初級翻訳・黄いろのトマト 第3話

宮沢 賢治

四本の足はゆっくりと上下に動き、時々フウ、フウという呼吸の音も聞こえてきた。二人はいよいよ強く手を握り合って付いて行った。そのうち、お日さまは妙に赤くどんよりとして西の山に沈んでしまい、残りの空は黄色く光り、草はだんだんと青から黒く見えてきた。さっきからの音がますます近くなり、すぐ向こうの丘の陰では、先ほどの馬たちがヒンヒンといなないたり、鼻をブルルッと鳴らしたりする音も聞こえたんだ。四角い家の生き物が、足を百回も上げたり下げたりしたとき、ペムペルとネリはびっくりして目をこすった。向こうは大きな町なんだ。明かりがいっぱい灯っている。」すぐ目の前は平らな草地になっていて、そこに大きな天幕(テント)が張られていました。
その天幕は、丸太を組み合わせて作られています。
まだ少し明るい時間だったのに、青い光を放つアセチレンランプや、油煙を長く引くカンテラがたくさん灯っていて、その二階部分にはきれいな絵看板がたくさん掲げられていました。
あの不思議で素敵な音は、その看板の裏側から聞こえていたのです。
看板の中には、さっきキスを投げてくれたあの子が、二頭の馬にそれぞれ手を置いて逆立ちをしている絵もありました。
さっきの馬たちはみんなその前に繋がれていて、他にも十五、六頭の馬が並んでいました。
みんなオート麦を食べています。
大人や女の人、子供たちがその草はらにたくさん集まって、見上げながら看板を眺めていました。
看板の裏からは、さっきの音が盛んに鳴り響いています。
けれども、あんまり近くで聞くと、そんなに素敵な音ではありません。
ただの楽隊だったのです。
ただ、その音が野原を通り抜けていく間に、だんだんと音がかすれていく過程で、花の匂いが混ざり合っていただけだったのですね。
白い四角い家も、ゆっくり、ゆっくりと中へ入っていきました。
中からは何かが細い高い声で鳴いています。
人はだんだんと増えていきました。
楽隊はまるで馬鹿みたいに一生懸命演奏しています。
みんなは吸い込まれるように、三人、五人と中へ入っていきました。
ペムペルとネリは息を殺して、じっとそれを見ていました。
「僕たちも入ってみようか」
ペムペルが胸をどきどきさせながら言いました。
「入りましょう」とネリも答えます。
けれども二人とも、なんだか不安で落ち着きません。
どうやらみんな、入り口で何かを番人に渡しているようなのです。
ペムペルは少し近くへ寄って、じっとそれを観察しました。
食い入るように見ていたよ。
するとそれは、確かに銀か金のかけらでした。
金貨を出すと、銀のかけらがお釣りとして返ってきます。
そうしてその人は中へ入っていくのです。
だからペムペルも、ポケットの中の金を探しました。
「ネリ、お前はここで待っていて。僕、ちょっとうちまで行ってくるからね」
「わたしも行くわ」とネリは言いましたが、ペムペルはもう走り出していたので、ネリは心配そうに、半分泣きそうな顔でまた看板を見ていました。
それから僕も、ネリのそばで番をしようか、ペムペルについて行こうかとずいぶん迷ったけれど、いくらそこらを飛んでみても、みんな看板ばかり見ていて、ネリをさらっていきそうな悪い奴なんて一人もいません。
そこで安心して、ペムペルを追いかけて飛んでいきました。
ペムペルは本当に一生懸命走りましたよ。
四日月が西の空に静かにかかっていましたが、そのぼんやりした青白い光を頼りに、ペムペルはどんどんどんどん走っていきました。
僕は追いつくのが本当に大変だった。目がぐるぐる回って、風がぶうぶうと鳴っていました。
カバノキもヤナギの木もみんな真っ黒、草も真っ黒。その中をペムペルは一心不乱に駆け抜けました。
そしてついに、あの果樹園に入ったのです。
ガラスのお家が月の光で、ひどく懐かしく光っていました。
ペムペルは一瞬立ち止まってそれを見ましたが、すぐにまた走って、真っ黒に見えているトマトの木へ向かい、あの黄いろい実がなるトマトの木から、実を四つ取りました。
それからまるで風のように、嵐のように、汗と動悸で体中を熱くしながら、さっきの草地へとって返しました。
僕もすっかり疲れ果てていました。
ネリは何度も何度も、こちらの方を振り返ってばかりいました。
でもペムペルは「さあ、いいよ。入ろう」とネリに言いました。
ネリは嬉しくて飛び上がり、二人は手をつないで木戸口へやってきました。
ペムペルは黙って、二つのトマトを出しました。
番人は「ああ、いらっしゃい」と言いながらトマトを受け取りましたが、すぐに変な顔をしました。
しばらくそれを見つめていたかと思うと、突然顔をゆがめて怒鳴り出したのです。
「何だ、この餓鬼め! 人を馬鹿にしやがって。トマト二つで、この大入りの中に貴様らを押し込んでやれるか。失せろ、畜生!」
そしてトマトを投げつけました。
あの黄いろいトマトを投げ捨てたのです。
その一つはひどくネリの耳にあたり、ネリはわっと泣き出し、周りのみんなはどっと笑いました。
ペムペルはすばやくネリをさらうように抱き上げると、そこから逃げ出しました。
みんなの笑い声が、波のように聞こえてきます。
真っ暗な丘の間まで逃げてきたとき、ペムペルも突然、大きな声で泣き出しました。
あんな悲しいことを、お前はきっと知らないよね。
それから二人は黙って、黙って、ときどきしゃくり上げながら、昼間に象について歩いた道を戻りました。
ペムペルは拳をぎゅっと握りしめ、ネリは時々つばを飲み込みながら、カバノキの生えた真っ暗な小山を越えて、二人はおうちに帰ったのです。
ああ、かわいそうだよ。本当に、本当にかわいそうなんだ。
わかったかい?
じゃあ、さよなら。私はもう話せない。
おじいさんを呼んできちゃいけないよ。
さよなら。そう言い終えると、ハチドリの細いくちばしは、またスッと尖って固く閉じられ、その瞳は向こう側にいるシジュウカラをじっと見つめていました。
私もたまらなく悲しくなって、こう言いました。
「それじゃあ、ハチドリさん。
さようなら。
僕、また来るからね。
でも、もし君が何か言いたいことがあったら、いつでも聞かせておくれ。
さようなら、ありがとう。
ハチドリさん、本当にありがとう。」
そう言いながら、私は鞄をそっと持ち上げ、茶色いガラスのかけらの中にいるようなその部屋から、静かに廊下へと出ました。
すると突然、あまりの明るさと、あの兄妹のあまりにもかわいそうな姿のせいで、目がチクチクと痛み出し、涙がぼろぼろとこぼれ落ちてきたのです。
あれは、私がまだ本当に小さかった頃のお話です。

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