初級翻訳・ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記 第10話

ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記

とうとうこんな変なことになりました。
これというのも、テジマアのばけものの格が高いからです。
とにかく、そこでペンネンネンネンネン・ネネムはすっかり安心しました。

五、ペンネンネンネンネン・ネネムの出現

 ペンネンネンネンネン・ネネムは、独立もしましたし、出世もしましたし、世界中を巡視もしましたし、すっかり安心もしましたから、だんだん体も太り、声もとても重々しくなりました。
たいていの裁判は、ネネムが出て行って、どっしりと椅子に座り、ものを言おうとちょっと唇を動かしますと、もうちゃんと言い渡しが決まってしまうのでした。
さて、ある日曜日、ペンネンネンネンネン・ネネムは三十人の部下をつれて、銀色のマントをひるがえしながら丘へと出かけました。
クラレというユリのような花が、まっ白にまぶしく光って、丘の上にも谷間にも一面に咲いていました。
ネネムは草の上に座って、つくづくとまっ青な空を見上げました。
部下の判事や検事たちが、その両側からぐるっと輪になって並びました。
「どうだい。
いい天気じゃないか。
ここへ来て見ると、われわれの世界もずいぶん静かだな。」
ネネムが言いました。
みんなの影法師が、草の上にまっ黒に落ちました。
「近ごろは噴火もありませんし、地震もありませんし、どうも空は青い一方ですな。」
 判事たちの中で一番位の高い、まっ赤なばけものが言いました。
「そうだね、まったくそうだ。
しかし昨日、サンムトリが大分鳴ったそうじゃないか。」
「ええ、新報に出ておりました。
サンムトリというのはあれですか。」
 二番目にえらい判事が、向こうの青く光る三角な山を指さしました。
「うん、そうさ。
僕の計算によると、どうしても近いうちに噴き出さないといかんのだがな。
なにせ、サンムトリの底のガスの圧力が、九十億気圧以上になっているんだ。
それにサンムトリの一番弱い所は、八十億気圧にしか耐えないはずなんだ。
なのに噴火をやらないというのはおかしいじゃないか。
僕の計算にまちがいがあるとは、どうもそう思えんね。」
「ええ。」
 上席判事やみんなが一緒にうなずきました。
そのとき、向こうのサンムトリの青い光が、ぐらぐらっと揺れました。
それから横の方へ少し曲がったように見えましたが、たちまち山がスイカを割ったようにまっ二つにパカリと開き、黄色や褐色の煙がぷうっと高く高く噴き上がりました。
それから黄金色のマグマがキラキラキラと流れ出して、見る間にずっと扇の形に広がりました。
見ていた人たちは、
「ああ、やったやった!」
とそちらに手を伸ばして高く叫びました。
「やったやった、とうとう噴いたぞ!」
と、ペンネンネンネンネン・ネネムは高貴な紺青色に輝きながら、静かに言いました。
そのときはじめて地面がぐらぐらぐらと波のように揺れ、
「ガーン、ドロドロドロドロドロ、ノンノンノンノン。」
と、耳も破れそうなほどの音がやって来ました。
それから風がどうっと吹いていって、たちまちサンムトリの煙は向こうの方へ曲がり、空はますます青く、クラレの花はさんさんと輝きました。
上席判事が言いました。
「裁判長は、どうも実に偉大だ。
今や地殻までが、裁判長の神聖な裁断に服従するのだ。」
 二番目の判事が言いました。
「実にペンネンネンネンネン・ネネム裁判長は超怪である。
私は、ニイチャの哲学が、おそらくは裁判長から暗示を受けているものであることを主張する!」
 みんなが一度に叫びました。
「ブラボー、ネネム裁判長!
ブラボー、ネネム裁判長!」
 ネネムは静かに微笑んでいました。
その得意な顔は、まるで青空よりも輝き、上等な瑠璃よりも冴えわたっていました。
それだけでなく、みんなのブラボーの声は高く天地に響き渡り、地殻がノンノンノンノンと揺れ、やがてその波がサンムトリに届いたころ、サンムトリがその影響を受けて火柱を高く上げ、第二の爆発を起こしました。
「ガーン、ドロドロドロドロ、ノンノンノンノン。」
 それから風がどうっと吹いていって、火山弾や熱い灰や、すべての危ないものがこの立派なネネムの方に落ちてこないように、山の向こうの方へと追い払ってくれたのでした。
ネネムはこのときはまさに喜びの絶頂でした。
ついに立ち上がって、高らかに歌いました。
「おれは昔は森の中の昆布取り、
 その昆布網が空にひろがったとき
 風の中のふかやさめがつきあたり
 おれの手がぐらぐらとゆれたのだ。
 おれはフウフィーヴオ博士の弟子
 博士はおれの出した筆記帳を
 あくびと一しょにスポリと呑みこんだ。
」それから、博士はまどからピョーンと飛び出していきました。
「ぼくはむかし、手品師のテジマアに、いもうとをさらわれたことがあったんだ。
そのテジマアのところで、いもうとは大スターになっていたんだよ。
今のぼくは、くんしょうを1200個も持っているし、わらのオムレツだってもう食べあきちゃった。
ぼくが『こうだ!』と決めれば、地面だってしたがう。
あのサンムトリ山だって、スイカみたいにパカッと割れたんだ」

さあ、30人の部下である裁判官や検事たちは、すっかりその気になって、みんなでいっしょに立ち上がりました。

「ブラボー、ペンネンネンネンネン・ネネム!
ブラボー、ペンペンペンペンペン・ペネム!」

そうさけびながら、おどりはじめました。
「フィガロ、フィガロト、フィガロット!」

クラレの花がキラキラとかがやき、そのくきがパチンパチンと折れました。
みんなの影は、まるで戦争みたいにはげしく動き回っています。
向こうの方では、サンムトリ山が3回目の大ばくはつをしています。
「ガーン! ドロドロドロドロ、ノンノンノンノン!」
黄金色のマグマに、まっ黒なけむり。
「フィガロ、フィガロト、フィガロット。
ペンネンネンネンネン・ネネム裁判長!
そのいばった姿は金の角とならぶほど。
真昼のクラレの花がさく丘に立って、
遠くで青く光るサンムトリ山に命令するんだ。
青く光る三角のサンムトリ山が、
あっという間に火柱を空高くふき上げる。
風が吹いてクラレの花がかがやき、
ペンネンネンネンネン・ネネムは高らかに笑う。
ブラボー! ペンネンネンネンネン・ネネム!
ブラボー! ペンペンペンペンペン・ペネム!」

その時、サンムトリ山がちょうど4回目の大ばくはつをおこしました。
「ガーン! ドロドロドロドロ、ノンノンノンノンノン!」
ネネムをはじめ、ばけものの検事も裁判官も、みんな夢中になって、歌っておどって、はね回りました。
「フィガロ、フィガロト、フィガロット!
風が青空をほえながら通りすぎれば、
その風が地面までおりてきて、
クラレの花がサンサンとかがやく。
ぼくたちのマントがひらひらとはためく。
さっきかけぬけていった風が、
今、サンムトリ山にとどいたんだ。
あのまっ黒なけむりの柱が、
向こうの方へたおれていく。
フィガロ、フィガロト、フィガロット!
ブラボー、ペンネンネンネンネン・ネネム!
ブラボー、ペンペンペンペンペン・ペネム!
ぼくたちのさけび声は地面をゆらし、
その波は1分間に25ノットの速さで進む。

コメント

タイトルとURLをコピーしました