうとお礼を言いました。
虹猫もすっかり大満足して、一週間のあいだ雲のお宮に滞在してから、自分のおとぎの国へと帰っていきました。
そのあとで、またどんな出来事が起こったのかは、次の機会にお話しすることにしましょう。

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