初級翻訳・六羽の白鳥 第1話

グリム ヴィルヘルム・カール

一

ある国の王さまが、深い森の中で狩りをしていました。
王さまは一匹の獲物を見つけると、夢中になって追いかけました。あまりに速く走ったので、家来たちは誰もついていくことができません。
やがて日が暮れかけてきたので、王さまは追うのをやめて立ち止まり、あたりを見回しました。すると、自分が深い森の奥深くに迷い込んでいることに気がつきました。
森を出る道を探しましたが、どうしても見つかりません。
その時、向こうから頭をゆらゆらと揺らしながら、一人の老婆がやってきました。ただの老婆ではなく、魔法使いの女でした。
「おばあさん、この森を出る道を教えてくれないか」
王さまが尋ねると、老婆はこう答えました。
「ええ、王さま。それは簡単なことでございますよ。ですが、その代わりに一つお約束をしていただきたいのです。それを守ってくださらなければ、王さまはこの森から決して出ることはできず、ここで飢え死にしてしまうでしょう」
「どんな約束だ?」と王さまが尋ねると、老婆は言いました。
「私には一人の娘がおります。この世に二人といないほど美しい娘で、王さまのお妃としてこれ以上ない相手です。どうでしょう、娘を妻に迎えてくださるなら、森を出る道を教えてさしあげましょう」

王さまは森から出られなくなるのが恐ろしくて、言われるままに承知しました。すると老婆は王さまを自分の小屋へと案内しました。
小屋の中では、娘が火にあたっていました。娘はまるで王さまが来ることを知っていたかのように、嬉しそうに立ち上がって迎えました。
王さまが見ると、確かにとても美しい娘でしたが、なぜか心から好きになれませんでした。顔を見ていると、ぞっとするような嫌な予感がしてならないのです。
それでも王さまは娘を自分の馬に乗せ、老婆に教えてもらった道を通って、ようやくお城へ帰ることができました。そしてすぐに結婚式が挙げられました。

実はこの王さまには、前の奥さまとの間に六人の王子と一人の王女、合わせて七人の子供がいました。王さまは世界中の何よりも、この子供たちを大切にしていました。
王さまは、新しいお妃が子供たちにひどいことをするのではないかと心配になり、森の奥深くに建つ古い御殿に子供たちを隠しました。
その御殿は誰にも見つからない場所にあり、たどり着くのも非常に困難でした。王さまがそこへ行けるのは、ある魔法使いの女からもらった「不思議な糸巻き」のおかげでした。その糸巻きを地面に転がすと、糸がひとりでにほぐれていき、正しい道を教えてくれるのです。

王さまがたびたび子供たちに会いに行くうちに、お妃は王さまが留守にしていることに気づきました。お妃はだんだん気になって、王さまが森の中で一体何をしているのか知りたくてたまりません。
そこで、王さまの家来たちにたくさんの金貨を渡して問い詰めると、彼らは王さまの秘密をすべて喋ってしまいました。不思議な糸巻きが道しるべであることまで、残さず話したのです。

それ以来、お妃は糸巻きの隠し場所を探し回りました。ついにそれを見つけ出すと、白い絹で小さな肌着を六枚縫いました。お妃は母親から教わった魔法を使って、その肌着に恐ろしい呪いをかけたのです。

ある日、王さまがまた狩りに出かけて留守にしました。お妃はその肌着を持って森へ向かいました。糸巻きが道しるべとなって、御殿まで導いてくれました。
子供たちは遠くから誰かが来るのを見て、お父さまが来たのだと思い、大喜びで飛び出してきました。
するとお妃は、子供たち一人ひとりに向かって、魔法の肌着をさっと投げかけました。
肌着が子供たちの体に触れた瞬間、みんな白鳥の姿に変わってしまい、バタバタと羽ばたいて森の向こうへ飛んでいってしまいました。
お妃は「うまくいった!」と大喜びで家に帰りました。これで目の上のたんこぶだった子供たちを片付けられたと、安心していたのです。でも、女の子だけは一人、そのときお兄さんたちについて飛び出していかなかったので、この子がいることを、お妃は少しも知りませんでした。

二

それからしばらくして、王さまがお子たちに会いに来ました。
ところが、女の子だけで、あとの子供たちは誰一人見当たりません。
「お兄さんたちはどこへ行ったのだ?」と、王さまはたずねました。
「ああ、お父さま」と、女の子は言いました。「お兄さんたち、みんなどこかへ行ってしまいました。ひいさま(末の妹)を一人残して……」
そして女の子は、窓のところから見ていたら、お兄さんたちが白鳥になって森の向こうへ飛んでいってしまった話をしました。それから、その白鳥の羽根がお庭に落ちていたのを拾っておいたものを見せました。
王さまは悲しい思いをしました。でも、それをまさかお妃の悪い仕業だとは、思いもよりませんでした。そこで、この上女の子までさらわれては大変だと思って、一緒に連れて帰ろうと考えました。
けれど、このひいさまは、なんだか継母のお妃さまが怖かったので、王さまに「どうぞ、せめて今夜もう一晩、このまま森の御殿にいさせてください」と頼みました。
ひいさまは、いじらしくもこう思っていたのです。
「お兄さんたちは、もうここにはいないのね。よし、私が行ってお兄さんたちを探し出してこよう」

暗くなるのを待ちかねて、そっとひいさまは家を抜け出すと、まっすぐ森の中へ入っていきました。それから一晩中歩き回り、次の日もまた歩き通しに歩いたので、さすがにくたびれて、もう一歩も動けなくなりました。
ふと一軒の森の小屋を見つけて入っていくと、部屋の中にベッドが六つ並んでいました。けれどひいさまは、その上にいきなり体をのせることは遠慮して、一つのベッドの下にもぐり込み、床の硬い板の間でごろりとなって、今夜は明かすつもりでした。

すると、お日さまがやがて沈もうという時分、バサバサという音がして、六羽の白鳥が窓のところへ飛び込んでくるのがわかりました。
白鳥たちは床の上に並びました。そして、お互いにふうふうと息を吹きかけると、残らずの羽根が吹き飛んで落ちました。そうして、かぶっていた白鳥の皮が、肌着を脱ぐように脱げたのです。
ひいさまが見ると、それがお兄さんたちだとわかったので、大喜びでベッドの下から這い出しました。お兄さんたちも、小さい妹を見つけたので、負けずに大喜びしました。
でも、みんなのこの喜びは、つかの間のことでした。

「おまえ、ここにこうしてはいられないよ」とお兄さんたちは小さい妹に言いました。「この家は山賊の隠れ家なんだ。だから、やつらが帰ってきておまえを見つけたら、きっと殺されてしまうよ」
「だって、お兄さんたち、私の味方をしてくださるでしょう?」と、小さい妹は言いました。
「ううん、だめなんだ」とお兄さんたちは答えました。「だって僕たちは、毎晩たった十五分だけ白鳥の皮を脱いでいられることになっていて、そのあいだに人間の姿に戻るんだけれど、それが過ぎるとまた白鳥にされてしまうんだもの」

そう聞いて、小さい妹姫は泣きながらたずねました。
「お兄さんたち、いったい、どうかしてもとに戻ることはできないの?」
「ああ、それがね」とお兄さんたちは言いました。「できるにはできても、それをするのがとても難しいんだよ。

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