「母さんが、わたしを殺した、
父さんが、わたしを食べた、
妹のマリちゃんが、
わたしの骨をのこらず拾って、
手巾に包んで、
杜松の樹の根元へ置いた。
キーウィット、キーウィット、何と、綺麗な鳥でしょう!」
歌い終わると、鳥はまたパッと飛んでいきました。
右の足には黄金の鎖を持ち、左の爪には赤い靴をつかんで、今度は水車小屋のほうへと飛んでいきました。
水車は、「カタン、コトン、カタン、コトン、カタン、コトン」と力強く回っていました。
小屋の中では、二十人の粉ひき男たちが、大きな石臼の溝をのみでトントンと彫っていました。
「カタン、コトン、カタン、コトン、カタン、コトン」と水車が回る音の合間に、粉ひき男たちは「コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ」と石臼を削る音を響かせていました。
鳥は水車小屋の前にある菩提樹(ぼだいじゅ)の木の上にとまって、歌い出しました。
「母さんが、わたしを殺した、」
と歌ったとき、男のうちの一人がピクッと耳をすませました。
「父さんが、わたしを食べた、」
と歌うと、さらに二人の男が手を止めて、耳をかたむけました。
「妹のマリちゃんが、」
と歌うと、また四人の男が仕事の手を止めました。
「わたしの骨をのこらず拾って、
手巾に包んで、」
と歌ったときには、もう石臼を彫っているのは八人だけになっていました。
「杜松の樹の」
と歌うと、もう五人だけになっていました。
「根元へ置いた。」
と言うと、なんと残りは一人だけになっていました。
「キーウィット、キーウィット、何と、綺麗な鳥でしょう!」
と最後まで歌うと、その最後の一人も、とうとう仕事を完全に止めました。
そしてこの男は、歌の最後の部分しか聞き取れませんでした。
「鳥さん、鳥さん!」とその男が言いました。
「なんていい声で歌うんだ! おれにも初めから聞かせてくれよ。
もう一遍、歌ってくれ!」
「いやいや、」と鳥は言いました。
「タダでは二度は歌わないよ。
代わりにその石臼をくれるなら、もう一度歌ってあげる!」
「いいとも!」とその男は言いました。
「これがおれ一人のものだったら、すぐにでもお前にやるんだがな!」
「かまわないよ!」と、他の男たちも言いました。
「もう一遍歌ってくれるなら、石臼をやってもいいぞ!」すると鳥はふわりと下に降りてきたので、二十人の粉ひき男たちはみんなで力を合わせ、「ヨイショ、ヨイショ!」と棒を使って大きな石臼を高く持ち上げました。
鳥は石臼の真ん中の穴に頭をすっぽりと突っ込み、まるで首飾り(カラー)のように石臼を自分の首にはめると、再び木の上へピュッと飛び上がり、元気よく歌い出しました。
「母さんが、わたしを殺した、
父さんが、わたしを食べた、
妹のマリちゃんが、
わたしの骨をのこらず拾って、
手巾に包んで、
杜松の樹の根元へ置いた。
キーウィット、キーウィット、何と、綺麗な鳥でしょう!」
歌い終わると、鳥はパッと羽を広げました。
右の足の指には黄金の鎖を持ち、左の爪には赤い靴をつかみ、首のまわりには石臼をカチッとはめたまま、お父さんの家の方へと飛んでいきました。
そのころ、おうちの居間では、お父さんとお母さんとマリちゃんが、テーブルの前に座っていました。
お父さんはニコニコしながら言いました。
「なんだか胸がすーっと軽くなって、すっごくいい気分だなあ!」
「いいえ、違うわ!」とお母さんは顔色を変えて言いました。
「私は胸がドンドン波打って、まるで激しい嵐でもやってくる前のみたいに落ち着かないわ……」
だけどマリちゃんは、ただじっと座ってシクシクと泣いていました。
そのとき、鳥がパタパタと飛んできて、屋根の上にとまりました。
「ああ!」とお父さんは嬉しそうに言いました。
「ぼくは嬉しくってたまらないぞ!
まるで太陽の光がパーッと部屋の中に差し込んできたみたいな気分だ。
なんだか、ずっと会っていなかった大親友に会う前みたいにワクワクするなあ!」
「違うってば!」とお母さんは叫びました。
「私は胸が苦しくて、歯がガチガチ鳴るのよ!
体の中の血管で、メラメラと火が燃えているみたいだわ……!」
そう言って、お母さんは自分の洋服の胸元をぐいぐいと引き裂きそうになりました。
マリちゃんは部屋の隅っこにポツンと座り、お皿を膝の上にのせたまま泣いていましたが、そのお皿の中は、あふれた涙ですぐにいっぱいになりそうでした。
そのとき、鳥は庭の杜松(ねず)の樹にとまって、再び歌い出しました。
「母さんが、わたしを殺した、」
お母さんは両手で耳をギュッとふさぎ、目をつむって、鳥の姿を見ないように、歌声を聞かないようにしました。
それでも、耳の奥では恐ろしい嵐の音がゴーッと響き、目の前ではまるで稲光のように、ピカピカと光が燃え盛るのが感じられました。
「父さんが、わたしを食べた、」
「おや、お母さんや!」とお父さんが言いました。
「あすこに、とっても綺麗な鳥がいて、すごくいい声で鳴いているよ。
おひさまがポカポカ当たって、まわりの空気がまるでニッキのようないい香りでいっぱいだ!」
「妹のマリちゃんが、」
この歌詞を聞いた瞬間、マリちゃんはハッと顔を上げ、泣くのをピタッとやめました。
お父さんは、「ちょっと外に行って、あの鳥を近くでよく見てくるよ!」と言いました。
「ダメよ、行っちゃダメ!」とお母さんが叫びました。
「私はなんだか、家じゅうに火がついて、グラグラと揺さぶられているような気がするの!」
だけどお父さんは外へ出て、鳥の姿をじっと眺めました。
「わたしの骨をのこらず拾って、
手巾に包んで、
杜松の樹の根元へ置いた。
キーウィット、キーウィット、何と、綺麗な鳥でしょう!」
こう歌うと、鳥は持っていた黄金の鎖を、お父さんの首のうえへポトンと落しました。
その鎖はすっぽりと首にかかり、お父さんにとてもよく似合っていました。
お父さんは大喜びで家の中へ戻ってきました。
「ねえ聞いてくれよ! とっても美しい鳥なんだ。それに、こんなにステキな黄金の鎖をぼくにくれたんだよ。
どうだい、すごく立派だろう!」
とお父さんが言ったその時、お母さんはもう胸の苦しさに耐えきれなくなり、部屋のなかにバタリと倒れ込んでしまいました。その拍子に、頭にかぶっていた帽子が脱げ落ちました。
すると、鳥はまた歌い出しました。
「母さんが、わたしを殺した、」
「ああ……!」とお母さんはうめき声をあげました。
「私は今すぐ、千メートルもある大地の底にでも隠れてしまいたい!
あんな歌を聞かされたら、もう生きていられないよ……!」
「父さんが、わたしを食べた、」
その歌を聞いた瞬間、お母さんはまるで命が尽きたかのように、その場にぐったりと倒れ込みました。
「妹のマリちゃんが、」
「あっ!」とマリちゃんが言いました。
「わたしも外に行って見てみようっと!
鳥さんが何かプレゼントをくれるかもしれないから、ちょっと出てみるわ!」
そう言って、マリちゃんはパッと外へ飛び出しました。
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