初級翻訳・ブレーメンの町楽隊 第2話

グリム ヴィルヘルム・カール

たいへんな怪物がとびこんできた、そうとよりほか考えられなかったのです。
もうすっかりおびえきって、てんでに頭をかかえて、外の森の中へ逃げだしていきました。
そこで四人組はゆうゆうとテーブルにつきました。
ごちそうは残り物でも我慢することにして、それでも、これからあと四週間くらい断食してもいいという意気込みで、つめこめるだけたらふく食べました。

三

さて、四人組の楽隊仲間はおなかがいっぱいになると、明かりを消して、めいめいの生まれつきと好き好きにまかせて、いい具合の寝床を探して休みました。
ろばは外の積み重ねられた干し草の上に寝ました。
犬は戸のかげに寝ました。
猫はへっつい(かまど)の上で、灰のぬくもりを探して寝ました。
おんどりはとまり木の代わりに、屋根裏の梁(はり)の上にのりました。
なにしろみんな遠道をしてきてくたびれていましたから、もうさっそくにぐっすり眠りこみました。
真夜中を過ぎたときに、泥棒どもが遠くから見ると、家の中には明かりがともっておらず、中はひっそりかんと静まりかえっているようでした。
「どうもおれたち、おどかされて逃げだしたと言われちゃあ、がまんできないぞ」
かしらはこう言って、ひとり手下に言いつけて様子を見せに行かせました。
さて、言いつかった手下がはいってみると、家の中はどこもひっそりしていました。
そこで明かりをつけてみようと思って台所へ行きました。
すると、闇に光っている猫の目を炭火とまちがえて、いきなりマッチを突っ込みました。
ところが、猫のほうはお安いご用と受けてはくれず、ううう、とたけりながら顔にとびついて、めったやたらに引っかきました。
いやはや驚いたのなんの、手下の泥棒はしたたかにやられてびっくり仰天、はいもう、裏の戸口から逃げだそうとしますと、そこに寝ていた犬がとびあがってむこうずねにかみつきました。
そこで庭へかけだして、積み重ねた干し草のそばをかけぬけようとしますと、ろばがあと足でしたたかにけとばしました。
すると、この騒ぎで目をさまさせられたおんどりは、梁の上からはしゃぎきって、ひと声、「キケリッキー!」とどなり立てました。泥棒は、命からがら、夢中で逃げ出して親分のところへ帰りました。
そしてこう言いました。
「いやはや大変です! あの家にはものすごい魔物が入り込んでいて、いきなり気味悪く『ふうう』と息を吹きかけてきて、長ーい爪の指で顔をめったやたらに引っかいてきやがったんです。
それから、出口の戸のところには男が待ち構えていて、小刀で足のすねをぶすりと突き刺しました。
庭へ出ると、今度は何とも正体の知れない真っ黒な化け物が立っていて、太いこんぼうで強烈に殴りつけてきたんです。
その上、屋根の上の高いところには、なんと裁判官が陣取っていまして、『さあ、その悪者をここへ連れて来い!』と大声でどなりやがったんです。
いやもう、散々な目にあって、命からがら逃げてきたってわけですよ!」
それからは、泥棒たちもすっかりこりてしまい、二度とあの家には近づこうとはしませんでした。
ところで、ブレーメンの音楽隊の仲間たち四人組は、この家がすっかり気に入ってしまったので、もう二度とよそへ出て行こうとは思いませんでした。
さて、これまでお話ししたこの物語は、ついこの間、まさに湯気の立つような出来立ての口から直接聞いたお話ですよ。

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