こんな美しい人を、あのまっ黒い土の中にうめることなんてできるものか」と言いました。
そこで、外から中がよく見えるガラスの棺をつくり、その中に姫のからだをねかせました。そして、その上に金文字で『白雪姫』という名前を書き、王さまのお姫さまであるということも書きそえておいたのです。
それから、みんなで棺を山の上にはこびあげ、七人のうちのひとりが交替で、いつでもそのそばにいて番をすることになりました。
すると、森の鳥やけだものたちまでがやってきて、白雪姫のことを泣き悲しむのでした。
いちばんはじめにやってきたのはフクロウで、そのつぎがカラス、最後にはハトがやってきました。
さて、白雪姫は長い長いあいだ棺の中に横になっていましたが、そのからだはすこしも変わらず、まるで気持ちよく眠っているようにしか見えませんでした。
お姫さまは相変わらず雪のように白く、血のように赤く、こくたんのように黒い髪の毛をしていたのです。
するとそのうち、ある日のこと一人の王子が森の中にまよいこんで、七人の小人の家に行き、一晩とまりました。
王子はふと山の上にのぼり、ガラスの棺に目をとめました。
ちかよってのぞきこんでみると、じつにうつくしいうつくしい少女のからだがはいっています。
しばらくわれを忘れて見とれていた王子は、棺の上に金文字で書いてあることばを読み、すぐ小人たちに言いました。
「この棺をぼくにゆずってくれませんか。そのかわりぼくは、あなたたちのほしいと思うものなら、なんだってあげますから」
けれども、小人たちはこう答えました。
「たとえ世界じゅうの金銀をもらっても、こればかりは絶対にさしあげられません」
「そうかい、これにかわるお礼なんて他にはないだろう。だけど、ぼくは白雪姫を見ないでは、もう生きていられないんだ。お礼なんていらないから、どうかただでください。ぼくが生きているあいだは、白雪姫を心からうやまい、けっしてそまつにはしないから」
王子は、心からのお願いとばかりに、何度もたのみこみました。王子がこれほどまでに熱心におっしゃるので、心優しい小人たちは王子の切ない気持ちに同情し、その棺をゆずってあげることにしました。
王子は家来たちに命じ、棺を肩にかついで運ばせました。
ところがそのとき、家来のひとりが木の根っこにつまずいてしまいました。
そのはずみで棺が大きくゆれた拍子に、白雪姫がかじって喉に詰まらせていた毒リンゴの一切れが、ぽろりと外へ飛び出したのです。
すると間もなく、お姫さまはパッチリと目を覚まし、棺のふたを押し上げて、むくっと起き上がりました。
そしてすっかり元気になって、
「まあ、わたしはいいったいどこにいるのかしら?」
と言いました。
それを聞いた王子の喜びは、言葉では言い表せないほど大きなものでした。
「ぼくのそばにいるんですよ」と言って、王子はこれまでに起こった出来事をすべて優しく話して聞かせました。そしてそのあとで、こう言いました。
「ぼくは、あなたを世界中のどんなものよりも愛しています。
さあ、ぼくのお父さんのお城へいっしょに行きましょう。
そして、ぼくのお嫁さんになってください」
それを聞いて、白雪姫も「はい」と答え、王子といっしょにお城へ向かいました。
そして、ふたりの結婚式は、それはそれは盛大で立派なものとしてお祝いされることになりました。
けれども、このおめでたいお祝いの席には、白雪姫のいじわるなまま母である女王さまも招待されることになっていました。
女王さまは、新しくお嫁にくる若いお嫁さんが、まさかあの白雪姫だとは夢にも思っていませんでした。
女王さまは美しい衣装に身を包むと、お決まりの鏡の前に立って尋ねました。
「鏡や、鏡、壁にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ」
すると、鏡はこう答えました。
「女王さま、ここではあなたがいちばん美しい。
けれども、新しくお嫁にこられた若いお女王さまは、あなたより千倍も美しい」
これを聞いた意地悪な女王さまは、怒りで頭がおかしくなりそうなほど腹を立て、呪いの言葉を次から次へとわめき散らしました。
気になって気になって、どうして落ち着いていいか分からないほどだったのです。
女王さまは、はじめのうちは、もう結婚式には行くのをやめようかとも考えました。それでも、どうしても自分の目でその若いお女王さまを見ないことには、気が気でなくて安心できなかったのです。
こうして女王さまは、お招きを受けたお屋敷の中に入っていきました。
そしてふと見ると、そこにいる若いお嫁さまは、なんと白雪姫ではありませんか!
女王さまは恐怖のあまりその場に凍りつき、足がすくんで動けなくなってしまいました。
けれどもそのとき、人々はすでに用意をしていて、あらかじめ炭火の上に鉄でできた靴を置いておき、真っ赤に焼き上げてありました。彼らはその靴を火ばしで部屋の中に持ち込み、意地悪な女王さまの前に置いたのです。
そして、女王さまに無理やりそのまっ赤にやけた鉄の靴を履かせ、倒れて息絶えるまで、ずっと踊り続けさせたのでした。
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