初級翻訳・ルンペルシュチルツヒェン 第1話

グリム ヴィルヘルム・カール

むかし、あるところに粉屋がおりました。
水車小屋で粉をひく仕事で、貧しい暮らしをしていましたが、ひとり、とても美しい娘がいました。
あるとき、ひょんなことから、この粉屋が王さまと話をする機会がありました。
そこで、少しばかり自分をよく見せようとして、粉屋はこんなことを言いました。
「わたしの娘は、わらを紡いで金に変えることができるのですよ」

王さまは、粉屋の話を聞いて言いました。
「ほう、それはめずらしい特技だね。本当に話のとおり、おまえの娘にそんな器用なことができるなら、さぞ面白いことだろう。では、明日さっそく城へ連れてくるがいい。ひとつ、わたしが試してみよう」

さて、娘は無理やり王さまのところへ連れてこられました。王さまは娘を、わらが山ほど積んである部屋へ入れると、糸車と巻き枠を渡してこう言いました。
「さあ、仕事にかかるがいい。今夜から明日の朝早くまでかかって、このわらが金に紡げなければ、おまえの命はないものと思え」

そう言い残して、王さまは自分で部屋の戸に鍵をかけてしまいました。
娘はひとりぼっちで取り残されました。娘はぽつねんとそこに座り込んだまま、どうしたらいいのか途方に暮れていました。わらを金にするなんて、やり方などまったくわかりません。だんだん心配になってきて、ついに耐えきれなくなると、娘はわっと泣き出しました。

すると、突然戸が開きました。ひとり、豆粒のように小さな男が入ってきて、こう言いました。
「こんばんは、粉屋のお嬢さん。どうしてそんなに悲しそうに泣いているんだい?」
「ええ、わらを金に紡がなければならないのだけれど、やり方がわからないの」と娘は言いました。
すると小人は言いました。
「わたしが代わりに紡いであげたら、お礼に何をくれるんだい?」
「この首飾りをあげるわ」と娘が言うと、小人は首飾りを受け取り、糸車の前に座りました。

ぶるるん、ぶるるん、ぶるるん。
三度まわすと、巻き枠は金の糸でいっぱいになりました。それから小人は二番目の巻き枠をかけて、またぶるるん、ぶるるん、ぶるるん。三度まわすと、二つ目の枠もいっぱいになりました。こうして次々とやっていくうちに朝が来ました。巻き枠はすっかり、すべて金の糸になっていました。

お日さまがのぼると、王さまがやってきました。部屋中がきらきら光る金を見て、王さまはびっくりしました。しかし、それを見るとかえって、もっともっと金がほしくなりました。王さまは、娘をさらに広い、わらがいっぱいに積まれた別の部屋へ連れて行かせました。そして、命が惜しければ、ひと晩でこれを金の糸に紡げと命じました。

娘がどうしていいかわからず泣いていると、また戸が開いて小人が姿を現しました。そして、
「わらを金に紡いだら、お礼に何をくれるんだい?」と言いました。
「指にはめている指輪をあげるわ」と娘は言いました。
小人は指輪をもらうと、また糸車をぶるるん、ぶるるんとまわしはじめました。そして朝までに、すべてのわらをきらきら光る金の糸に仕上げました。

王さまはうずたかい金の山を見てにこにこしましたが、それでもまだ満足できませんでした。そこでまた、わらがいっぱいに積まれた、もっと大きな部屋へ娘を連れて行かせました。そして、
「さあ、今晩のうちにこれを仕上げるのだ。うまくやり遂げれば、わたしの妃にしてやろう」と言いました。
(よし、粉屋の娘とはいえ、世界中を探したってこれほどの金持ちの妻はいないからな)と王さまは考えていたのです。

さて、娘がひとりぽつねんとしていると、例の小人が三度目にやってきてこう言いました。
「さあ、今度もわらを金に紡いであげたら、お礼に何をくれるんだい?」
「あたし、もうあげるものなんて何もないわ」と娘は答えました。
「じゃあ、こういうことにしよう。「あなたが王さまのお妃になったら、最初に生まれた子どもをわたしにちょうだい。そう約束してほしいんだ」

(この先、どうなるかなんて誰にもわからないわ)と、粉屋の娘は思いました。
それに、もう逃げ場のないほど追い詰められていて、ほかにどうすることもできませんでした。
そこで娘は、小人の望む通りに約束をしてしまったのです。
すると小人は、三度目のわらをすべて金へと紡いでくれました。
翌朝、王さまがやってくると、注文通りにすべてが金に変わっているのを確認しました。
王さまはさっそく娘と結婚式を挙げ、粉屋の美しい娘は王妃となりました。

一年が経ち、王妃は愛らしい子どもを生みました。
もう、あの小人のことなどすっかり忘れていました。
すると突然、小人が部屋にひょっこりと現れて言いました。
「さあ、約束の品をもらいに来たよ」

王妃はぎくりとしました。
どうか子どもを連れて行くのは勘弁してほしい、その代わりにこの国中の宝をすべて差し上げるから、と必死に頼み込みました。
しかし、小人は言いました。
「いいや、生きている子どものほうが、世界中の宝を全部もらうよりずっといい」

そう言われて、王妃はオロオロと泣き出し、しくしくと肩を震わせました。
そんな王妃の様子を見て、さすがの小人も少し気の毒になりました。
「じゃあ、三日だけ待ってやる」と小人は言いました。
「その間に、わたしの本当の名前を言い当てることができたら、子どもは返してやろう」

王妃はひと晩じゅう、自分がこれまでに聞いたことのある名前をすべて思い出し、あれやこれやと考えてみました。
それから、使いの者を国中に走らせ、この世にはどんな名前があるのか、どんなに遠くへでも足を伸ばして調べてくるように命じました。
翌日、小人がやってきました。
王妃はここぞとばかりに、カスパル、メルヒオール、バルツェル……と、思いつく限りの名前を次々に挙げていきました。
しかし、どの名前を言っても、小人はそのたびに「それはわたしの名前じゃないぞ」と首を振るばかりでした。

二日目、王妃は使いの者に、今度は近所の人々から世間ではどんな名前が使われているかを聞いてこさせました。
小人がやってくると、王妃はできるだけ聞きなれない、風変わりな名前を並べてみました。
「もしかして、リッペンビーストさんじゃない? それともハメルスワーデさん? もしかして、シュニールバインさんかしら?」
しかし、小人はやはり「そんな名前じゃないぞ」と繰り返すだけでした。

さて、三日目になると、使いの者が帰ってきてこう報告しました。
「新しい名前は見つかりませんでしたが、ある高い山のふもと、森を抜けたところで、思いがけないものを見つけました。
そこではキツネとウサギが『さようなら、おやすみなさい』と挨拶を交わしていました。
その近くに小さな小屋が一軒ありまして、家の前でたき火を囲んで、ひどく滑稽な小人が一本足でぴょんぴょこ、ぴょんぴょこと跳ね回りながら、こう歌っていたのです。

今日はパン焼き、明日は酒造り、
一夜明ければ王妃の子をいただく。
あぁ、めでたい、誰にも知られぬ、
俺の名前は、ルンペルシュチルツヒェン。

と、そう言っているのを聞きました」

ついに小人の名前を知ることができた王妃は、どれほど喜んだことでしょう。
みなさんも、想像してみてください。

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