もちろん始まりはドアのノック。
でも、だーれも出てこなくって。
だから自分で開けることに。
さあて、挿絵に目をやると、中に入ったアリスの目に飛び込んできたものがちょうどわかる。
ドアがまっすぐ台所に続いていてね。
公爵夫人はお部屋の真ん中に座って、赤ちゃんをあやしてる。
赤ちゃんはわんわん泣いてる。
スープはぐつぐつ。
コックさんがスープをまぜまぜ。
ネコ――チェシャネコが――にやにや。チェシャネコはいつだってそうなんだ。
アリスが入ってきたときは、全部がこんな具合。
公爵夫人は素敵な帽子とガウンを身につけてる、よね? でも残念ながら顔はあんまり素敵じゃなくって。
赤ちゃんは――まあ、君だって、もっとかわいい子を見たことがあると思うんだけど、その、もっとおとなしい子、ね。
でもね、いまよく見ておいてね。次に出てきたときにわかるかどうか確かめるから!
コックは――まあ、もっと腕利きのコックを一人や二人、会ったことがあるかもしれないね。
でもでも、きっとこれよりものすごいネコは見たことないはず! だよね? ちょっと、こんなネコちゃん飼ってみたくない? 緑の目が愛らしくって、笑顔もとってもかわいくて。
公爵夫人はアリスにはひどくぶしつけで。
まあ、しょうがない。
その、自分の赤ちゃんなのに「ブタ!」とか呼ぶくらいだし。
ブタじゃない、よね? あとコックに、アリスの首を叩き切れって言いつけたんだけど、もちろんそんなことコックはしなくて。
最後には赤ちゃんをこっちに投げつけてきてさ! だからアリスは赤ちゃんを受け止めて、連れ出したんだ。
そうするしかなかったと思う。
というわけで、おうちから離れて、森を抜けて、かわいくないその赤ちゃんを抱えていってね。
すごいじたばたしてたから、つかまえておくのも本当に大変で。
でも最後には、左足と右耳をぐっとつかめばいいって気づいたんだ。
でも、普通の赤ちゃんをこんなふうにつかんじゃあいけないよ、めっ! こんなふうにあやされたい赤ちゃんになんて、あんまりいないからね!
さて、赤ちゃんはずっと「ぶーぶー」言ってるわけで。
だからアリスも真顔で言わなきゃいけない。
「もしブタになっちゃうんなら、もうなんにもしてあげなくてよ、いいこと!」
って、終わりに顔をのぞいてみたんだけど、いったいどんなことになってたと思う? 挿絵をごらん、答え合わせ。
「えっ、アリスがあやしてるの、あの赤ちゃんじゃないよ?」
ほら、やっぱりわかんなかった。
だからよく見ておいてって言ったのに! うん、これが、あの赤ちゃん。こブタに かわっちゃったんだ!
なので、 アリスは したに おろして、 もりのなかへ はなしてね。
そこで ひとりごと。
「ほんっと かわいくない あかちゃん! でも ブタに なったら ちょっとは ましかも。」
そのとおりだと おもわない?
9 チェシアネコ
ひとりぼっち、 ひとりぼっち! かわいそうな アリス! あかちゃんどころか ブタも もう いっしょじゃない!
そんなとき チェシアネコが あたまのうえの きに やどってたもんだから、 とっても うれしかったこと わかるよね。
たしかに ネコは とっても すてきな えがおなんだけど、 ちょっと みて、 はが ぎっしり! アリス すこしだけ ひいてない?
うん、 まあ、 すこし。
でも やっぱり ネコだって はは いるわけで。
それに いらいらしてたら なるべく にやにやは しないしね。
だから それなりに アリスも うれしくって。
アリス とっても おすまししてなあい? あたまを すっくと もたげて、 りょうてを うしろに まわして、 まるで ネコに ものを おしえてるみたい。
そういえば おしえておきたいことが ちょっと あるんだ。
アリスと ネコの このさしえを みておいてね。
さあて へそを まげないでね、 おねがい! ほんの まめちしきだから!
きの そばに、 キツネノテブクロが あるの わかる? これ、 どうして キツネノテブクロって いうか しってる? もしかして キツネと かかわりあるとか おもってる? まちがい! キツネは てぶくろ はめないよ!
もともとは 「こびとの てぶくろ」って いったんだ。
でも 「こび」って きつねの ばけものでも あるからね。
ここで まめちしきは おしまい。
いらいらが おさまるまで ちょっと まってるね。
どう? すっかり おちついた? もう だいじょうぶ? くちの すみも ひんまがってない? じゃあ つづきを。
「チェッシャにゃん!」って、 アリスが よんでね。
(ネコにしては すてきな なまえじゃなあい?)「おしえてちょうだい、 ここから どちらに いったほうが よくって?」
すると ネコは、 ぼうしやの ところへ いきたきゃ こっちの みち、 やよいウサギだったら あっちの みち、 って おしえてくれてね。
「どっちも へんにゃ やつ!」って ネコは いうんだけど。
そのあと ネコが きえちゃって! まるで ロウソクの ひが きえるみたいに!
まあ アリスは やよいウサギのほうへ あるきだすんだけど、 すすんでいくと また そこに ネコが いてさ! そんなに すぐ でたり きえたりは いやだって いってやったんだ。
すると こんどは ネコも きえるのが すっごく ゆっくりになって、 はじめが しっぽ、 さいごが にやにや。
へんてこじゃあない? ネコが いなくなってるのに、 にやにやが あるなんて。
みてみたい?
このページの すみを めくってみたら、 にやにやを みてる アリスが でてくるよ。
ネコを みてたときよりも、 ちょっとだけ びくびくしてない、 かな?
10 おかしな おちゃかい
これは おかしな おちゃかい。
チェシアネコと わかれたあと、 アリスは チェシアネコの おしえてくれたとおり、 やよいウサギと ぼうしやに あいにいったわけ。
みつけたとき そいつらは おおきな きのしたで おちゃかいをしていてね。
あいだには ヤマネも すわっていて。
テーブルに ついてたのは この3にんだけだったんだけど、 そのまわりには ずらりと ティーカップが ならんでてね。
テーブル ぜんたいは みえないけど、 ほら さしえの ぶぶんだけでも カップが 9こも あるよね、 やよいウサギの てにあるのも くわえると。
そいつが やよいウサギ。
みみが ながくて、 かみに わらが ぐちゃぐちゃ からまってる。
わらが あるって あたまが おかしい しるしだからね ―― なぜかは わからないけど。
ぜったいに かみのけに くくりつけちゃ だめだよ。
ひとに あいつの あたまは おかしいって おもわれるからね!
それから テーブルの はしに すてきな みどりの アームチェアが あったんだけど、 それが まるで アリスの せきみたいに みえてね。
だから そこへ いって こしを おろしたんだ。
そうして やよいウサギと ぼうしやと ながなが おはなしを して。
ヤマネは あんまり しゃべらなかった。
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