外はもうだいぶ明るくなっていて、土は濡れていました。家の前の栗の木の列は変に青く白く見えて、それがまるで風と雨とで今から洗濯でもするかのように、激しく揉まれていました。青い葉も二、三枚飛び、吹きちぎられた栗のイガは、黒い地面にたくさん落ちていました。空では雲が険しい銀色に光り、どんどん北の方へと吹き飛ばされていました。
遠くの林はまるで海が荒れているときのように、ゴトンゴトンと鳴ったり、ザアッと音が聞こえたりしていました。
一郎は顔や手に冷たい雨の粒を投げつけられ、風に服まで持っていかれそうになりながらも、黙ってその音を聴きすまし、じっと空を見上げました。
もう又三郎は行ってしまったのだろうか、それともこの間約束したように、誰かが目を覚ますまで少し待っていてくれたのだろうか。そう考えると、一郎はとても寂しく、胸がサラサラと波を立てるように感じました。
けれど、もう一度じっとその鳴り、吠え、唸りながら通り過ぎていく風を見ていると、今度は胸がドカドカと高鳴ってくるのでした。
昨日まで丘や野原の空の底で、澄みきって静かだった風たちが、今朝の夜明けとともに急に一斉に動き出し、どんどんタスカロラ海溝の北の端を目指して駆けていく。そう考えると、一郎は顔がほてり、息もハアハアと荒くなり、自分までが一緒に空を駆けていくような気持ちで胸をいっぱいに張り、両手を広げて叫びました。
「ドッドドドドウ、ドドドウ、ドドドウ。甘いざくろも吹き飛ばせ、すっぱいざくろも吹き飛ばせ。ドッドドドドウ、ドドドウ、ドドドウ。ドッドドドドウ、ドドド、ドドドウ」
その声は、まるで細切れに風に引き裂かれて持っていかれましたが、それと一緒に後ろの遠くの風の中から、こういった声が途切れ途切れに聞こえたのです。
「ドッドドドドウ、ドドドウ、ドドドウ。
楢(なら)の木の葉も引きちぎれ、
栃(とち)も胡桃(くるみ)も吹き落とせ。
ドッドドドドウ、ドドドウ、ドドドウ」
一郎は声がした栗の木の方を見ました。
突然、頭の上で「さよなら、一郎さん」と言ったかと思うと、その声はもう向こうのヒノキの垣根の方へ行っていました。
一郎は高く叫びました。
「又三郎さん!
さよなら!」
垣根のずっと向こうで、又三郎のガラスマントがギラッと光り、それからあの赤い頬と乱れた赤毛がチラッと見えたかと思うと、もうスウッと姿が見えなくなり、ただ雲がどんどん飛んでいくだけでした。一郎は背中いっぱいに風を受けながら、手をそちらへ伸ばして立っていました。
「ああ、猛烈な風だ。今度はすっかりやりやがる。一郎、濡れるぞ、早く入れ」
いつの間にか、一郎のおじいさんが潜り戸のところで空を見上げて立っていました。
一郎は早く支度をして学校へ行き、みんなに又三郎のさよならを伝えたいと、少しもどかしい気持ちを抱えながら、急いで家の中へ入りました。
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