初級翻訳・お伽草紙 第11話

お伽草紙

どうです? 竜宮は歌とダンスと、おいしい食べ物とお酒の国だと、お誘いした時に言ったでしょう? どうです、想像と違いましたか?」

浦島は答えず、深刻そうな顔で苦笑いしました。

「わかっていますよ。あなたの想像では、ドンチャン騒ぎで、大きなお皿にタイやマグロのお刺身がのっていて、赤い着物を着た女の子たちが手踊りをして、金銀やサンゴ、きらびやかな着物が山ほどある……そんな感じだったんでしょう?」

「まさか」と、浦島もさすがに少し不愉快そうな顔をして言いました。「私はそこまで下品な男ではありません。しかし、私は自分のことを孤独な男だと思っていた時期もありましたが、ここへ来て本当に孤独なお方にお会いして、これまでの自分の気取った生活が恥ずかしくてたまりません」

「あの方のことですか?」亀は小声で言うと、無作法に乙姫さまの方をアゴでしゃくりました。「あの方は、ちっとも孤独じゃありませんよ。平気なものです。野心があるからこそ『孤独だ』なんて悩むのであって、他の世界のことをまったく気にしていないなら、百年でも千年でもひとりでいて平気なものです。それこそ、世間のうわさなんて気にしない人にとってはね。ところで、あなたはどこへ行こうとしているんですか?」

「いや、なに、別に……」浦島は、思いがけない質問に驚いて言いました。「だって、君、あの方が……」

「乙姫さまは別に、あなたをどこかへ案内しようとしているわけじゃありませんよ。あの方はもう、あなたのことなんて忘れているんです。これから自分のお部屋へ帰るのでしょう。しっかりしてください。ここが竜宮なんです、この場所が。ほかにどこも、案内したいような場所なんてありませんよ。まあ、ここで好きなように遊んでいればいいんです。これだけでも足りないんですか?」

「いじめないでくれよ。私は、いったいどうしたらいいんだ」と浦島は泣きそうな顔で言いました。「だって、あの方がお迎えに出てきてくれたから、別にうぬぼれるわけじゃないけれど、あの方の後をついていくのが礼儀だと思ったんだよ。別に文句があるわけじゃない。それなのに、私に何かよこしまな下心でもあるかのような、変な言い方をするじゃないか。君は本当に意地が悪いよ。ひどいじゃないか。私は生まれてから、こんなに恥ずかしい思いをしたことはないよ。本当にひどいよ」

「そんなに気にしないでください。乙姫さまは、おっとりしているんです。それに、陸からわざわざ訪ねてきた珍客ですし、あなたは私の恩人ですから、お出迎えするのは当たり前ですよ。それに、あなたは性格もさっぱりしているし、男前ときていますからね。……いや、これは冗談ですよ。変にうぬぼれられても困りますからね」「とにかく、乙姫さまはご自分の家までやってきた大切なお客さまを階段のところまでお出迎えして、あとは安心して『あとはあなたのお気の向くまま、何日でも好きなように遊んでいってくださいな』と、知らんぷりをしてご自分のお部屋へ戻っていった……というわけじゃないですかね。
実は私たちにも、乙姫さまが何を考えていらっしゃるのか、あまりよく分からないんです。
なんせ、あの方はどうにも、おっとりしていらっしゃいますから」

「いや、そう言われてみると、私には少し分かってきたような気がするよ。
お前の推察も、だいたいは間違っていないんだろう。
つまり、これこそが真の貴人の『おもてなし』なのかもしれない。
客を迎え入れて、あとは客の存在を忘れてしまう。
しかも客の周りには、最高のお酒やごちそうが、まったく気取りなく並べてある。
歌やダンスだって、別に客を喜ばせようというわざとらしい意図で行われるわけじゃない。
乙姫さまは誰かに聞かせようなんて思わず琴を弾く。
魚たちも、誰かに見せようという気負いもなく、自由に嬉しそうに舞い踊る。
客からの褒め言葉なんて期待していない。
客のほうも、それにいちいち感心したような顔をする必要はないんだ。
寝ころがって知らんぷりをしていても、ちっとも構わないわけだ。
主人はもう客のことなんて忘れているんだから。
しかも、自由に振る舞っていいという許可はすでに出ている。
食べたければ食べればいいし、いらなければ食べなくてもいい。
酔っぱらって夢のような気分で琴の音を聞いていても、決して失礼には当たらないわけだ。
ああ、客を接待するなら、こうありたいものだよ。
何だかんだと、ろくでもない料理をうるさく勧めて、くだらないお世辞を言い合い、面白くもないのにわざと笑い声を上げたり、『まあ!』なんて珍しくもない話に大げさに驚いてみせたり……そんな一から十まで嘘ばかりの社交をして、『立派なおもてなしをしている』と思い込んでいるケチくさい小利口の大馬鹿野郎どもに、この竜宮のゆったりとしたもてなしぶりを見せてやりたいよ。
あいつらはただ、自分の品位を落とさないかということばかり気にしてワクワクして、客を妙に警戒して、ひとりで空回りして、本当の心なんて爪の垢ほども持っちゃいないんだ。
まったく、お酒を一杯飲むのにも、『飲ませてやったぞ』『いただきましたぞ』なんて証文を取り交わすような真似をしていたら、かなわないよ」

「そう、その調子!」と亀は大喜びして言いました。「でも、あんまり興奮して心臓を悪くされても困りますよ。さあ、この藻の岩に腰を下ろして、サクランボのお酒でも飲みましょう。サクランボの花びらだけだと、初めての人には少し香りが強すぎるかもしれないから、サクランボの実を五、六粒と一緒に舌の上に乗せてごらんなさい。シュッと溶けて、ちょうどいい冷たさのお酒になります。混ぜ合わせ方ひとつでいろんな味に変わりますから、まあ、ご自分で工夫して、お好きな味を作って飲んでみてください」

浦島は、今とても強いお酒を飲みたい気分でした。
花びらを三枚、サクランボを二粒添えて舌の上に載せると、たちまち口の中いっぱいに美酒が広がります。含んでいるだけでもうっとりするほどです。
軽やかに喉をくすぐりながら通り過ぎていき、体の中にポッと明かりが灯ったような、嬉しい気持ちになりました。

「これはいい。まさに、憂いを消し去る魔法のほうきだね」

「憂い?」と亀はすかさず聞きとがめました。「何か憂鬱なことでもあるのですか?」

「いや、別に、そういうわけじゃないんだが、あははは」と照れ隠しに無理やり笑い、それからホッと小さなため息をついて、ちらりと乙姫さまの後ろ姿を眺めました。
乙姫さまは、ひとりで黙々と歩いています。
薄緑色の光を浴び、透き通るような香りのよい海藻のようにも見え、ゆらゆらと揺れながら、たったひとりで歩いています。

「どこへ行くんだろう」と思わずつぶやきました。

「お部屋でしょう」亀は、決まりきったことだというような顔で、澄まして答えました。

「さっきからお前は『お部屋、お部屋』と言っているが、そのお部屋というのはいったいどこにあるんだ? 何も、どこにも見えやしないじゃないか」

見渡すかぎり平らな、荒野と言ってもいいくらいの鈍く光る大広間で、御殿らしき影はどこにもありませんでした。

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