これは、先生が一年生のみなさんに語ってくださったお話です。
あるお家の台所に、お鍋とお皿とカーテンが暮らしていました。
ところが、お鍋も、お皿も、カーテンも、毎日毎日同じお仕事ばかりしているのが嫌になってしまい、台所から逃げ出すことにしました。
お鍋とお皿は先に出口のところへ行きましたが、待っても待ってもカーテンがやってきません。
「早く来ないと、二人だけで行っちゃうわよ」
お鍋とお皿は、いらいらして言いました。
「だって、私、いくら足で踏ん張っても、頭が鉄の棒にくっついていて、離れないのよ」
カーテンは泣きながら、頭を鉄の棒から外そうとしました。
お鍋とお皿もカーテンのすそを持って、「うんさこら、うんさこら」と引っ張りましたが、どうしても外れません。
そこで、お鍋とお皿のどちらかがカーテンをよじ登っていって、鉄の棒を外すことになりました。
お鍋とお皿はじゃんけんをして、負けたほうが登っていくことにしました。
お鍋が負けました。お皿は下で大きな口を開けて、その様子を見物していました。
負けたお鍋は、カーテンの脇腹をよじ登っていきました。
ところが、お鍋が登るにつれて、カーテンは脇腹がくすぐったくなってきました。
そしてとうとう我慢ができなくなって、「あぁ、くすぐったい!」と叫び、いきなりお鍋を振り飛ばしてしまいました。
お鍋は「からんころん、からんころん、ころころ、ころころ」と、台所の向こうの端まで転がっていきました。
その格好がとてもおかしかったので、カーテンは「アハハハハハ!」と大笑いしました。
お皿は、「私だったらこなごなに壊れてしまうところだったのに、まあよかった」と胸をなでおろしました。
お鍋はもともと大変な恥ずかしがり屋さんでしたから、カーテンに笑われたことで顔を真っ赤にして、戸棚の中へ駆け込んでしまいました。それからというもの、いくらカーテンとお皿が呼んでも、二度と出てきませんでした。
こんなわけで、お鍋とお皿とカーテンは逃げ出すことなく、今でも台所で役に立っています。
もしあのまま逃げ出していたら、くず屋さんに拾われて、悲しい身の上になっていたことでしょう。
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