また、その港の景色や街の様子についても……小路の角にはタバコ屋さんや果物屋さんがあって、赤い旗の立っている酒場もあるんだよ、と詳しく話してあげたのです。
「どうか、そのお人形が誰にも買われずに残っていますようにって、わたし、毎日祈っているわ」と、娘は希望に輝く目を上げて、窓から見える青い空を仰ぎ見たのでした。
しかし、娘の病気はなかなかなおりませんでした。
お医者さんは、来年の春になって暖かくなれば、きっと快方に向かうだろうが、それまでは大切に安静にしなければならないと言いました。
お父さんは、娘の体を深く気遣いながらも、再び遠い航海へ出かけることになったのです。
「今度帰るときには、必ずそのお人形を持ってくるからね」と、出発する時に父親は約束しました。
娘はその日から、まだ見ぬ人形にずっと憧れを募らせていました。
「そのお人形を、外国のどんな子供が持っていたのだろう……」
「どんな町のお家で、そのお人形は生まれたのだろう……」
「もしそのお人形が遠い旅をしてわたしのところへ来てくれたら、わたしはこの頼りないお人形さんをいっぱいいっぱいかわいがってあげるわ……」と、彼女はいつも心の中で思っていました。
そして、彼女の心はいつでも、あの港町の古道具屋の前をさまよっていたのでした。
* * * * *
南の国には、もう春が訪れていました。
ある日の昼ごろ、一台の馬車から降りて、古道具屋へ入ってきた美しい奥さまがいました。
「そのお人形を見せてくださいな」と彼女が言いました。
おばあさんが人形を見せると、奥さまはそれを手に取って、「なんていいお人形なんでしょう。私に売ってくださいな」と言いました。
すると、おばあさんはこう答えたのです。
「実はですね、毎日このお人形を見にいらっしゃる、かわいいお嬢さんがあるのですよ。その子が、『今夜の六時まではだれにも売らないで置いておいてほしい、お父さんがもらいに来るから』とおっしゃっているのですから、どうかその時刻までお待ちくださいませ。もしその時間になってもおいでにならなかったときは、あなたさまにお譲りします」
奥さまは、「それなら、またあとで来ますね」と言って帰っていきました。
ちょうどその日の夕方、船から上がった父親が、その店を訪ねました。
時間がちょうどぴったり、夜の六時になったときでした。
おばあさんからこれまでの事情を聞いて、父親は驚きで目を見張りました。
「なんと不思議なことだろう……」
たとえその娘が自分の子供とは別の少女であったとしても、父親は以前一度この人形の件でおばあさんと顔なじみになっていたため、おばあさんは「あなたが先にお願いしていた方ですからね」と言って、その人形を父親に売ってくれたのでした。
初級翻訳・お父さんの見た人形 第2話
お父さんの見た人形
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