初級翻訳・がちょうの たんじょうび 第1話

がちょうの たんじょうび

がちょうの たんじょうび
新美南吉

ある農家の裏庭に、アヒルや、ガチョウや、モルモットや、ウサギや、イタチなどが住んでいました。
さて、ある日のこと、ガチョウの誕生日だというので、みんなはガチョウのところへごちそうに招かれていきました。
これで、イタチさえ呼んでくれば、みんなお客がそろうわけですが、さて、イタチはどうしましょう。
みんなはイタチが決して悪いものではないことを知っていました。
けれど、イタチにはたったひとつ、よくない癖がありました。
それは大勢の前では、言うことができないような癖でありました。
なにかと申しますと、ほかでもありません、大きな激しいおならをすることであります。
しかし、イタチだけを呼ばないとイタチはきっと怒るに違いありません。
そこで、ウサギがイタチのところへ使いにいきました。
「今日はガチョウさんの誕生日ですからおでかけください」
「あ、そうですか」
「ところで、イタチさん、ひとつお願いがあるのですが」
「なんですか」
「あの、すみませんが、今日だけはおならをしないでください」
イタチは恥ずかしくて、顔をまっかにしました。
そして、
「ええ、決してしません」
と答えました。
そこでイタチはやっていきました。
いろいろなごちそうが出ました。
おからや、にんじんのしっぽや、うりの皮や、おぞうすいや。
みんなはたらふく食べました。
イタチもごちそうになりました。
みんなはいい具合だと思っていました。
イタチがおならをしなかったからであります。
しかし、とうとう、大変なことがおこりました。
イタチが突然ひっくりかえって、気絶してしまったのです。
さあ、大変。
さっそく、モルモットのお医者が、イタチのぽんぽこに膨れたおなかを診察しました。
「みなさん」とモルモットは、心配そうにしているみんなの顔を見まわして言いました。
「これは、イタチさんが、おならをしたいのをあまりがまんしていたのでこんなことになったのです。
これを直すには、イタチさんにおもいきりおならをさせるよりしかたはありません」
やれやれ。
みんなのものはためいきをして顔をみあわせました。
そしてやっぱりイタチはよぶんじゃなかったと思いました。

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