だのに、まあ、まあ! どんなことになっていたと思って? とてもひどいことになっちゃったのよ! あんなにいい匂いがして、あんなにとりどりの綺麗な紅色をしていた美しい薔薇が、みんな病気になってめちゃめちゃになっちゃったのよ! これ、この通り、みんなまるで黄色くなっちゃって、もう匂いもなんにもないの! 一体どうしたというんでしょうね?」
「なあんだ、わしの可愛い姫や――そんなことで泣くんじゃないよ!」とマイダスは言ったものの、姫をこんなにひどく悲しませた変化を自分の手でおこなったのだと打ち明けることは、恥ずかしくてできませんでした。
「座ってパン入りのミルクをおあがり! 何百年でも保つような、こんな金の薔薇を持っていれば、一日でしおれるようなただの薔薇となら、いつでも取り換えられるからね。」
「あたし、こんな薔薇はいやです!」とメアリゴウルドは叫んで、それを三文の値打ちもないもののように投げ捨てました。
「ちっとも匂いはないし、固い花びらが鼻を刺して痛いんだもの!」
姫はもう食卓についていましたが、黄色くなってしまった薔薇に対する悲しみで心が一杯だったので、彼女の支那鉢の驚くべき変化にも気がつきませんでした。
多分その方がずっとよかったのでしょう。というのは、メアリゴウルドは鉢のまわりに描いてある奇妙な人物や、変わった木や家を見ていつも喜んでいたのに、今ではそれらの絵がすっかり金の黄色の中に消え去っていたからです。
その間にマイダスは、一杯のコーヒーを注いでいました。
もちろんコーヒー注ぎも、彼がそれを取り上げた時はどんな金属でできていたにせよ、それを下に置いた時にはもう金になっていました。
彼は自分のような質素な日常を送る王様としては、金づくめの食器で朝飯を食べるなんて、随分贅沢なやり方だなあと独りで考えました。
そして、こんなふうにどんどん出来てくる宝物を安全にしまっておくことは容易ではないので、閉口し始めました。
もはや戸棚や台所では、金の鉢やコーヒー注ぎのような高価なものをしまっておく場所としては、安全とは言えませんでした。
こんなことを考えながら、彼はコーヒーを一匙すくって口へ持って行きました。
そしてすすってみて、それが唇に触れた瞬間に、溶けた金になり、次の瞬間には金のかたまりになったのを見てびっくりしました。
「はあ!」マイダスは少しあきれて叫びました。
「どうしたの、お父さま?」と小さなメアリゴウルドは尋ねて、目に涙をためたまま、じっと彼を見つめました。
「何でもない、姫や、何でもないんだよ!」マイダスは言いました。
「冷めないうちにミルクをおあがり。」
彼は皿の上のおいしそうな川鱒を一尾取って、試験の意味でその尻尾を指でさわってみました。
驚いたことには、その美味しそうに焼けた川鱒のフライが、金の魚になってしまいました。
ただし金の魚といっても、客間の装飾としてガラス鉢の中によく飼われているような金魚になったのではありません。
そうではなくて、本当に金でできた魚になってしまったのでした。そして、まるで世界一の金細工師が一生懸命に作り上げたかのように見えました。その小さな骨は今や金の針金となり、ヒレと尻尾は薄い金の板になっていました。フォークでついた跡までくっきりと残り、こんがり揚がった魚の細かい衣のつぶつぶまで、すべてがそっくりそのまま金でできていたのです。
君たちも想像できると思うけれど、それは本当に見事な工芸品でした。ただマイダス王も、この時ばかりは、こんなに手の込んだ高価な魚の模型よりも、本物の川鱒がそのままお皿に乗っていたほうが、どれほどありがたいか知れないと思いました。
「これじゃあ、一体どうやって朝ごはんを食べればいいのか、さっぱりわからないぞ」とマイダスは独り言を言いました。
彼が焼きたてのホットケーキを一つ取って、口に入れようとした、その瞬間です。ひどく困ったことに、さっきまで真っ白な小麦粉でできていたものが、まるでトウモロコシの粉で作ったかのように黄色っぽくなってしまったのです。もしそれが本当にトウモロコシの焼き菓子だったのなら大喜びしたでしょうが、その固さと、急にずっしりと重くなった手応えで、これもまた金に変わってしまったことが嫌というほどはっきりと分かり、全く嬉しくありませんでした。
ほとんどやけくそになって、彼はゆで卵を食べてみようとしましたが、これもさっきの川鱒やホットケーキと同じように、すぐに金になってしまいました。その卵は、おとぎ話に出てくる「金の卵を産むガチョウ」の話を誰でも思い出すような、見事な金の卵でした。しかし、この卵が金になってしまったのは誰のせいでもなく、マイダス王自身がそうしてしまったのです。
「ああ、これは困ったことになったぞ!」彼はそう考えながら椅子にもたれかかり、小さなメアリゴウルドをひどくうらやましそうに見つめました。彼女はそんなこととは知らず、とてもおいしそうにパン入りのミルクを食べていたからです。
「自分の目の前には、こんなに豪華な朝食が並んでいるのに、そのどれ一つとして食べられるものがないなんて!」
今ではかなり厄介なものに思えてきた「触れるものを何でも金に変える力」ですが、大急ぎで食べればその変化を避けられるかもしれない、と王様は考えました。今度は熱々のジャガイモをつかんで、口の中へ押し込み、一気に飲み込もうとしました。しかし、触れたものを即座に金に変えてしまう力の速さには勝てませんでした。彼の口の中は、ホクホクのジャガイモではなく、カチカチの金の塊でいっぱいになってしまったのです。それが舌を焼いたので、彼は大声でうなりながら食卓から飛び上がり、痛さと驚きで、部屋の中を踊るようにドタバタと跳ね回りました。
「お父さま、ねえお父さま!」と、優しい心のメアリゴウルドが叫びました。「一体どうしたの? お口が熱かったの?」
「ああ、可愛い姫よ」マイダスは悲しそうにうなりながら言いました。「お父さんがこれからどうなってしまうのか、自分でも分からないんだよ!」
本当に君たち、生まれてからこんな情けない話を聞いたことがあるでしょうか? 王様の前に出される最高級の朝食が並んでいるというのに、その「金」という価値のせいで、かえって何も食べることができないのです。これでは、重さだけで言えば大金持ちの料理を前にしたマイダス王よりも、パンくずと水だけで満足している、どんなに貧しい労働者のほうがずっと幸せだということになります。
さあ、これからどうすればいいのでしょう? 朝食の時点で、マイダスはすでにお腹がペコペコでした。昼ごはんまでにお腹が空かないはずがありません。すると夕ごはんの時間になったら、どれほどお腹をすかせて苦しむことか。しかも夕ごはんだって、きっと今目の前にあるのと同じような、喉を通らない「金のごちそう」に違いありません。こうして金ずくめの贅沢な食事ばかりで、彼が一体何日生きられると君たちは思いますか?
こんなことをいろいろと考えてみると、さすがの欲張りなマイダス王も不安になってきました。
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