こちらも黄金怪人、向こうも黄金怪人、ウリ二つの黄金怪人が、ふたりあらわれたのです。
「まてっ!」こちらの黄金怪人が、恐ろしい歯車の声で、どなりつけました。
すると、向こうの怪人は、ぎょっとしたように、こちらを見て、立ちどまりました。
十メートルをへだてて、そっくり同じ黄金怪人が、まっ正面から、にらみあったのです。
じつになんともいえない、ふしぎな光景でした。
「ウヘヘヘ……。
」
向こうの黄金怪人が、歯車の音で、笑いました。
おかしくてしかたがないというように、金ピカのからだをゆすって、大わらいをするのでした。
そして、こちらのふたりが、あっけにとられているうちに、さっと、向きをかえると、まるで、金色の風のようなはやさで走りだし、岩の廊下の向こうの角を、まがってしまいました。
こちらの黄金怪人と部下とは、すぐに、そのあとを追っかけましたが、角をまがっても、もうそのへんには、だれもいません。
そのさきは、廊下が二つにわかれているので、どっちへ逃げたのか、わからないのです。
「おいっ、ほかのものを、みんなあつめろっ。
そして、手わけをして、さがすのだ。
はやくしろっ。
」
魔法博士の命令で、黒覆面の部下は、ほかの部下たちをあつめるために、そのほうへ、かけだしていきました。
あとにのこった魔法博士の黄金怪人は、ふと気がついて、明智探偵を、とじこめてある牢屋をしらべてみようとおもいました。
ひょっとしたら、明智が牢屋をぬけだして、黄金怪人にばけたのではないかと、考えたからです。
魔法博士が、牢屋の前にいってみますと、鉄ごうしの中のむこうのすみに、シャツ一枚の明智探偵が足をなげだして、壁によりかかり、うとうとと、いねむりをしていました。
すると、やっぱり、あの黄金怪人は明智ではなかったのでしょうか。
なんだか、えたいのしれない、へんてこなできごとです。
「おい、明智先生、きみは、ずっと、ここにいたのだろうね。
」
魔法博士が、歯車の声で、どなりました。
すると、明智は目をひらいて、大きなあくびをしながら、めんどうくさそうに、答えるのです。
「なにをいっているんだ。
かぎがなければ、ここから出られるはずがないじゃないか。
せっかく、いい気持でねむっているのに、じゃまをしないでくれ。
」
そして、またうとうとと、ねむりはじめるのです。
魔法博士は、あきれたように、腕ぐみをして考えこんでしまいました。
びっくり箱
そこで、またしても、広い地底世界の大捜索がはじまりました。
二十人の部のうち、七人は怪人のために麻酔剤をかがされたので、やくにたちませんが、残っている黒覆面の部下が、手わけをしてさがしまわったのです。
魔法博士の黄金怪人も、三人の部下をつれて、地底の洞窟をさがしました。
あのインド奇術をやってみせた広い洞窟です。
しかし、そこにも、あやしいものは見あたりません。
すると、そのとき、洞窟の入口の向こうから、「わーっ。
」という声が聞こえてきました。
そして、ひとりの部下が、あわただしく、かけこんできました。
「先生! いました。
金いろのやつが、あらわれました。
いま、みんなで追っかけているところです。
すぐに、おいでください。
」
魔法博士は、それをきくと、「よしっ」と答えて、いきなり、かけだしました。うす暗い岩の廊下を曲がっていくと、その先に黒覆面の部下たちがたくさん集まっていて、黄金怪人を両側から挟み撃みにしているのがわかりました。
魔法博士の黄金怪人は、部下たちをかきわけて前に出ました。
またしても、そっくり同じ姿をした二人の黄金怪人が顔を合わせたのです。
「ウハハハ……、とうとう捕まえたぞ。
おいお前たち、こいつのよろい服を脱がせて、正体を暴いてやれ! 中からいったいどんなやつが出てくるのか、わしはそれが楽しみで仕方がないよ。
ウハハハハ……」
魔法博士が、ざまあみろと言わんばかりに、大きな声で笑いました。
「ウフフフフ……、そうはいかないさ。
ここがどこだと思っているんだ。
ほら、これを見ろ。
おれは、ここまでみんなをおびき寄せたのさ。
そして、きさまが作ったびっくり箱を、今度はこっちが利用する番というわけさ」
そう言うが早いか、向こうの黄金怪人はそこにある巨大な観音開きのドアに近づき、いきなりそれを開けて飛び込むと、中からピシャリとドアを閉めてしまいました。
それはかつて、一頭のゾウが突然姿を消した、あの不思議なコンクリートの部屋だったのです。
何者とも知れない黄金怪人は、この魔法の部屋を逆に利用して、自分の姿を消すつもりなのでしょう。
それを見た魔法博士の黄金怪人は、「あっ!」と驚きの声をあげ、観音開きのドアの前に駆け寄って開けようとしましたが、扉が壊されていて、外からは開かなくなっていました。
あの黄金怪人が、あらかじめ扉を壊しておいたに違いありません。
部下たちが力を合わせてドアに体当たりしてみましたが、恐ろしく頑丈なドアなので、そんなことではびくともしません。
「だれか工作用の道具箱を持ってこい!」
魔法博士の命令で工具箱を持ってきていろいろと試してみましたが、どうしても開きません。
そうこうしているうちに三分、四分と時間が経ち、やがてドアが中からサッと開け放たれました。
観音開きの扉が両側に開いた部屋の中をひと目見た瞬間、魔法博士も部下たちも「あっ!」と叫んで、たじたじと後ろへ飛びさがりました。
じつにとてつもない出来事が起こったのです。
巨大なびっくり箱の中には、十数名の制服を着た警察官たちが、それぞれピストルをかまえてピシリと整列していたのです。
たったひとりの黄金怪人が、あっという間に十数名の警察官の一団へと早変わりしてしまったのです。
魔法博士と部下たちは岩壁に背中をぴったりとくっつけ、両手を頭の上にあげていました。
不意に十数丁ものピストルを向けられたのですから、どうすることもできません。
ひとりの人間が十数人に早変わりするこの巨大なびっくり箱は、いったいどのような仕組みになっているのでしょうか。
手品のタネはどこにあるのでしょうか。
やがて、その手品のタネが、みんなの目の前にハッキリと現れてきたのです。
警察官たちがピストルを構えたまま観音開きのドアの外へ出ていくと、部屋の中からモーターが回るような「ビューン」という音がかすかに聞こえてきました。
そして、不思議なことが始まったのです。
開いたままのドアの上の方から、厚いコンクリートの棚のようなものが、静かに下へ降りてきました。
そして、その棚の上にピカピカと光る二本の足が立っていたのです。
黄金怪人の足でした。
コンクリートの棚が下へ降りてくるにつれて、足から腰、腰からお腹、お腹から胸へと、金ピカの怪人の全身があらわれてきました。
これで、びっくり箱の秘密がすっかりわかりました。
部屋が上下に二つ連なっていて、それがエレベーターのように上がったり下がったりする仕組みになっていたのです。
コンクリートの棚のようなものは、上の部屋の床と下の部屋の天井をかねていたわけです。
この仕掛けがあったからこそ、ゾウが消えたり現れたりしたのです。
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