初級翻訳・鳥箱先生とフウねずみ 第2話

宮沢 賢治

フウ、ちょっと待ちなさい。
お前はいつも、わしが何か言おうとするとすぐに逃げてしまおうとするが、今日はまあ、少し落ち着いてここへ座りなさい。
お前はなぜそんなにいつも首を縮めて、背中を丸くするのです」
「だって先生。
私の友達はみんな、もっと背中を丸くして、もっと首を縮めていますよ」
「お前の友達と言っても、むかでなどは背中をすっきりと伸ばして歩いているではないか」
「いいえ。
むかではそうですけれども、ほかの友達はそうではありません」
「ほかの友達というのは、どんな連中だ」
「けし粒や、ひえ粒や、おおばこの実などです」
「なぜいつも、そんなつまらないものとだけ比べるのだ。
ええ。
おい」
フウねずみは面倒くさくなったので、一目散に穴の中へ逃げ込みました。

鳥箱先生も、今度という今度はすっかり怒ってしまって、ガタガタガタガタと体を震わせながら叫びました。
「フウの母親、こら、フウの母親。
出て来い。
お前の息子は、もうどうしても退校だ。
引き渡すから、すぐに外へ出て来い」
フウのおっかさんネズミは、ブルブルと震えているフウねずみの襟首をつかんで、鳥箱先生の前に連れて来ました。
鳥箱先生は怒って顔をほてらせ、チョッキをバタバタさせながら言いました。
「俺は四人もひよどりを教育したが、今日までこんなひどい侮辱を受けたことはない。
実にこの生徒はダメなやつだ」

その時、まるで嵐のように黄色い影が飛び出してきて、フウをつかむと地べたへ叩きつけ、ヒゲをヒクヒクと動かしました。
それは猫大将でした。
猫大将は言いました。
「ハッハッハ、先生もダメなら、生徒も悪い。
先生はいつも、もっともらしい嘘ばかりついている。
生徒は志がどうも、けし粒よりも小さい。
これではもう、とても国家の先行きが思いやられるよ」

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