初級翻訳・小公女 第6話

小公女

まるで魔術みたい」

一度、セーラがエミリイを探し回った話をしたとき、ふいにセーラの顔色が曇りました。
暗い雲が横切ったかのように、瞳から輝きが消えてしまいました。
セーラは激しく息を吸い込んだので、声も妙に悲しく、低くなりました。
それから口を閉じ、何かを言うべきか、やめておくべきかと迷うように、きゅっと唇を引き締めました。
アーミンガードは、たいていの子なら声を上げて泣き出すところだろう、と思いました。
しかし、セーラは泣きませんでした。
「あなた、どこか痛いの?」
「ええ」セーラは少し黙ってから言いました。「でも、体が痛いんじゃないのよ」
それから、何か大切なことを告げるように、小さな声で続けました。
「あなただって、世の中の何よりも、お父様が一番好きでしょう?」

アーミンガードは、ぽかんと口を開けたままでした。
彼女は、父を心から愛しているなどと思ったことは一度もありませんでした。
それどころか、十分間でも父と二人きりで向き合うのを避けるためなら、どんな無茶でもしかねないほどでした。
けれど、そんなことを口に出すのは模範的な生徒らしくないと思い、とても困惑しながら答えました。
「私……私、お父様と会うことなんてめったにないのよ。お父様はいつも書斎に閉じこもって、本を読んでいるばかりなんですもの」
「私は世界中の何よりも、お父様が大好きなの。だから、とっても悲しいのよ。だってお父様は、もう遠くへ行ってしまわれたんですもの」

セーラは静かに頭を膝の上に乗せ、しばらく身動きもしませんでした。
アーミンガードは、今にもセーラが泣き出すのではないかと思いましたが、セーラはやはり泣きませんでした。
やがて、顔を上げないままセーラは言いました。
「私、お父様に、悲しくても我慢するってお約束したの。だから、きっと耐え抜くつもりよ。誰だって我慢しなきゃいけないことがあるわ。兵隊さんたちの我慢なんて、本当に大変なものよ。私のお父様は軍人なの。戦争になったら、喉がひりつくような思いをしたり、深い傷を負うことだってあるかもしれない。でも、お父様は一度だって『苦しい』なんて仰ったことはないわ」

アーミンガードは、ただセーラを見つめるばかりでした。
この少女の胸の中には、セーラへの憧れの気持ちが芽生え始めていました。
ふと、セーラは顔を上げ、不思議な微笑みを浮かべながら、黒い髪を後ろへとかき上げました。
「でも、こうして『つもり』になってお話を作っていると、少しだけ楽になれるの。苦しいことは忘れられないけれど、少しは耐えやすくなるでしょう?」

アーミンガードは思わず喉が詰まり、涙がこみ上げてくるのを感じました。
「ラヴィニアとジェッシイは仲良しなのよ。私たちも仲良くなれたらいいなと思うの。あなた、私のお友達になってくれる? あなたはお利口で、私は学校中で一番成績が悪いのだけれど、私はあなたが本当に好きなのよ」
「私も嬉しいわ。好かれていると思うと、とても嬉しいものね。本当によ、これからお友達になりましょうね」
不意にセーラの顔が輝き出しました。
「私、あなたのフランス語のおさらいを手伝ってあげるわね」

四 ロッティ

セーラが普通の子供だったら、これからの十年間にミス・ミンチンの学校で送る生活は、少しも彼女のためにはならなかったかもしれません。
セーラは、生徒というよりは、大切なお客様のように扱われていました。
ミンチン先生は心の中ではセーラを疎ましく思っていましたが、こんなお金持ちの娘を逃したくないという欲から、事あるごとにセーラを褒めそやし、学校生活が辛いものにならないように気を遣っていました。
幸い、セーラは頭が良かったので、甘やかされて調子に乗るようなことはありませんでした。
彼女は時折、アーミンガードにこんな打ち明け話をするようになりました。
「人はふとしたきっかけで、いろんな運命をたどるものね。私はふとしたきっかけで、あんなに素敵なお父様の子として生まれたのね」「本当は私、ちっともいい性格じゃないのかもしれないわ。でも、お父様は何でも買い与えてくださるし、皆さんは親切にしてくださるから、いい性格にならざるを得ないだけよ。私が本当に良い子なのか、それとも嫌な子なのか、どうしたらわかるのかしらね。きっと私は身の毛もよだつほど嫌な子に違いないわ。でも、私は一度もひどい目に遭ったことがないから、誰も私の悪いところを見つけられないだけなのね」

「ラヴィニアだって、ひどい目に遭っているわけじゃないけど……」アーミンガードはのろのろと言いました。
「でもあの人は、本当に嫌な人だわ」

セーラは小さな鼻先をこすって、何かを思い出そうとしました。
「きっとあの人は、大人になりかけているからなのよ」

いつかアメリア先生が、ラヴィニアに対して「あまりに成長が早いので、性格まで変わってきているのでしょう」と言っていたことがありました。セーラはそれを思い出して、そう言ったのでした。

ラヴィニアは、まったくもって不快な娘でした。彼女はセーラに対して並々ならぬ嫉妬心を抱いていました。セーラがやって来るまでは、自分こそがこの学校の女王様だと思っていたからです。彼女は他の生徒たちが言うことを聞かないと、意地悪く当たり散らすので、皆は怖がって仕方なく彼女に従っていました。ラヴィニアはどちらかと言えば綺麗な方で、生徒たちが二列に並んで散歩に出る時などには、一番良い着物を着ていたものでしたが、今ではセーラの贅沢な衣装に圧倒されていました。ベルベットの服や、貂(てん)の毛皮の手袋を身につけたセーラが、いつもミンチン先生と並んで先頭を歩かされるようになったからです。セーラは最初はそれがいやでたまりませんでしたが、いつの間にか、事実上みんなの上に立つ存在になっていました。それももちろん、ラヴィニアのように意地悪をするからではなく、かえって決して意地悪などしなかったために、皆から敬われるようになったのでした。

「でも、セーラ・クルーには一つこんなところがあるのよ」と、ある時ジェシーが正直に言ったために、かえって仲良しのラヴィニアを怒らせたことがありました。「それは、セーラはちっとも偉ぶらないということなの。私がセーラだったら、威張らずにはいられないわ。でも、ミンチン先生が父兄にセーラを見せびらかすのを見ていると、胸がムカムカするの」

「『さあ、セーラさん、応接室へ行ってマスグレイブの奥様にインドのお話をして差し上げるのですよ』」ラヴィニアは、得意げなミンチン先生の口真似を始めました。「『さあ、セーラさん、ピトキン夫人にフランス語を聞かせて差し上げるのですよ。この子のアクセントは、本当に確かなものですからね』ですって。フランス語を学校で習ったわけでもないのにね。ただお父さんが喋っているのを聞いていたから話せるというだけの話よ。それに、お父さんがインドの軍人だからって、ちっとも偉いことなんかありはしないわ」

「それはそうね。そのお父さんが殺した虎の皮が、セーラの部屋にあるのよ。

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