初級翻訳・星の銀貨 第1話

グリム ヴィルヘルム・カール

昔々、あるところに、小さな女の子がいました。
この子には、お父さんもお母さんもいませんでした。
家がとても貧しかったので、しまいに住む部屋もなくなれば、眠るベッドもなくなってしまい、最後には、体につけているもののほかには、手に持ったパンのひと切れしかなくなってしまいました。それも、心のやさしい人が恵んでくれたものでした。
でも、この子は、心が素直で、神さまを心から信じる子でした。
それでも、こうして世間からすっかり見放されてしまったので、この子は、やさしい神さまのお力だけを頼りにして、ひとりぼっちで野原の中を歩いていきました。
するとそこへ、いかにも貧しそうな男の人がやって来て、
「ねえ、何か食べるものを分けてくれよ。おなかがすいてたまらないんだ」
と、言いました。
女の子は、持っていたパンのひと切れを、のこらずその男の人にあげてしまいました。
そして、
「どうか、神さまからの恵みがありますように」
と祈ってあげてから、また歩き出しました。
すると今度は、ひとりの子どもが泣きながらやって来て、
「ぼく、頭が寒くて凍りそうなんだ。何かかぶるものをちょうだい」
と、言いました。
そこで女の子は、自分がかぶっていた頭巾(ずきん)を脱いで、その子どもにあげました。
それから、女の子がまた少し歩いていくと、今度あらわれた子どもは、上着一枚着ていなくて、ふるえていました。
そこで女の子は、自分の上着を脱いで着せてやりました。
そしてまた少し行くと、今度出てきた子どもはスカートがほしいと言うので、女の子はそれも脱いであげました。
そうこうするうち、女の子はある森にたどり着きました。
あたりはすっかり暗くなっていましたが、そこへまたひとり子どもが出て来て、今度は肌着(はだぎ)をねだりました。
どこまでも心の素直な女の子は、(もうすっかり真っ暗だから、だれにも見やしないわ。いいわ、肌着も脱いであげることにしましょう)と思って、とうとう肌着まで脱いで、あげてしまったのです。
さて、そこまで何もかも人にあげてしまって、文字通り「ない」という状態になり、きれいさっぱり何もなくなってしまったその時、とつぜん、高い空の上から、お星さまがばらばらと落ちてきました。
しかもそれは、きらきらと輝く、本物の真っ白な銀貨だったのです。
そのうえ、ついさっき肌着を脱いであげてしまったばかりなのに、女の子はいつの間にか新しい肌着を着ていました。しかもそれは、この上なくやわらかい上質な麻の肌着でした。
女の子は落ちてきた銀貨をひろい集めて、それから一生、豊かに幸せにくらしました。

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