初級翻訳・ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記 第11話

ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記

サンムトリ山の熱いマグマにとどいて、
ついに、もう一度ばくはつをおこしたぞ!
フィガロ、フィガロト、フィガロット!
フィガロ、フィガロト、フィガロット!」

ネネムはおどって、あばれて、どなって、笑いながら走り回りました。
その時、どうしたはずみか、足が少し「悪い方」へはずれてしまいました。
その「悪い方」というのは、クラレの花がさく「ばけものの世界」の野原から、ほんの少しうしろ……というよりは、少し前にある「人間の世界」のことでした。
「あっ、裁判長がしっぱいしたぞ!」
と、だれかがするどい声でさけんだようでしたが、ネネムはもう、頭がカーンと鳴りひびいたまま、まっ黒でゴツゴツした岩の上に立っていました。
すぐ目の前には、まるで夢の中のような、細くてたよりない道が、灰色のコケの間をふらふらとのびていました。
空はまっ白でとても高く、うしろの方はけわしい坂道になっていて、それもすぐに一面の白い雲の中に消えていました。
さっきまで歌っていた、あのばけもの世界のクラレの花がさく野原は、いったいどこへ行ってしまったのでしょう。
実はそこは、ネパールという国からチベットへ入る峠のてっぺんだったのです。
ネネムのすぐ目の前には3本のさおが立っていて、その上には細長いひものようなボロきれがたくさん結びつけられ、風にパタパタパタパタとはためいていました。
ネネムはそれを見て、思わずゾッとしました。
それこそ、何度も話に聞いたチベットの「魔よけの旗」だったからです。
ネネムはにげ出しました。
まっ黒でけわしい岩の山道を、どこまでもどこまでもにげました。
ところが、すぐ向こうから2人の巡礼さんが、小さな声で歌を歌いながらやってきました。
ネネムはあわてて、バタバタともがきました。
なんとかして早く、ばけものの世界にもどろうとしたのです。
巡礼さんたちは、すぐにネネムを見つけました。
そして、びっくりして地面にひれふすと、なんだかわけのわからないじゅもんをとなえ始めました。
ネネムは、まるで体がしびれたようになってきました。
そしてだんだん意識が遠のいていき、ついに「ガーン!」と気絶してしまいました。
ガーン。
それからしばらくして、ネネムはすぐ耳のそばで、
「裁判長! 裁判長! しっかりしてください、裁判長!」
という声を聞きました。
おどろいて目を開けてみると、そこはさっきのクラレの野原でした。
30人の部下たちがまわりに集まって、とても心配そうにしています。
「ああ、ぼくはどうしちゃったんだろう?」
「たった今、空から落ちてこられたのですよ。お体の方は大丈夫ですか?」
一番えらい裁判官がたずねました。
「ああ、ありがとう。もう大丈夫だ。……でも、ついにぼくは『出現』してしまった。ぼくは今日、自分自身を裁判しなければならない。ああ、ぼくはもう、仕事を辞めることにするよ」「それから、明日から百日間、ばけものの大学校のそうじをすることにするよ。ああっ、もう何もかもおしまいだ!」
ネネムは思わず、わっと泣きだしてしまいました。
すると、三十人の部下たちもいっしょになって、大声で泣きはじめました。
その泣き声は「ノンノンノンノン」と地面をゆらして波をたて、はるか向こうのサンムトリ山までとどきました。ちょうどその音が山にとどいたころ、サンムトリ山は真っ赤な火柱を空高くふき上げて、五回目の大ばくはつをおこしたのです。
「ガーン! ドロドロドロドロ!」
風がどっと吹きぬけて、折れてしまったクラレの花がプルプルとはげしくふるえました。

(ここで、お話の原稿は終わっています)

コメント

タイトルとURLをコピーしました