女の子は糸巻きを血だらけにするために、わざとイバラの生け垣の中に手を突っ込んで、自分の指をチクッと突き刺しました。
それから、糸巻きを泉の中へぽーんと投げこみ、すぐさま自分もあとを追って泉へ飛び込みました。
この女の子も、お姉さんと同じように、いつのまにか息をのむほど美しい草原に出ていました。そして、まったく同じ小道を歩いていきました。
女の子が例のパン焼きかまどのところまでやってくると、またパンたちが叫びました。
「ああーっ、僕を引き引っ張り出してください! 僕を引き引っ張り出してください! そうしないと、僕、焦げて死んじゃうよ! もうとっくに焼きあがっているんだからー!」
ところが、それを聞いた女の子は、
「ふん、あたしの手が汚れるじゃないの。そんなのイヤよ!」
と言いすてて、さっさと通りすぎてしまいました。
それからまもなく、あのリンゴの木のところへやってきました。
すると、リンゴたちが大声で呼びかけました。
「ああーっ、わたしをゆすってください! わたしをゆすってください! わたしたちリンゴは、もうすっかり熟しきっているんです!」
ところが、女の子はこう言い返しました。
「なにいってるのよ! そんなことをして、あたしの頭の上に落っこちてきたらどうするのよ!」
そうして、女の子はずんずん先へ歩いていってしまいました。
やがて、ホレおばあさんの家の前にたどり着きました。
女の子は、おばあさんの歯がとても大きいことを事前にお姉さんから聞いて知っていたので、ちっとも怖がりませんでした。そして、すぐにおばあさんのところで働くことにしました。
最初の日は、女の子も無理をして精を出し、おばあさんの言うとおりに一生懸命働きました。
そうすれば、おばあさんがお金をたくさんくれるだろうと思ったからです。
けれども、二日目になると、早くもなまけはじめました。
そして三日目には、もっとすごくなまけて、朝になってもどうしても起きようとしませんでした。
ホレおばあさんのベッドをきれいに整えるのはこの女の子の役目だったのに、それもしませんでしたし、鳥の羽根が舞い上がるほどベッドを力いっぱい振ることもしませんでした。
ですから、たちまちホレおばあさんのほうで呆れ果ててしまい、「もううちで働いてくれなくて結構ですよ」とクビを言い渡しました。
それを聞いて、なまけものの女の子は大喜び!
(やったー! きっと今すぐ、あの金の雨が降ってくるんだわ!)と思ったのです。
ホレおばあさんは、この女の子も自分で門のところまで連れていってくれました。
ところが、女の子が門の下に立ったとき、降り注いできたのは金などではなく、大かまにいっぱい入った真っ黒でベトベトの「タール(チャン)」でした! それがざあっと、頭から全身に浴びせかけられたのです。
「これが、おまえがしてくれた仕事へのごほうびだよ」
ホレおばあさんはそう言うと、ピシャリと門を閉めてしまいました。
こうして、なまけものの娘は、全身ベトベトの黒こげのような姿で地面の上へと返されました。そして、体についたネバネバのタールは、生きているあいだ、二度と取れることはなかったのでした。「これが、おまえがしてくれた仕事へのごほうびだよ」
ホレおばあさんはそう言うと、門をピシャリとしめてしまいました。
こうして、なまけものの女の子は自分の家へと帰っていきましたが、その体は、真っ黒でベトベトのタールだらけになっていました。
井戸の上にいたオンドリがその姿を見て、声を張りあげて叫びました。
「コケッコッコー! 汚れちゃったお嬢さまのお帰りだぞー!」
このタールは女の子の体にぴったりとこびりついてしまい、一生のあいだ、どうしても取ることができませんでした。
だから、このお話が生まれたヘッセン地方では、雪がふると、「ホレおばあさんがベッドを整えて、羽根を飛ばしているんだね」と言われているのですよ。
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