初級翻訳・漁師とそのおかみさんの話 第4話

グリム ヴィルヘルム・カール

ところがおかみさんのほうは、どうにも眠ることができず、ひと晩中ごろごろと寝返りばかり打っていました。そして、今度なれるのは何だろうと一生懸命考えていましたが、何ひとつ思いつくことができませんでした。

そうしているうちに、とうとうお日様が昇り出しました。おかみさんは東の空が明るくなってくるのを見ると、ベッドの端に体を起こして、そちらの方をじっと眺めていました。こうして窓の外にお日様が昇ってくるのを見ると、おかみさんは思いました。

(ふん、あたしにも、お日様やお月様を昇らせることはできないもんかね)

「おまえさん!」とおかみさんは言いながら、漁師のあばら骨をひじでつつきました。「起きて、ヒラメのところへ行ってきておくれ。あたしゃ神様になりたいんだよ」

漁師はまだ寝ぼけ眼でしたが、びっくり仰天してベッドから転げ落ちました。そして、自分が聞き間違えたのではないかと思って、目をこすりこすり尋ねました。

「ねえ、おまえ、いまなんて言ったんだい?」

「おまえさん」と、おかみさんは言いました。「あたしゃあね、自分で太陽や月を昇らせることもできないで、太陽や月が昇っていくのをただぼんやり眺めているだけじゃ、どうにも承知ができないんだよ。自分で昇らせることができないようなら、もう一時間だって落ち着いちゃいられないよ」

こう言って、おかみさんは恐ろしい顔をして漁師をにらみつけたので、漁師は震え上がってしまいました。

「さあ、さっさと言ってきておくれ。あたしゃ神様になりたいんだよ」と、おかみさんが言いました。

「なあ、おまえ」と、漁師は言っておかみさんの前にひざまずきました。「そんなこと、ヒラメにはできやしないよ。皇帝や法王にならすることもできるけどさ……」「お願いだから、このまま法王のままでがまんしてくれよ」

それを聞くと、おかみさんはものすごく腹を立てました。髪の毛は逆立ってぼうぼうになり、胸元ははだけてしまいました。そうして、漁師を力いっぱい蹴飛ばして、こう叫んだのです。

「あたしゃあ、もうがまんできないよ! もうこれっぱかしも、がまんできないんだ! おまえさん、さっさと言いに行ってくるんだい!」

そこで漁師はあわててズボンをはくと、気が狂ったように外へ駆け出しました。ところが外は、ものすごい嵐が荒れ狂っていて、漁師は立っていることさえやっとの状態でした。家や木々はひっくり返り、山々はぐらぐらと揺れ、大きな岩がごろごろと海の中へ転がり落ちていきます。空は真っ黒で、雷がとどろきわたり、稲妻がピカピカと光っていました。海は教会の塔や山ほどもあるような、真っ黒な大波を盛り上げていました。その大波のひとつひとつのてっぺんには、白い冠のように泡がわき立っています。漁師は精一杯の大声を張り上げて怒鳴りましたが、嵐の音にかき消されて、自分の声さえ聞こえないくらいでした。

「小人さん、小人さん、出ておくれ。
海にいるヒラメさん。
おれの女房のイルゼビルが、
おれの思うようには動いてくれないんだ」

「どうしたのですか。おかみさんは、いったい何がほしいというのですか?」と、ヒラメが言いました。

「それがねえ……神様になりたいと言っているんだよ」

「お帰りなさい。おかみさんは、もうもとのぼろ小屋の中にいますよ」と、ヒラメが言いました。

二人はそれからずっと、今でもそのぼろ小屋の中に座っていますよ。

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