初級翻訳・「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」 第1話

「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」

むかしむかし、ひとりの仕立屋(したてや)さんがおりました。
仕立屋さんは三人のむすこと、それから、ただ一ぴきのヤギを飼(か)っていました。
ところでこのヤギは、お乳をしぼってみんなに飲ませてくれていた大切な家族だったので、美味しいごはんを食べさせなければなりませんでした。
それで、まい日草原へつれていってもらうことになっていました。
むすこたちも、じゅんじゅんにこのお仕事をやっていたのです。
あるとき、いちばん上のおにいちゃんが、それはそれはみごとな草のはえている墓地(ぼち)にヤギをつれていって、草を食べさせたり、まわりをとびまわらせたりしました。
やがて日がくれて、家へかえるころになりましたので、いちばん上のむすこはたずねました。
「ヤギや、おなかはいっぱいかい?」
すると、ヤギはこたえて言いました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ

「それじゃ、うちへかえろう」と、むすこは言いました。
それから、むすこはヤギのつなをつかんで、ヤギ小屋のなかへつれていき、そこにしっかりとつないだのです。
「どうだな、ヤギはえさをたくさん食べたか?」と、年をとった仕立屋さんがたずねました。
「ええ、ヤギはおなかがいっぱいで、もうひとっ葉もいらないって言っていましたよ」と、いちばん上のむすこはこたえました。
けれども、おとうさんはじぶんの目でたしかめようと思い、ヤギ小屋へおりていきました。
そして、かわいいけものをなでながらたずねてみました。
「ヤギや、おまえは、ほんとうにおなかがいっぱいかい?」
すると、ヤギはこうこたえたのです。
なんでいっぱいになるもんかい
お墓の上をとんでいただけで
葉っぱなんか一枚もありゃあしなかった メエ メエ

「なんてことだ!」
仕立屋さんはさけび声をあげると、いそいで家へかけあがり、むすこに向かって言いました。
「やい、このうそつきめ! ヤギは腹がいっぱいだなんて言やがって、おなかすかせてひからびさせるところだったじゃないか!」
そして、仕立屋さんは怒(おこ)りにまかせて壁からものさしをとると、むすこをピシピシと打って、家から追いだしてしまいました。

そのつぎの日は、二ばんめのむすこの番でした。
このむすこは、庭の生け垣のところに、いい草ばかりはえている場所をみつけだしました。
ヤギはその草をきれいに食べてしまいました。
夕がた、むすこは家へかえろうと思って、ヤギにたずねました。
「ヤギや、おなかはいっぱいかい?」
すると、ヤギはこたえて言いました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ

「それじゃ、うちへかえろう」と、むすこは言いました。
それから、むすこはヤギを家へひっぱっていって、ヤギ小屋のなかにいれて、しっかりとつなぎました。
「どうだな、ヤギはえさをたくさん食べたか?」と、年をとった仕立屋さんがたずねました。
「ええ、ヤギはおなかがいっぱいで、もうひとっ葉もいらないって言っていましたよ」と、二ばんめのむすこはこたえました。
仕立屋さんはむすこの言うことを信用せず、じぶんでもう一度ヤギ小屋におりていって、たずねてみました。
「ヤギや、おまえは、ほんとうにおなかがいっぱいかい?」
すると、ヤギはこたえました。
なんでいっぱいになるもんかい
お墓の上をとんでいただけで
葉っぱなんか一枚もありゃあしなかった メエ メエ

「なんてえひどいやつだ!」と、仕立屋さんはさけびました。
「こんな罪(つみ)もないけものをひからびさせるなんて!」
こう言うと、仕立屋さんはかけあがり、ものさしでむすこをひっぱたいて、戸口から追いだしてしまいました。

こんどは、三ばんめのむすこの番です。
むすこは、なんとかうまくやってやろうと思いました。
そこで、それはそれはみごとに木の葉をしげらせているやぶを見つけだし、そこでヤギにえさを食べさせました。
やがて日がくれましたので、三ばんめのむすこは家へかえろうと思って、ヤギにたずねました。
「ヤギや、おなかはいっぱいかい?」
すると、ヤギはこたえて言いました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ

「それじゃ、うちへかえろう」と、三ばんめのむすこは言いました。
それから、むすこはヤギをヤギ小屋につれていって、しっかりとつなぎました。
「どうだな、ヤギはたくさん食べたか?」と、年をとった仕立屋さんがたずねました。
「ええ、ヤギはおなかがいっぱいで、もうひとっ葉もいらないって言っていましたよ」と、三ばんめのむすこがこたえました。
仕立屋さんはその言葉を信用せず、じぶんではいおりていって、ヤギにたずねました。
「ヤギや、おまえはほんとうにいっぱいかい?」
すると、このずるいけものはこたえたのです。なんでいっぱいになるもんかい
お墓の上をとんでいただけで
葉っぱなんか一枚もありゃあしなかった メエ メエ

「うそつきの悪党どもめ!」
と、仕立屋さんはどなりつけました。
「どいつもこいつも、ばちあたりななまけものばっかりだ。いい気になっておれをばかにしやがって!」
かんかんにおこった仕立屋さんは、夢中で部屋へかけあがると、かわいそうなむすこの背中をものさしでいやというほどなぐりつけました。むすこはたまらず、家からとびだして逃げていってしまいました。
こうして、年よりの仕立屋さんはヤギとふたりきりになってしまいました。
あくる朝、仕立屋さんはじぶんでヤギ小屋へおりていって、ヤギをなでてやりながら言いました。
「おいで、かわいいやつ。きょうはおれがじぶんで、おまえを草原へつれていってやるよ。」
仕立屋さんはつなをとって、ヤギを青あおとした生け垣のところや、『ヒツジのあばら』と呼ばれる草むらや、そのほかヤギの好きそうな草がはえているところへつれていってやりました。
「さあ、思うぞんぶん食べるがいい。」
仕立屋さんはこう言って、日がくれるまでヤギに草を食べさせました。
やがて日がくれたとき、仕立屋さんはたずねました。
「ヤギや、おなかはいっぱいかい?」
すると、ヤギはこたえて言いました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ

「それじゃ、うちへかえろう」と、仕立屋さんは言いました。
それから、仕立屋さんはヤギをヤギ小屋へつれていって、しっかりとつなぎました。
こうしておいて、仕立屋さんは一度そこをはなれましたが、もういちど気になって、もどってきて言いました。
「なあ、おまえも、これでやっとおなかがいっぱいになったろう。」
ところが、ヤギのほうは、相手が仕立屋さんに変わってもおなじことでした。あいもかわらず、

なんでいっぱいになるもんかい
お墓の上をとんでいただけで
葉っぱなんか一枚もありゃあしなかった メエ メエ

と、なきたてたのです。
仕立屋さんはこれをきくと、あまりのことにあっけにとられてしまいました。
そして、じぶんが三人のむすこたちを、なんの罪もないのに追いだしてしまったのだということが、はっきりとわかったのです。
「やい、待ってろ、恩知らずのちくしょうめ!」
と、仕立屋さんはさけびました。
「てめえは、ただ追いだすだけじゃ気がすまねえや。

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