初級翻訳・小公女 第3話

小公女

「この子はとても繊細な子ですから、自分からこれだと思ったもの以外、決して欲しがったりはしないのですよ」

その後、彼はセーラと一緒に彼女の小さな部屋へ行き、お互いにさよならを言いました。セーラは父の膝に乗り、ジャケットの襟を小さな手でぎゅっと握りしめて、長いあいだ父の顔をじっと見つめていました。父がセーラの髪を優しく撫でながら言いました。

「私の顔を、心に焼き付けておくつもりかい? セーラ」

「いいえ、もうちゃんと焼き付いているわ。お父様は、私の心の中にいらっしゃるもの」

二人は抱き合い、もう二度と離れないというような強い口づけを交わしました。辻馬車が戸口から走り出すと、セーラはエミリイと一緒に二階の部屋の床に座り込み、両手で顎を支えて、馬車が角を曲がるまで窓からずっと見送っていました。心配になったミンチン先生が妹のアメリア先生を見に行かせましたが、扉には内側から鍵がかかっていました。セーラは中からこう言いました。

「私、一人で静かにしていたいの」」と、慎ましい小声で言いました。
アメリア先生は、太っていて背の低い婦人で、姉のミンチン先生をひどく怖がっていました。
彼女はセーラの振る舞いに驚いて、階下へと降りて行きました。
「お姉様、あの子ったら、とてもませていて変な子よ。
あの子ったら、自分から鍵をかけて部屋に閉じこもっているのよ。
物音一つ立てずにね。」
「他の子のように、暴れたり泣いたりするよりは、その方がましだよ。
あんなに甘やかされて育ったのだから、家の中をひっくり返すような大騒ぎをするのではないかと、私は心配していたんだからね。」
「あの子のトランクには、すごいものが入っていましたわ。
黒テンの毛皮や、テンの毛皮を縫い付けたコート、それにお下着には本場のレースがあしらってあるんですよ。」
「まったく馬鹿げた話だね。
でも、日曜日に教会へ行くとき、あの子を生徒の先頭に立たせれば、見栄えがして良いだろう。」

二階の部屋では、まだセーラとエミリーが、馬車が消えていく街角を見つめていました。
馬車の中のクルー大尉も、何度も振り返っては手を振り、もう堪えきれないというように、振った自分の手にキスを送っていました。

二 フランス語の授業

次の朝、セーラが教室に入っていくと、生徒たちは皆、目を丸くして珍しそうに彼女をじろじろと見つめました。
生徒たちはすでに、セーラの噂をいろいろと聞いて知っていたのです。
前の晩に到着したばかりの、セーラ付きの女中、フランス人のマリエットをちらりと見た生徒さえいました。
すっかり大人びたラヴィニア・ハーバートなどは、開きかけた扉の隙間から、マリエットがどこかの店から届いた箱を開けているのを覗き見たくらいでした。
「レースの縁飾りがついた下着でいっぱいだったわよ。」ラヴィニアは身をかがめて、地理の教科書の上からジェシーにささやきました。
「あの方、今もその下着を着けているのよ。
腰を下ろしたときに、ちらっと見えたもの。」
「まあ、あの方の靴下、絹ね。」ジェシーも地理の教科書越しに小声で言いました。
「それに、なんて可愛い足をしているのかしら。」
「でも、足なんて靴の合わせ方次第で小さく見えるものよ。
それに、あの方ってちっとも綺麗じゃないわね。
目だって変な色だわ。」
「綺麗さの種類がちょっと違うのよ。
なんだか振り返って見たくなるような顔だわ。
それにあの長いまつげといったら!」

セーラは静かに、ミンチン先生の机のそばにある自分の席に着きました。
セーラはみんなに見られても、別に恥ずかしがる様子もありませんでした。
それどころか、自分を見つめている子供たちが珍しいので、静かに皆の方を見返していました。
みんなは何を考えているのかしら? みんなはミンチン先生が好きなのかしら? それぞれの勉強に一生懸命なのかな? みんなも私のパパみたいな素敵なパパを持っているのかしら? などとあれこれ思いを巡らせていました。
セーラはその朝、エミリーと長い時間、お父さんの話をしていたのでした。
「エミリー、お父様は今頃もうお船の上よ。
私たち仲良くして、何でも話し合いましょうね。
私の顔を見てごらんなさい。
まあ、お前はなんて綺麗なお目々をしているの。
本当に、お前がお口をきけたらいいのにね。」

セーラは空想や気まぐれな考えをたくさん持っていました。
エミリーをまるで生きているかのように考え、そこに限りない喜びを感じるのも、その空想の一つでした。
セーラは女中に紺色の学校の制服を着せてもらい、同じ色のリボンを結んでもらってから、椅子の上のエミリーのところに本を一冊持って行ってやりました。
「私が教室へ行っている間、それを読んでいらっしゃい。」
女中のマリエットが怪訝そうな顔をしたので、セーラは真面目くさった顔で言いました。
「私たちにはわからないけれど、お人形には読んだり、歩いたり、いろんなことが出来るんじゃないかと、あたし思うのよ。
ただそれは、誰もいない時だけなの。
なぜって、お人形にも何でも出来るとわかったら、みんなが無理やりお仕事やなんかを押し付けるようになるでしょう。
だからきっと、お人形さんたちの間には、何にも出来ないような顔をしていようというお約束があるのよ。
マリエットが見ているうちは、そこにじっとしているけれど、外へ出かけたりすれば、きっと本を読んだり、窓の外を見に行ったりするのよ。
そして、私たちの足音が聞こえるや否や、その椅子の中に飛び帰って、さっきからずっとそこに座っていたような顔ですましているのよ。」

マリエットは、「おかしなお嬢様だこと。」と独り言を言いました。
彼女はこの風変わりな新しい主人を、すっかり好きになりかけていました。
彼女はこれまでに、セーラほど礼儀正しく心優しい子の世話をしたことはありませんでした。
セーラは、いつも「どうぞ、マリエット」とか、「ありがとう、マリエット」と、ひどく人を惹きつけるような言い方をしたのです。
マリエットは階下に降りると、早速女中頭にセーラの話をしました。
お嬢様はまるで貴婦人に対するように丁寧に私に頭を下げてくださるのよ、と自慢したのです。
そして、こう続けました。「あの小さい方は、まるで宮様ですわ。」

セーラが教室に入って二、三分ほどした頃、ミンチン先生はおごそかに立ち上がり、自分の机をトントンと叩きました。
「皆さん! 今日は、皆さんに新しいお友達をご紹介したいと思います。」
少女たちはそれぞれの席から立ち上がりました。セーラも立ち上がりました。
「皆さん! クルーさんと仲よくして下さいますね。クルーさんは大変遠いところから――ええ、インドからお着きになったばかりなのです。課業がすんだら、お互いにお近づきにならなければなりませんよ。」

少女たちは改まって目礼しました。セーラはちょっとスカートの端をつまんで礼を返しました。それから皆が腰を下ろし、またまじまじと見つめ合うのでした。
「セーラさん、ここへお出でなさい。」
ミンチン先生は机から本を取り上げ、ページをめくっていました。セーラは行儀よく先生のところへ出て行きました。

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