初級翻訳・ワンダ・ブック――少年・少女のために―― 第48話

ホーソーン ナサニエル

これまでペガサスが送ってきた自由な生活を考えると、もし彼が本当に自由を望んでいるのなら、こうして手綱で縛り付けておくのは忍びないという気持ちが湧いてきたのです。
急に胸に込み上げてきたそんな義侠心に駆られて、ベレロフォンは魔法の手綱をペガサスの頭からはずし、くつわも口から取ってやりました。
「ペガサス、僕を捨てて行っていいんだ!」と彼は言いました。
「僕を捨てて行くか、それとも僕を愛するか。二つに一つだ」

すると、その翼のある馬はヘリコン山の頂から、真っ直ぐに空高く舞い上がり、あっという間に豆粒ほどに小さくなってしまいました。
日が沈んでから随分と時間が経っていたので、ヘリコン山の頂はちょうどたそがれ時で、麓のあたりは夕闇に包まれていました。
しかし、ペガサスは非常に高く昇っていったため、沈んだはずの夕日に追いつき、空に残る日の光を全身に浴びていました。
さらに高く昇り続けたペガサスは、やがてぽつりと光る点のように見え、最後には広大な空の彼方へと消えてしまいました。
ベレロフォンは、もう二度とペガサスには会えないのではないかと心配しました。
しかし、彼が「馬鹿なことをしてしまった」と後悔しているうちに、あの小さな光の点がまた見えてきて、だんだんとこちらへ近づき、ついには夕日の光よりも低いところまで降りてきました。
なんと、ペガサスは帰ってきたのです! こうして自ら戻ってきた以上、もうこの翼のある馬が逃げ出してしまう心配はありませんでした。
ペガサスとベレロフォンはすっかり仲良しになり、お互いに愛情を込めて信頼し合うようになりました。
その晩、二人は仲良く並んで眠りました。
ベレロフォンはペガサスの首を抱くようにしていましたが、それは逃げられないようにするためではなく、親愛の情からでした。
そして彼らは夜明けに目を覚ますと、それぞれの言葉で、お互いに朝の挨拶を交わしました。

こうしてベレロフォンとその不思議な馬は数日間を共に過ごし、日を追うごとに互いの気心を知り、ますます好きになっていきました。
彼らは長い空の旅に出かけ、地球がまるで月と同じくらいの大きさにしか見えないほど高くまで昇りました。
彼らは遠くの国々を訪れ、その住民たちを驚かせました。
人々は、翼のある馬の背に乗ったその美しい青年を見て、天から降りてきた神様に違いないと思ったのです。
一日に千マイルもの距離は、足の速いペガサスにとっては、わけなく飛べる道程でした。
ベレロフォンはそんな生活を楽しみ、いつもこのように、からりと晴れた高い空の上で暮らせたらどんなにいいだろうと思いました。
なぜなら、下の世界がどんなに陰気で雨が降っていようとも、上空はいつも素晴らしい晴天だったからです。
しかし、彼はアイオバティーズ王に退治すると約束した、あの恐ろしい怪物カイミアラのことを決して忘れることはできませんでした。こうしてベレロフォンは、空の上での乗りこなしにもすっかり慣れました。ちょっと手を動かすだけでペガサスを自由自在に操り、自分の声に従わせることもできるようになった時、ついに彼は、あの危険な冒険へ出発する決心を固めました。

明け方、目を覚ますとすぐに、彼はペガサスを起こそうと、その耳をちょいとつねってみました。
ペガサスはすぐに飛び起きると、空高く五百メートルほども舞い上がり、すっかり目が覚めていることと、どんな旅にでもすぐに出かけられるという意気込みを見せるように、山の頂のまわりを大きく輪を描いて飛び回りました。
こうして空を飛んでいる間中、ペガサスは大きく元気な、響きのいい声でいななき、最後には、スズメが小枝に飛び移る時よりも軽やかに、ベレロフォンのそばへと舞い降りてきました。
「うまいぞ、ペガサス! さすがは僕の天馬だ!」
ベレロフォンは、やさしくその馬の首をなでながら叫びました。
「さあ、僕の速くて美しい友よ、朝ごはんを食べなくちゃ。今日、僕たちはあのおそろしいカイミアラと戦うんだからね」

二人が朝食をすませ、ヒポクリーニという泉のきれいな水を飲むと、すぐにペガサスは自分から進んで頭を差し出し、主人に手綱とくつわをかけさせました。
それから、うれしそうにはしゃいで、跳ねたり空中でくるりと回ったりして、出発を待ちきれない様子を見せました。
一方のベレロフォンは、剣を腰に下げ、盾を首から吊るして、戦いの準備を整えました。
用意がすっかり整うと、ベレロフォンは馬の背に飛び乗りました。
そして、遠くへ出かける時のいつもの習慣通り、進むべき道をしっかりと見極めるために、まずはまっすぐに五マイルほど空高く昇っていきました。
それからベレロフォンがペガサスの頭を東の方へ向けると、二人はリシアという国を目指して飛び始めました。
飛んでいる途中、一羽のワシを追い越したのですが、そのワシが避ける間もないほどの近距離を通ったので、ベレロフォンは手を伸ばせば、わけなくその足をつかめるほどでした。
そんな猛スピードで急いだおかげで、彼らが深い森に覆われた谷のある、リシアの高い山々を見つけたのは、まだ午前中の早い時間のことでした。
ベレロフォンの聞いていた話が本当なら、あのおそろしいカイミアラが住んでいるのは、あの険しい谷のどれかのはずでした。
目的地が近づいたので、ペガサスはベレロフォンを乗せたまま、少しずつ高度を下げていきました。
そして、山の頂にかかっている雲を利用して、姿を隠しました。
雲の上を飛びながら、その端から下の様子をうかがうと、ベレロフォンはリシアの山深い地形をかなりはっきりと見渡すことができ、日陰になっている谷の様子も一度に見ることができました。
最初は、これといって変わったものは何も見当たりません。
そこは荒れ果てた、未開の岩だらけの、切り立った山々が続く土地でした。
平らな場所には焼かれた家の跡があり、牧草地には、そこで草を食べていた家畜の死骸があちこちにごろごろと転がっていました。
「カイミアラがこんなひどい仕打ちをしたに違いない」とベレロフォンは考えました。
「でも、その怪物は一体どこにいるんだろう?」

さっきも言った通り、最初見た時には、切り立った高い山の間のどの谷間にも、目立ったものは何も見つかりませんでした。
本当に、何一つとして。
ただ、洞穴の入り口のような場所から湧き出し、しぶしぶと空へ立ち昇っていく三筋の黒い煙だけは、確かにありました。
山の頂に届くまでに、渦を巻いて昇るその煙は、混ざり合って一つになっていました。
その洞穴は、ペガサスとベレロフォンの真下、千フィートほどのところにありました。
重苦しく立ち昇る煙は、いやな硫黄のような、息が詰まりそうな臭いがして、ペガサスは鼻を鳴らし、ベレロフォンはくしゃみをしました。
それに、いつも澄み切ったきれいな空気ばかり吸い慣れているペガサスにとっては、あまりに気分が悪かったので、彼は翼を羽ばたかせて、その不快な煙の場所から半マイルほど離れました。
しかし、後ろを振り返ったベレロフォンは何かを目撃したようで、まずは手綱を引き、続いてぐるりとペガサスの向きを変えました。

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