それからクルー大尉も、やっぱりそう思って――死んでしまったのよ。それから、カリスフォードさんも熱病で死にかけたんですって。そして、あの人にはセーラがどこにいるか判らなかったんですって。それから、山には何百万も何百万ものダイヤモンドがあると判ったの。その半分はセーラさんのものなの。それなのにセーラさんは、メルチセデクだけをお友達にして、屋根裏に住んでいたのね。今日カリスフォードさんがセーラを見つけて連れて行ってしまったの。もう決して帰って来ないのよ。前よりも、もっと立派なプリンセスになるのよ。十五万倍も立派になるのよ。――明日のお昼から、私セーラさんに会いに行くのよ」
あとは、ミンチン女史も静めかねるような騒ぎでした。
少女たちは規則など忘れて夜半まで教室にとどまり、アーミンガードを囲んで、セーラの手紙を読み返しておりました。
手紙の話は、セーラの作り話などとは比べものにならないほど奇想天外でした。
それに、その話はセーラその人と、隣家のあの印度紳士との間に起きたことなので、ひどく魅惑的だったのでした。
この話を耳にしたベッキーは、いつもより早めに屋根裏へ上っていきました。
彼女は皆から離れて、もう一度あの小さな魔法の部屋が見たかったのです。
「あの部屋はどうなるのだろう」ミンチン先生の手に渡るようなことはなさそうに思えました。
「何もかも取り払われて、屋根裏は元の通り空虚で殺風景なものになってしまうのだろう」ベッキーは、セーラのためにはこんなことになってうれしいと思いましたが、後のことを思うと、上っていくうちに自然と喉がつまり、目が曇ってきました。
「もう今頃は火の気もないだろう。薔薇色のランプもないだろう。夕食もないだろう。火のほてりを受けながらお話をしてくれたり、本を読んでくれたりするプリンセスもいないのだろう。あのプリンセスも!」
ベッキーはしゃくり上げてくる嗚咽をゴクリと飲み込みながら戸を押し開けました。
すると、思わず彼女は声を上げました。
ランプは室内に照り映え、火は燃え盛り、夕食の支度もちゃんとできているのです。
そしてラム・ダスが笑いながら、彼女の方を見て立っているではありませんか。
「お嬢様がお気づきになりましたね。ご主人様に、すっかりあなたのことをお話しになりましたのですよ。お嬢様は、ご自分の幸運をあなたにお知らせしたがっていらっしゃるのですよ。このお盆の上の手紙をご覧ください。お嬢様がお書きになったのです。お嬢様は、あなたが悲しくお休みにならないようにとお思いになったのでしょう。ご主人は、明日あなたにも来ていただきたいと仰っていらっしゃいましたよ」「明日からは、あなたもお嬢様のお付きとして働くことになるのです。今夜は、ここにあるものをすべて、また屋根伝いに持ち帰らなければなりませんね」
輝くような表情でそう言い終えると、ラム・ダスは丁寧にお辞儀をして、音も立てずに身軽な様子で天窓から外へと消えていきました。ベッキーはそれを見て、「あの人はあんなふうにして、いとも簡単にいろいろなものを運び込んでいたんだわ」と思いました。
十九 アンヌ
「大屋敷」の子供部屋は、今までにないような大騒ぎでした。子供たちは「乞食じゃない小さな女の子」と親しくなれたことで、これほど素敵な出来事が次々と起こるなんて、夢にも思っていませんでした。セーラはひどい苦労を乗り越えてきたからこそ、みんなからより一層大切にされるのです。
誰しもが、セーラの身の上話を繰り返し繰り返し聞きたがりました。囲炉裏のそばで暖かく過ごしている時なら、屋根裏のひどい寒さの話だって、興味深く聞けるものです。また、メルチセデクのことや、雀たちのこと、天窓から顔を出すと見える周囲の景色の話などを聞くと、屋根裏部屋はまるで面白い場所のように思えてくるのが当たり前でした。そんな楽しいことがあれば、寒くても殺風景でも、気にならないだろうと思えるのも当然です。
子供たちが一番喜んだのは、あの饗宴と空想の世界が、本当に現実となって現れたことでした。セーラはカリスフォード氏に見つけられた翌日、初めてこの話をみんなに聞かせたのです。その日、大屋敷の子供たちはティータイムに招かれ、セーラと一緒に囲炉裏の前に座ったり、しゃがみ込んだりしていました。そこでセーラは、例の話し方で物語を語り出したのです。印度の紳士も、セーラを見守りながら耳を傾けていました。
話し終えるとセーラは印度の紳士を見上げ、その膝に手をかけて言いました。
「私のお話はこれだけですの。今度は小父さまのお話を聞かせてくださいな、アンクル・トム」
紳士の希望で、セーラは彼のことを「アンクル・トム」と呼んでいました。
「小父さまのお話は、まだ伺っていませんものね。きっと立派なお話に違いありませんわ」
そこで、カリスフォード氏は語り出しました。病気で心が沈み、いらいらしていた時のこと。一人寂しく座っていると、ラム・ダスはよく外を通る人々を観察して、病人の気を紛らわせようとしてくれました。中でも一番よく前を通るのは、一人の女の子でした。カリスフォード氏は、行方の知れない小さな娘のことを絶えず考えていたところでした。それにラム・ダスから、猿を逃がしてその子の部屋に捕まえに行った時の話を聞くと、なぜかその子に強く心を惹かれるように感じたのです。
ラム・ダスは、その娘の顔色の悪いことや、召使として扱われているものの、下層社会の子供らしくない様子などを話して聞かせました。ラム・ダスは話すたびに、「こんなこともございましたよ」と、その子の生活の悲惨な事実を見つけてくるのでした。ラム・ダスはまた、屋根を伝っていけば、造作なく天窓からその子の部屋に入れるということも話しました。そこから、すべての計画が始まったのです。
「旦那様!」と、ある日ラム・ダスは言いました。「あの子が使いに出ている間に、屋根から入って、あの子の部屋に火をおこしておいて差し上げることもできると存じます。あの子は冷え切って帰ってきて、火を見ると、きっと留守の間に魔法使いが用意しておいてくれたのだと思うことでしょう」
この思いつきは非常に奇抜だったので、カリスフォード氏も、暗い表情に輝くような微笑みを浮かべたほどでした。それを見ると、ラム・ダスは夢中になって、火をおこすだけでなく、これこれのこともやろうと思えば簡単にできる、と主人に話し続けました。ラム・ダスの思いつきや計画は、子供のようでありながらも愉快なものでした。それを実行する準備に忙しかったので、いつもは退屈で長かった日が、あっという間に過ぎ去っていくように感じられました。
あの素敵な饗宴を始める前にミンチン先生に見つかってしまった晩、ラム・ダスは持ち込む品々をすべて自分の部屋に用意して、天窓から様子を見ていたのでした。彼の背後には、彼と同じようにこの冒険に夢中になっている仲間が、手伝うために控えていました。彼は屋根の瓦の上に腹ばいになって、天窓から、せっかくの饗宴が台無しにされるところも、しっかりと見ていたのです。
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