初級翻訳・吹雪物語 第7話

吹雪物語

お二人のこと、私たちのあいだでは、知らない人はいませんわ。きっと結婚のために、お帰りになるのでしょうって、みんなで噂しているくらいですもの」

「人は何によって名を得るか、分からないものですね」と卓一は笑った。

すべてを知られていることが分かったので、他人の噂を聞くときのように、すでに心は気楽だった。なるほど、卓一の周囲にもそれと同類の噂はあった。彼ら二人の結婚を、本人たちが信じるよりも、友人たちがむしろ信じていたのである。愛情の極点が、二人の結婚を不可能にしている。友人たちも、それを知らないわけではなかった。

「手数をかけているものだな」と、友人たちは笑うのである。結婚を不可能にする愛情だって、要するに、結婚のための愛情ではないか。結局のところ、愛情なのだ。まごついているのは本人同士だけのことさ、と。

しかし、愛情の極点というものは、相手についてあらゆることを考えさせてしまうものだ。そして、二人の前途についても。そこには可能な限りのあらゆる計算が費やされる。妥協も、中途半端な誤魔化しも、この冷酷な計算を妨げることはできないのだ。

卓一は、次の事実に直面すると、苦笑せずにはいられなかった。そして、自分の心の弱さと頼りなさに驚くのだった。卓一はしばしば、思わずにはいられないのだ。なぜ澄江が、これほどまでに特別な一人の女なのだろうか。澄江のどこに、忘れられない女としての資格があるのだろうか、と。

美貌だろうか。いや、違う。澄江に勝る多くの美貌を、彼はこれまで何度も見慣れてきた。では心は。性格は。教養は。そのいずれにも、特別な魅力を指摘することは不可能だった。こんなに分からない話はない。そのくせ、澄江という意識が浮かぶたびに、肉体すら自由を失うこの衝動をどう思えばいいのだろう。

苦笑を覚えずにはいられないのは、仕方がなかった。昔は明確な個性の魅力があったのかもしれない。しかし、長い観察と味わいのうちに、その鋭い角はすべて削り落とされ、もはや女一般の平凡な一人と化し、没してしまったのだ。最初の激しい印象は、もはや表面にはその片鱗もとどめていないが、心の底深くに潜在して、意外な作用を引き起こしているのか。

それにしても、すべてはすでに過ぎ去っていた。すでに女一般の平凡な一人と化した今となっては、単なる素朴な衝撃にこだわる自分が可笑しいのだ。

恐らく、それが間違っていたのだ。

「一人の異性に、永遠に変わらぬ愛を捧げることは、不可能でしょう」卓一は由子に言った。「なるほど人は、とかく永遠を願わずには生きていけないものかもしれません。しかし、人の弱い心は、また肉体は、永遠を誓えるほど頑丈なものではありません。たまたま一瞬の情熱だけが、永遠を誓ってもなお足りないほど、過大にすぎるのですね。数々の恋の悲劇が、また家庭の持つ不運な暗さが、概して永遠を誓うことの不当から発しているとすれば、なんとも愚かな話ではありませんか」そもそも、愛情というものが始まったときから「永遠」なんていう、大きすぎる言葉を使うのがいけないのでしょう。
それなのに、私たちはつい本能的に、永遠であってほしいと願ってしまうものです。
胸がしめつけられるような切なさで。
すでに僕自身が、そうなのです。
もしその願いが、理性に対する本能のどうしても避けられない裏切りなのだとしたら、恋の悲劇というものもまた、避けることのできない運命なのかもしれません。
とはいえ、理性というものを信じるほかに、どうしようというのでしょう。
僕にとって、結局のところ恋愛とは遊びなのです。
もちろん、あの人を忘れるはずはありません。
昔遊んだ砂丘の松林や、ポプラの並木道と同じように、忘れられない思い出として一生心に残り続けるだけのことです。

「ポプラの並木道へ行ってみましょうか」と由子が言いました。
もちろん、卓一には何のことか分かりません。
「遊覧馬車のことですか?」と彼は聞き返しました。
「いいえ。古川さんがいるところへ」
卓一は、キラリと光るような由子の瞳の中に、どこにでもいる平凡な一人の女の姿を読みとっていました。
夢というものは、こうして消えていくのですね。
心の中が、やり場のない暗さでいっぱいになりました。
「もう一軒のダンスホールへ行くのですよ。古川さんは、そこの常連さんの一人ですから」
卓一は、すっかり冷めきってしまった夢の後味の悪さと、むなしさ、そして体中を押しつぶすような重苦しさに、ついていくことができなくなっていました。
思わずあくびが出そうになるほどでした。
むしろ、もう夜道を一人で歩きたかった。ただ静かな孤独だけが欲しかったのです。
「遊びですら、楽しむ心がなければ浸ることはできませんよ」
卓一は退屈しきって、由子にそう答えました。

その翌日のことでした。越後新報へ出勤した卓一は、木村重吉に尋ねてみました。
この若い編集記者は、まるで動物同士のような親近感を抱いているのか、少し内気な態度で、しつこいほど卓一に親切にしてくれていました。
「野々宮さんの住んでいる場所は、どこですか?」卓一が聞きました。
「水道町ですよ」木村重吉は答えました。
「砂丘の松林を新しく切り開いてできた町ですから、ご存じないかもしれません。測候所を下って、水道の貯水池へ向かうあの松原の跡地です。今は立派な住宅街になっていますよ」
「野々宮さんの隣家に住んでいる、二十五、六歳くらいの女性を知りませんか?」
「ちょっと分かりかねますが……」木村重吉は突然の質問に戸惑いながら言いました。
「よかったら、調べてみましょうか?」
「嘉村由子という、昔からの知り合いなのです」

木村重吉は、怯えたような目をしました。
呆気にとられた様子でもありました。卓一の顔を疑うようにじっと見つめてから、
「だって、その人が野々宮さんの隣に住んでいるなんて、そんなはずはないのですが」と、彼は気弱そうに言いました。
「どうして?」
「だって……。でも、編集長は本当に知らないのですか?」
「なぜだ?」

木村重吉の顔に、気まずそうな深い笑いじわが刻まれました。そして、それが悲しくなるほど黒ずんで見えました。
「つまり、嘉村由子という人が」彼は言葉を詰まらせました。
「その人が、例の、野々宮さんの愛人ではないのですか? だって、そうじゃないですか。編集長は本当にご存じないのですか?」

「…………」

卓一は呆然として、木村重吉の顔を見つめました。
頭の中のあらゆる言葉が、忘却の淵へさらわれてしまったかのようでした。
ただ、取り残された自分自身の空っぽな心だけが、はっきりと分かりました。
愛想笑いをする余裕さえありません。
昨夜の由子の言動を、もう一度並べ替えて吟味し直す必要がありました。
そうしたいという思いは確かにあり、実際に努力もしてみました。
自分はからかわれているのだろうか。
――しかし、すべては卓一に都合よくしか解釈できませんでした。
結局、どんなに考えても思考は空回りするだけで、自分に都合のいい記憶の断片だけが意識に浮かび上がります。
結局のところ、妖艶な女の心と肉体が、食欲をそそるように彼の体を気だるくさせているだけなのです。

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