初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第20話

ニールスのふしぎな旅

だって、灰色ネズミっていうのは、どんなに辛いことでも我慢できるし、どんなにつまらないものでも満足できる、怖いもの知らずのネズミだったんだもん。
だから、2、3年してとっても力が強くなると、あっという間に黒ネズミたちをマルメーの町から追い出し始めたんだ。
まず、屋根裏部屋や地下室、食べ物をしまっておく部屋を力ずくで奪い取って、黒ネズミたちを飢え死にさせたり、噛み殺したりしたんだ。
なんといっても、灰色ネズミたちは戦いを少しも怖がらなかったんだからね。
マルメーの町を奪ってからは、小さいグループや大きいグループに分かれてどんどん進んでいって、ついにこの地方ぜんぶを自分たちのものにしていったんだ。
それにしても、灰色ネズミたちがまだそんなに増えていないうちに、黒ネズミたちがどうして大きなチーム(連合軍)を作って、灰色ネズミたちを全部やっつけてしまわなかったのか、その理由はよくわからないんだ。
とにかく、黒ネズミたちは自分たちの力を信じきっていたから、自分たちの縄張りを失うなんてことは、夢にも思わなかったんだ。
そして、黒ネズミたちは、のんびり毎日を過ごしていたんだ。
その間に、灰色ネズミたちは農場から農場へ、村から村へ、町から町へと、どんどん勢いよく進んでいったんだ。
そのため、黒ネズミたちは飢え死にするか、追い出されるかして、すっかりいなくなってしまったんだ。
こうして、今では、スコーネ地方でもグリムミンゲ城のほかには、どこにも住む場所がなくなってしまったような状況なんだ。
この古い石のお城は、壁がとっても頑丈な上に、ネズミが通れるような細い道がほんの少ししかなかったんだ。
だから、黒ネズミたちはこのお城で必死にがんばって、灰色ネズミたちが攻めてくるのを防ぐことができたんだ。
毎晩毎晩、毎年毎年、攻めてくるネズミと守るネズミの間では、何度も何度も、戦いが続けられたんだ。でもね、黒ネズミたちはしっかり見張って、しかも、死ぬことなんて少しも恐れずに命がけで戦ったんだ。
だからね、この古くて立派なお城のおかげで、これまでのところは、いつも勝つことができていたんだよ。

ところで、ちょっとお話ししておくとね、黒ネズミたちも元気いっぱいでイケイケだった頃は、今の灰色ネズミと同じように、どの動物からも嫌われていたものなんだ。
それもそのはずだよね。
黒ネズミたちは、捕まって閉じ込められているかわいそうな人たちにいじわるしたり、死んじゃった動物のお肉を食べたり、貧乏な人たちの地下室からカブを盗んだり、眠っているガチョウの足をガブリと噛みちぎったり、ニワトリさんから、卵や生まれたばかりのひよこを奪い取ったり、他にもいろんな悪いことをしでかしていたんだからね。
でもね、大変なことになってからは、そうした悪いことは、まるで忘れちゃったみたいに、ピタッとやらなくなってしまったんだ。
あんなに長い間、敵を苦しめ続けてきたこの黒ネズミたちが、最後にこんな風に変わったことに、みんなびっくり仰天だったんだ。
グリムミンゲ城の近くに住んでいる灰色ネズミたちは、しょっちゅうケンカをしかけてきては、このお城を乗っ取るチャンスを、今か今かと待ち構えていたんだ。
それなのに、灰色ネズミたちはこの国のほとんど全部を自分たちのものにしちゃってるんだから、せめてグリムミンゲ城くらいは、ほんの少ししか残っていない黒ネズミたちに残してあげてもいいんじゃないかって思うよね。
でも、灰色ネズミたちはそんなことこれっぽっちも考えていなかったんだ。
それどころかだよ、「黒ネズミをいつかはこの世から消し去らなきゃ、自分たちのプライドに関わることなんだ!」って口癖みたいに言ってたんだ。
だけどね、灰色ネズミたちのことをよーく知っている動物たちは、そんなの嘘っぱちで、本当は、グリムミンゲ城を人間たちが大事な食べ物(穀物)をしまっておく倉庫に使っているから、灰色ネズミたちは、ここを手に入れるまでは絶対にあきらめないんだ、ってことをちゃんと知っていたんだよ。

コウノトリ

 ヴォンブ湖の氷の上でぐっすり眠っていたガンたちは、ある朝早く、空から聞こえてきた声に目を覚ましたんだ。
「コロッ、コロッ、ツルのトリアヌートが、ガンたちのアッカ様と、他の皆さんにご挨拶を申し上げます! 明日、クッラベルイで、ツルたちのすっごく大きなダンスパーティーがあります!」
 アッカはすぐに頭を上げて、答えたよ。
「それはどうもありがとう! 本当にありがとうね!」
それから、ツルたちの群れは、向こうへ飛んでいっちゃったんだけど、ツルたちが野原や木がたくさん生えた丘の上を飛びながら、「トリアヌートがご挨拶申し上げます! 明日、クッラベルイでツルたちのすっごく大きなダンスパーティーがあります!」って叫んでいる声が、ガンたちには、まだしばらくの間聞こえていたんだ。
ガンたちは、この招待を心から喜んだよ。
そして、白いガチョウに向かって、「君はラッキーだね、ツルの大舞踏会に行けるなんて!」って言ったんだ。
「ツルたちのダンスって、そんなにすごいの?」って、ガチョウは聞いたよ。
「君なんか、きっと夢にだって見たことないくらい素晴らしいんだよ!」って、ガンたちは答えたんだ。
「さてと、明日、私たちみんながクッラベルイに行っている間、オヤユビくんの身に何も悪いことが起こらないようにするには、どうしたらいいだろうね。」って、アッカが言ったんだ。
「オヤユビくんを一人残していくなんてダメだよ!」って、ガチョウが大声で言ったんだ。
「もしツルたちがオヤユビくんにダンスを見せないっていうなら、僕はオヤユビくんと一緒にここに残るよ。」
「今まで人間がクッラベルイの動物たちの集まりに行くのを許されたことはないんだよ。」ってアッカは言ったんだ。
「だから、オヤユビくんを一緒に連れて行くことはできないんだ。だけど、このことはまた後でじっくり相談しようね。それよりも、まず一番大事なのは、何か食べるものを手に入れなきゃいけないってことだね。」
 こう言って、アッカは出発の合図をしたんだ。
この日も、キツネのズルスケのせいで、ずいぶん遠くまで、食べ物がある場所を探して歩き回らなきゃいけなかったんだ。
こうして、みんなは、グリムミンゲ城の少し南にある、じめじめした草地まで飛んでいったんだ。
この日一日中、ニールスは小さな池のほとりに座り込んで、アシ笛を吹いていたよ。
ツルたちのダンスを見に行けないって言われたから、すっかり元気がない様子だったんだ。
だから、ガチョウやガンたちと話す気には全然なれなかったんだ。
アッカがまだニールスのことを完全に信じていないなんて、ひどすぎる話だと思わないかい?
ニールスが人間にもどるのをやめたのも、ガンたちの群れと一緒に旅をしたいからなんだもんね。
だから、ガンたちを裏切るようなことはしないってことくらい、当然わかってくれないと困るよね。それに、ガンたちと一緒にいたいから、たくさんのことを我慢したり、諦めたりしてきたんだもんね。だったら、せめて珍しいものを見せてあげるのが、自分たちの役目だってことくらい、わかってくれてもいいはずだよね。

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