初級翻訳・怪塔王 第39話

怪塔王

「貴官は今、どこにいて、何をしているのか?」
と尋ねる無電に対し、小浜兵曹長はこう答えました。
「自分は怪塔を見失い、嵐の中をめちゃくちゃに飛び回った末、無人島らしきところに不時着し、翼を折った。もう飛行機は飛べない。しかし身体には異状がないから安心するように。……応援に出動したという知らせのあった我が飛行隊はどうした?」
小浜兵曹長は問い返しました。
「我が出動飛行隊は暴風雨にさえぎられ、ついに怪塔ロケットにも、貴官の飛行機にも出会わなかった。……その孤島がどこか分かるか?」
「分からない。しかし、自分は大変なものを発見した。この島には鋸の歯のような形をした山がある。その山の西側に大きな飛行場があり、そこに怪塔ロケットが七、八機も集まっている。だからこの島こそが、怪塔ロケットの根拠地だと思う。早くこのことを塩田大尉に知らせてくれ!」

すると、無電班は大変な驚きようでした。
しばらく返事がなく、小浜兵曹長は無電が故障したのかと思ったほどでした。
やがて、艦隊からの無電が再び聞こえてきました。
「貴官の報告は実に重大だ。貴官がいる孤島の位置を特定したいから、これから五分間続けて電波を発信してくれ。こちらでその電波を方向探知機で測定し、位置を割り出す。とにかく貴官は貴重な偵察者だ。大いにそこで頑張っていてくれ。では、早速五分間の電波発射を頼む!」

6

小浜兵曹長は愛機の無電装置を動かし、五分間ぶっ続けで電波を発射しました。
本隊側では、その電波を方向探知機で測り、小浜兵曹長の現在地をはっきりと突き止めようというのです。
その間にも、「小浜兵曹長が生存していた」という喜ばしくも驚くべきニュースは、次から次へと伝わっていきました。
本隊の無電班は、しきりに潜水艦「ホ十九号」を呼び出しています。その潜水艦はちょうど南洋群島付近を巡航中でしたが、呼び出しの無電を受けると、すぐさま応答してきました。
「貴艦は直ちに、遭難機の方角を測定せよ!」
「承知!」
本隊と潜水艦ホ十九号、両方の方向探知機が、小浜機から飛んでくる電波の方角を定めました。
二つの結果を合わせて地図の上で調べてみると、ついに位置が判明しました。
北緯三十六度、東経百四十四度!
それが遭難機の位置でした。
そこは、犬吠埼から真東へ三百キロメートルほど行った海中です。
いや、ただの海中ではありません。普通の地図には載っていませんが、実はそこに一つの小さな島があるのです。
島の名は、世にも恐ろしき「白骨島(はっこつじま)」!
この島は無人島ということになっていましたが、昔から時には現地人が住み着くこともありました。
しかし、いつの場合でも、彼らは誰一人として元の集落へ帰ってきません。後から別の現地人が行ってみると、前の住人たちは皆、白骨になっているのです。
それが毎度のことでした。

白骨島

1

そういう不思議な言い伝えのある白骨島です。
誰も恐ろしがって住もうとする者はいません。今ではもう無人島になっていると、誰もが信じていた白骨島です。
その白骨島に、小浜機が不時着したというのです。
翼は折れて飛べなくなり、操縦士の青江三空曹が壮烈な死を遂げたといいます。
それだけでも大変なニュースであるのに、その白骨島の山陰には、怪塔ロケットが八台も肩を並べてそびえ立っているというのです。
これが一大事でなくて何でありましょう。
しかし、その位置が判明したことは、何よりも幸いなことでした。「貴官の位置は判明した。北緯三十六度、東経百四十四度、白骨島と思われる」
本隊からは、すぐさま小浜兵曹長に結果を知らせてやりました。そして、もっと島の様子を詳しく知らせるよう命令を出しました。

「よろしい。まず地形を述べます。島の中央に、鋸の歯のような岡があり、その東……」
と、そこまで無電は文字をつづってきましたが、とたんにぷつりと切れました。あとはどう催促しても、無電は返ってきません。小浜兵曹長に、いったい何があったのでしょうか。いや、何があったのかというレベルではありません。白骨島の上では、いま大格闘が始まっているところなのです。

小浜兵曹長は、本隊との無電連絡に一生懸命になっていたところ、突然背後から首をぎゅっと締め付けられました。全くの不意打ちでした。兵曹長は、救難信号を打つ間もなく、電鍵(電信を打つためのスイッチ)から手を離さなければなりませんでした。
「な、何者!」
という声が、喉の奥から漏れるだけです。兵曹長は、自分の首を締め付けた敵の腕をつかんで、やっとの思いで背負い投げをしました。それから大乱闘が始まったのです。突然現れたこの相手は、一体何者なのでしょうか?

2

勇士・小浜兵曹長は、息つく暇もなく前後左右から組み付いてくる怪人たちを、背負い投げで飛行機の上に仰向けに叩きつけたり、得意の腰投げで放り投げたりして、荒れ狂う獅子のように暴れ回りました。兵曹長を襲った怪人たちも、この凄まじい兵曹長の奮闘ぶりに、少しひるんだように見えました。彼らは砂の上に、輪を作るようにして、兵曹長をにらみつけて立っています。

小浜兵曹長は、この不意打ちを仕掛けてきた敵を初めてじろりと見回しました。敵の人数は十四、五人もいます。兵曹長一人を相手にするには、ずいぶんと大人数です。
「な、何者だ。俺をどうしようというのか!」
小浜兵曹長は、ひるむ様子もなく、敵に向かって怒鳴りつけました。
「う、ううっ」
と唸っている敵の顔ぶれは、黒人がいるかと思えば、ロシア人がよく着ている「ルパシカ」という妙な上着を着ている者もいます。このルパシカを着ているのは白人のようでした。そのうちの一人の白人が、達者な日本語でしゃべり出しました。
「アナタは、向こうの山へ登って、下に何があるか、ことごとく見たでしょう。白状なさい」
言葉はとても丁寧ですが、敵の身構えは非常に物騒です。おそらく彼は、こうした丁寧な日本語は話せても、乱暴な言葉遣いはできないのでしょう。
「なんだ、白状しろだと? あっはっはっはっ、あまり俺を笑わせるな。ここは日本の領土ではないか。貴様たちこそ、こんなところで一体何をしているのだ。さあ、それをまず俺に話すがいい」
小浜兵曹長は仁王様のようにしっかりと立ち、敵の大将らしき白人をぐっとにらみつけました。敵方は、少しうろたえ始めました。

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「さあ、話せ。貴様たちこそ、日本の領土内で何をしているのか!」
小浜兵曹長のおごそかな言葉に、兵曹長を襲った敵方は、いよいよもじもじし始めました。
「どうだ、悪いと思ったら降参しろ。おとなしくすれば、なんとか助けてやろう」
と、小浜兵曹長は、あべこべに敵方を圧倒しています。すると敵の大将らしき白人が、何ごとか変な言葉で号令をかけました。
「うん、来るか!」
敵は目を猿のように光らせ、ふたたびじりじりと兵曹長の身近に迫ってきました。
「アナタ、動くとあぶない。これが見えませんか」
敵の大将の白人が、いきなりピストルを兵曹長の方へ突きつけました。ピストルは、他の敵の手にも握られています。
「撃つのか。うまく当たればお慰みだな!」
兵曹長は、ピストルというものが恐ろしいものだとは全く思っていないようです。

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