初級翻訳・怪星ガン 第17話

怪星ガン

それがわからないうちは処置なしだ)
博士は、その異常現象が、九台の救援ロケットを破壊から救ってくれたことさえ気づいていませんでした。

「あッ、ふしぎだ。空から星が消えていく。隊長、あれをごらんなさい」
叫んだのは帆村荘六でした。操縦席の前のガラス窓を通して、無数の星がきらきら輝いている広い大宇宙が見えていたのですが、その星が、左の方からだんだんと消えていくのです。まるで大きなひさしが天空を横に動いて、星の光を隠していくようでした。すわ、大異変です!

【暗黒化】

「おお、なるほど。星の光がだんだん消えていく」
テッド博士もおどろきました。いったい星の光をさえぎっているものは何なのでしょう。
「なにかは分かりませんが、巨大で広いものが星と本艇の間にあって、星の光をさえぎっていくのですね」
帆村の声が、いつになく上ずっています。彼はなかなかおどろかない男ですが、今日ばかりは大きな驚きの中にほうりこまれているようです。
「そうだ。通信当直。レーダーで調べてみるんだ。あのおそろしい邪魔者は一体何だかわかるかね。あれは本艇からどのくらいの距離にあるのか、すぐ調べてくれ」
テッド博士は叫びました。
「だめなんです、隊長」
「だめとは何が?」
「今、ご報告しようと思っていたところですが、少し前より、とつぜん僚艇との連絡通信が不可能になりました」
「やッ」
「こっちからいくら電波を出しても、僚艇から応答がありません。じつはレーダーも働かせてみました。ところが、これもだめなんです。つまり本艇の電波通信はさっぱり用をなさなくなりました」
「レーダーも応答なしか」
「はい。困りました」
「困ったね。そしてわけがわからん。おお、ポオ助教授。きみにわかるかね、本艇の電波通信が用をなさなくなった理由が……」
テッド博士は、そばにポオ助教授が立っているのに気がついて、そう尋ねました。
「ちょうど、非常にひどい磁気嵐にでもあたったようですね。しかし今のところぼくにも本当のことはわかりません」
助教授も、さじを投げました。

その間にも、帆村は星の光が消えていく様子をじっと見守っていましたが、このとき驚きの声を上げて、隊長テッド博士に呼びかけました。
「隊長。もうしばらくのうちに星の光は全部消えてしまいそうです。残っているのはあそこだけで、ふしぎだなあ。残っている星の群れは、円形の中におさまっています」
「なるほど。これはまた奇妙だ」
「ほら、ごらんなさい。円形の窓から眺めるような星の光が、だんだん小さくなっていきます。窓がだんだん絞られていくようです。ポオ君、見ていますか」
「見ているとも、帆村君」と助教授は帆村の肩へそっと手をかけました。
「まったくふしぎだね。こんな異変が天空に起こるという報告を、これまでに一度も読んだこともなければ、聞いたこともない。じつにふしぎだ。しかしこれは夢ではない。われわれは皆で、さっきからこの天の果ての異変をたしかに見たのだ」

「ねえ帆村のおじさん。ぼくは、とても大きい黒い袋の中に包まれていくような気がします。おじさんは、そう感じないですか」
さっきから黙ってこの異常な出来事を見守っていた三根夫少年が、このとき帆村の服の端をひいて言いました。
「なに、黒い袋の中に包まれていくようだと……。うまい。ミネ君。うまい表現だ。見事な言い表し方だ」
と、帆村が感心して言いました。
「なるほど、そのような感じだ」
隊長も、うなずきました。「ああ、黒い袋の口が、ついに閉まる。みなさん見ていますか」
「見ているとも……」
一同は、言いようのない気味の悪さを感じながら、天空に残された最後の小さな星の光が消えていくのを見守っていました。
「あ、消えた」
「とうとう消えた。完全な暗黒世界だ」
「暗黒の空間なんて、はじめて見たよ。ああ、恐ろしい」
「大宇宙そのものが消えてしまったんだろうか。地球へ戻るには、どうすればいいのだろう」
恐怖の言葉が、人々の口から次々と飛び出しました。テッド博士でさえ、これほどの異変は経験したことがありません。
「ああ、もうだめだ。本艇の噴射も効かなくなり、太陽の光さえ見えない暗黒世界へ閉じ込められてしまった。わたしたちは、もうどうすることもできない」
「そうだ。われわれを待っているのは燃料の欠乏だ。食料が尽きることだ。そしてみんな餓死するのだ。ああ、俺は餓死する前に頭がおかしくなりたい」
もはや『宇宙の女王』号の救援どころではありません。自分たちの上に、恐ろしい死の影がさしているのです。もう自分を救う道はないのか。この奇怪な大暗黒の秘密は何なのか。

【真相不明】

司令艇の操縦席が、急きょ会議場になりました。最高幹部と、本艇に乗り込んでいる技術担当の博士たち十二人が集まり、これからどうすべきか、そしてこの奇怪な現象は何なのかという協議を始めたのです。
帆村もこれに加わっていました。三根夫少年も一緒です。三根夫は帆村から言いつけられ、会議を聞きながらも、本艇の周囲に対して特に注意を払うことになっていました。少年は、テレビジョンの六つのモニターへ、代わる代わる鋭い視線を送っていました。
「まず、いまわれわれがどういう目に遭っているのか、意見を述べてほしい」
隊長が切り出しました。
「宇宙塵(うちゅうじん)の塊の中に突入したのではないかと思います。だから星の光が見えなくなったのです」
博士の一人が意見を言いました。
「いやいや、そうではないと思う。宇宙塵の塊の中へ突入したのなら、本艇はその塵にぶつかるはずだから、手応えが感じられるはずです。しかし、そんな手応えはないではありませんか。また宇宙塵の中であっても、本艇は前進できるはずですが、実際には一メートルも進むことができません。ですから宇宙塵という考えは正しくない」
「では、君は何と考えるのかね」
「わたしは暗黒星へ突っ込んだのではないかと思いますよ」
「それはおかしい。暗黒星の中へ突っ込んだのなら、その時にはげしい衝突が起こり、本艇は破壊されてしまうだろう」
「いや、暗黒星には、粘り気のある液体からできているものもあるはずです。そういうものの中へ突っ込めば、必ずしも破壊が起こるとは限りません」
みんなの議論が活発になりました。
「諸君は、もっとも大切なことを見逃している。それは、星の光が消え始める前に、本艇が薄赤い光で包まれていたことだ。あの光は何だったのか。あの不思議な光の謎をまず解かなくてはならない」
「おお、それはいいところに目をつけた。君は、どう解くのかね」
「わたしの考えでは、本艇は何らかの外力を受けて、あの奇妙な放電現象を起こしたのだと思います。その外力が何なのかはまだ分かりませんが、とにかく非常に大きな力を持っているはずです。あの奇妙な放電現象によって、本艇の外壁には、黒いペンキのようなものが塗りつけられた。そのために外が見えなくなった。この考えはどうですか」
「なるほど、その説なら外界が見えなくなったことは説明できる。しかし、本艇がガスを噴射しているにもかかわらず、少しも前進しない理由が説明できない。

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