四
また、もう二歩三歩で豆小僧が悪魔につかまえられそうになるという、危ない目にあいましたので、今度は三枚目の大般若のお守り札をそこへ投げました。
すると、豆小僧と悪魔のあいだに、さっと一つのおおきな大きな川ができました。
悪魔はもう一歩と足を踏み出しかけたところへ、急に大きな川ができたものですから、勢いがついてあぶなくその川の中へ落ち込むところでした。
川には水がみなぎるほどたたえられていて、その流れの早いことは、浮いているちりやゴミが矢を射るよりも早く流れ去るのを見てもよく分かりました。
おまけに、向こう岸まで一体何里あるか分からないほどの広さでした。
さすがの悪魔もぼんやりとしてそこに立ったきり、呆れて見ていましたが、たちまち何やら呪文をとなえると、大きな魚の姿になって、ざあざあ波を立てながら、その広い川を一瞬のうちに泳ぎきって向こうへ渡ってしまいました。
もうお寺はすぐ前に見えています。
豆小僧は一生懸命ちょこちょこと走りますが、なにしろ小さな足で走るので、なかなか進みません。
ぐずぐずしているうちに、大川を渡った悪魔がすぐに追いついて、もう二歩三歩でえりかたをつかまえるというところまで近くに迫りました。
豆小僧は今度こそと、四枚目の大般若のお守り札を投げますと、土の中からポッと火が出て、あたり一面が激しい炎となりました。
悪魔は不意を打たれて、手や足や顔にやけどを負いました。
けれども、そんなことではへこたれません。
何やら口で呪文をとなえると、あんなに燃えさかっていた火も見る見るうちに消えて、あとにはただ炭と灰だけが残りました。
「今度は逃がさんぞ!」
悪魔は大風が吹くようなすごい音をたてて豆小僧を追いかけました。
「和尚さん、助けて! あれあれ、悪魔が来ます、追っかけてきます!」
豆小僧は泣き声をあげて必死に走りました。
早くは進めませんが、それでもお寺の門にあと一歩でとどくというところになりました。
しかし悪魔の手も、あと一尺のびれば豆小僧のえりかたをつかまえるというところまで迫りました。
ああ、危ない、危ない!
そのとき和尚さんが門の内から走り出して、何やらお経を読みながら悪魔の頭を数珠(じゅず)で打ちますと、悪魔の姿は煙のようにスーッと消えてしまいました。
豆和尚さんはそのあと、決して豆小僧を山へ柴刈りに行かせないようにしたのでした。
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