(ヤマネに描いてもかまわんよ)として下さった
(3年寝たきりでも文句ひとつない)
ジョン・テイラーおじいさんに心からささげます
むかしむかし、ある村に小さなお店が1けんありました。
窓のうえにかかげられた名前は、〈ジンジャー&ピクルス〉。
それはとっても小さなお店で、ちょうどお人形のおうちにぴったりの大きさ――だから、リュシンダとエプロン姿のジェーンは、いつも〈ジンジャー&ピクルス〉でこまごました日用品を買い込んでいました。
中にあるカウンターは、ウサギがちょうどとどく高さです。
ジンジャー&ピクルスでは、赤の水玉もようのハンカチが、銅貨(どうか)1まいと青銅貨(せいどうか)3まいで売られていました。
ほかにも、お砂糖や、かぎタバコ、雨ぐつなどもあつかっています。
なんと、こんなに小さなお店なのに、ほとんど何でも買うことができるのです――ときどき、うっかりあわてて欲しくなるようなものは置いていないこともありますけど――たとえば、靴ひもとか、ヘアピンとか、マトンチョップとかね。
ジンジャー&ピクルスというのは、お店を営んでいるふたりの名前です。
ジンジャーはちゃトラのオスねこで、ピクルスはテリア犬。
ピクルスは、いつもアナウサギたちからちょっと怖がられていました。
お店のひいきにはハツカネズミもいたのですが――その子たちだけは、どういうわけかジンジャーのことがとっても怖いのです。
そういうわけで、ハツカネズミの相手はたいていピクルスにまかされます。
ピクルスいわく、「よだれが出てしまうから」だって。
「我慢できねえんだ。小づつみかかえてドアから出ていくやつらを見るだけで、もうさ」
「私も、クマネズミが相手だとおなじ気持ちになるよ」とピクルス。
「でもまあ、うちのお客をじぶんで食うなんて、あっちゃいけない。ここへは近づかないで、ぐいぐいタビサのところへいってしまうんだ」
「むしろ、どこにも行けなくなるんじゃねえの」と、ジンジャーの返事は重苦しい。
(ぐいぐいタビサは、村にもうひとつだけあるお店の主人です。そっちはツケがきかないのです。)
ジンジャー&ピクルスでは、どこまでもツケがききました。
そもそも〈ツケ〉というのはこういうこと――お客さんがせっけんをひとつ買ったとして、そのときにお客さんがおさいふを取り出して代金を払うかわりに、「またこんど支払うよ」と言っておくのです。
するとピクルスは、ふかぶかとおじぎをして、「いいですとも、おくさん」と言います。そして、帳面にそのことを書きつけておくのです。
お客さんはくりかえしやってきては、たくさん買い込んでいきました。ジンジャーとピクルスがたとえ怖くても、やっぱりお店にやってきます。
ただし、その〈こんど〉の支払いが、いつまでたってもやってきません。
お客さんは毎日大入りで、キャラメルがとくにたくさん売れていきます。
なのに、いつまでたっても支払いがありません。
銅貨1まいで買えるペパーミントのキャンディにも、お金を払ってくれないのです。
とはいえ、売り上げじたいはかなりのもので、ぐいぐいタビサの10倍はありました。
ずっとお金が支払われないので、ジンジャーとピクルスは、売り物に手をつけて食べるしかありません。
ピクルスはビスケットを食べ、ジンジャーはタラのひものを口にしました。
ふたりは店をしめたあと、ろうそくの明かりだけでそれを食べるのです。
1月1日になっても代金が払われないので、ピクルスは犬のライセンス(鑑札)を手に入れることもままなりません。
「まったく困ったもんさ、もうおまわりさんが怖くって」とぼやくピクルス。
「そんなの、てめえがテリアのせいだろ。『こっち』はライセンスなんていらないし、コリー犬のケップだっていらねえのに」
「ああ、落ち着かないったらありゃしない。呼び出しをくらうかと思うとヒヤヒヤするよ。郵便局で、ツケでライセンスをもらおうとしてみたんだけど、ダメだったんだ」とピクルス。
「あのあたりはおまわりさんでいっぱいさ。帰り道にもひとりにくわちまったし。ひげひげサミュエルに、もう1度お勘定を送ってみようか、ねえジンジャー、ベーコンのツケが、白銅貨(はくどうか)22まいと銅貨9まい分もあるんだよ」
「あいつ、払うつもりなんてぜんぜんねえんじゃないの」と返すのはジンジャーです。「それに、アナ・マライアはどうも品物を万引きしている――あだけのクラッカーはどこへ行った?」
「てめえで食べたじゃねえか」と返すジンジャー。
ジンジャーとピクルスは奥の部屋へさがりました。
ふたりはお金の出入りを調べに調べます。
数字の列をたしあわせて、たしあわせて。
「ひげひげサミュエルは、ひげの長さと同じくらいお勘定をためやがる。
10月からの分で、かぎタバコが50グラムもだぜ」
「バター3キロと、ふうろう1ぽんと、マッチ4ほんでいくら?」
「またかたっぱしからお勘定を送りつけろ、のしをつけてな」と返すのはジンジャー。
しばらくすると、お店から物音がして、何かがドアから入ってきたような感じでした。
そこで奥の部屋から出ていくと、カウンターの上に封筒がひとつ置かれていて、そこではおまわりさんが手帳に何か書きつけていまして!
ピクルスはひきつけを起こすばかりに、「ワン」とほえ、「ワンワン」とほえ、さっと駆け寄ります。
「感じまえ、ピクルス! 感じまいな!」とお砂糖のたるのうらからまくしたてるジンジャー。
「そんなのただのドイツにんぎょうだ!」
おまわりさんは手帳に書くのをやえず、2度えんぴつを口にくわえて、1どなんかそれをとうみつにひたしたりして。
ほえまくるピクルスはついに声までからします。
なのにやおまわりさんは気に留めるそぶりさえなく。
ビーズの目にぬいつけられたヘルメット。
ようやくなんとか思い切って飛びかかったピクルス――ところがお店はもぬけのからで。
おまわりさんの姿もありません。
とはいえ封筒はそのまま。
「どう思う、ほんもののおまわりさんのひとを呼びに戻ったのかな? それとも呼びだしの手紙?」とピクルス。
「ちがう」と答えるジンジャーは封筒をひらいていまして。
「税金ぜ、ちほうと国の。
おうどか3まい、はくどか19まい、どうか3まいに、せいどか4まいだとさ」
「とどめの一撃か」とピクルス。
「お店をたたもう」
ふたりはシャッターをしめて出ていきました。
といってもそこから遠くへ離れてしまったわけではありません。
まあ、もっと遠くへいきやがれって心で思っていた向きもあるのですが。
ジンジャーのいまの住まいはウサギのすむような穴のあたり。
どんな仕事をやろうとしているのか私にはわかりません。
なんだか太って幸せそうですが。
ピクルスはいま狩り場の番人をしています。
お店がしまったことで大変不便になりました。
ぐいぐいタビサは品物をみんな値上げしたうえ、いままでどおりツケを受けつけてはくれませんし。
もちろんもの売りの二輪馬車はまわってきます――お肉屋さんに、魚屋さん、それからパン焼きティモシー。
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