翌年の春になると、この小さな山吹の根もとから、今度は新しく元気な芽が土を破って、力強く頭を伸ばしてきました。
しかも、二本、三本とそろって、その芽は見ていて気持ちがいいほど、ぐんぐんと勢いよく伸びていったのです。
「お母さん、山吹の木から、あんなにたくさん新しい芽が出ましたよ!」
と、勇二はまたお母さんに報告しました。
お母さんは、勇二が教えるよりも前から、すっかりそれに気づいていたようでした。
「ああ、あれは山吹の可愛い子供たちなんだよ」
とお母さんは優しく言いました。
「お母さん、それじゃあ、この小さくいじけた木が、あの子供たちの親なんですか?」
と、勇二は今さらながらびっくりして、目の前の親の山吹に目を向けながらたずねました。
「おまえが昔、あっちの家からもらってきて、一生懸命お世話して育てたからこそ、こんなに立派でいい子供たちが生まれたんだよ」
とお母さんは答えました。
お母さんのその言葉を聞いて、勇二は心から感心したのでした。
それと同時に、これまでのいろいろな出来事が、頭の中に次々と浮かんできたのです。
新しい若芽たちは、毎日ぐんぐんとお空に向かって伸びてゆきました。
そしてやがて、季節が来ると、枝いっぱいにまぶしい黄金色の花をたくさん咲かせたのです。
けれど、その一方で、一生懸命育てた親木は、元気な子供たちにすっかり圧倒されてしまい、地面を這うように倒れ、葉っぱは泥で汚れてしまって、昔の面影もないほど見る影もなくなっていたのでありました。
「お母さん、この親木なんだかすごくかわいそうですね……」
と、勇二は切なそうに言いました。
「いい子供たちが無事に育ってくれたから、親木はもうそれで大満足して、静かに役目を終えていくんだよ。人間の世界だって、これとかわりはないんだよ」
とお母さんは優しく言いました。
勇二は、このとき、孝ちゃんの家からあのボロボロの山吹をもらってきたときの昔の姿を、ふと思い出していました。
しかし、いま目の前にある新しい山吹たちは、そんな昔の苦労なんて何も知らず、たくさんの花を咲かせ、まわりにはちょうちょやハチたちが楽しそうに集まっているのでありました。
――一九二六・二――
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