初級翻訳・土神ときつね 第4話

土神ときつね

その瞳は黒く、立派に輝いていました。
樺の木はまた何とか返事をしようとしましたが、やはり何かがとても重苦しく、ただ小さく吐息をつくばかりでした。
その時です。
狐がやって来たのです。
狐は土神がいるのを見ると、ハッとして顔色を変えました。
けれど、今さら引き返すわけにもいかず、少し震えながら樺の木のそばへ進んできました。
「樺の木さん、おはよう。……あら、そちらにいらっしゃるのは土神さんですね」狐は赤い革の靴を履き、茶色のレインコートを着て、まだ夏用の帽子をかぶったまま、そう言いました。
「わしは土神だ。
いい天気だな、おい」土神は本当に明るい気持ちでそう言いました。
狐は嫉妬で顔を青ざめさせながら、樺の木に向かって言いました。
「お客さまがいらしているところへお邪魔して失礼いたしました。
これは、この間お約束していた本です。
それから望遠鏡は、いつか晴れた晩にお目にかけますね。
それでは、さようなら」
「まあ、ありがとうございます」と樺の木が言っている間に、狐はもう土神に挨拶もせず、さっさと戻り始めました。
樺の木はサッと青ざめて、また小さくぷりぷりと震えました。
土神はしばらくの間、ただぼんやりと狐を見送って立っていましたが、ふと狐の赤い革靴が草の中でキラリと光ったのに驚き、我に返ったと思った瞬間、急に頭がクラクラとしました。
狐はまるで意地を張るように肩を怒らせて、どんどん向こうへ歩いていくのです。
土神はムラムラと怒りがこみ上げてきました。
顔も恐ろしいほど真っ黒に変貌しました。
美学の本だの望遠鏡だのと、畜生、今に見ていろ、と土神はいきなり狐のあとを追いかけました。
樺の木は慌てて枝を一斉にガタガタと震わせ、狐もその気配に「何かあったのか」と何気なく後ろを振り返りました。すると土神が、まるで黒い嵐のように追いかけてくるのが見えました。
さあ、狐はサッと顔色を変え、口元を歪めて、風のように走って逃げ出しました。
土神には、そこら中の草が真っ白な火になって燃え上がっているように思えました。
青く光っていた空さえ急にガランとした真っ暗な穴になり、その底では赤い炎がゴーゴーと音を立てて燃え盛っているように感じたのです。
二人はゴーゴーと唸りを上げて、まるで汽車のようにお互いに走りました。
「もうおしまいだ、もうおしまいだ。望遠鏡、望遠鏡、望遠鏡……」と狐は頭の隅で一心に考えながら、夢遊病者のように走っていました。
向こうに小さな赤ハゲの丘がありました。
狐はその下の丸い穴に入ろうとして、クルッと一つ回りました。
それから首を低くして、いきなり中へ飛び込もうと後ろ足をチラッと上げた瞬間、すでに土神は後ろからパッと飛びかかっていました。
そうかと思うと、狐は土神に体をねじられ、口を尖らせて少し笑ったような表情のまま、グニャリと土神の手の上に首を垂れていました。
土神はいきなり狐を地べたに投げつけ、グチャグチャと四、五回踏みつけました。
それから、いきなり狐の穴の中へと飛び込んで行きました。
中はガランとして暗く、ただ赤土が綺麗に固められているばかりでした。
土神は大きく口を歪めて開けながら、少し変な気がして外へ出てきました。
それから、ぐったりと横たわっている狐の死骸のレインコートのポケットに手を入れてみました。
そのポケットの中には、茶色のカモガヤの穂が二本入っていました。
土神は、さっきから開けていた口をそのままに、まるでこの世のものとは思えない声で泣き出しました。
その涙は雨のように狐の上に降り注ぎ、狐はいよいよ首をグニャリとさせたまま、薄ら笑いを浮かべたような顔で死んでいました。

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