初級翻訳・恐竜島 第32話

恐竜島

なぜモレロが恐竜と戦っているのか、読者の皆さんもきっと知りたいはずです。
フランソアとラルサンの二人の水夫がモレロの指揮に従って丸木舟を作っていたことは、すでに皆さんもご存じの通りです。
その丸木舟が完成したのは、ちょうど玉太郎たちの一行が洞窟の横穴を急いで通り抜け、苦労していた頃のことでした。
「ご苦労、ご苦労。さあ、出来上がったら、ついでに海まで運ぶんだ」
「やれやれ、まだ仕事があったんですかい」
「当たり前だ。ジャングルの中じゃ、ボートは進みやしねえ」
「そりゃそうですが、海に行ってどうするつもりですか。
まさか、これで島から逃げ出そうなんて言うんじゃないでしょうね」
「黙って、俺の言う通りにやりゃあいいんだ。つべこべ言うと、その腹に風穴をあけるぞ」
「へい、へい、やりますよ、やりますよ。何も海まで運ばないなんて言ってませんやね」
フランソアもラルサンも、親分格のモレロにかかると、まるで赤ん坊のように言いなりです。
三人はモレロを真ん中にして、ボートを頭の上にかつぎ上げました。
「さあ、フランソア、お前が先頭だ。行け!」
密林の雑草の中を、三人はボートという帽子をかぶったような格好で突き進みました。
「おっと右だ、少し体をかがめろ、枝にぶつかるぞ」
さすがに親分だけあって、モレロは注意深いです。
こうして、三人が汗をびっしょりとかきながら二十分ほど進むと、ようやくあの洞窟のある入り江に出ました。
ボートは水に浮かべられました。
「さあ、何をぐずぐずしているんだ。早く乗らねえか」
「へえ」
ボートに乗ってしまえば、水を得た河童も同然です。
三人は急に元気を取り戻しました。どんな波が来ようとも、嵐になろうとも、海の上で生活してきた三人は恐れません。
「モレロさん、どこへ行くんですか?」
「恐竜の巣だよ」
「え、じゃあ、あの……」
「今まで俺たちは、上からばかり奴らを狙っていた。だから失敗したんだ。今度は下から攻めるのさ」
「恐竜の卵を盗りに行くんですかい?」
「誰が卵なんかもらうかよ」
「じゃあ、セキストン伯爵を助けに行くんですか?」
「誰があんな欲張り親父を助けるもんか。さあ漕げ、ボートがあの巣に着くまでに、俺の計画を全部話してやるからな」
ギイッ、ギイッ。
フランソアとラルサンが漕ぐ櫂が、深緑色の水面を切り裂き、白い小さな泡を巻き起こします。その周辺では、七色に輝く美しい小魚たちが戯れていました。
ボートは珊瑚礁の海を気持ちよく滑っていきます。
もう夕方に近くなっていました。太陽はすでに島影に隠れ、東の空は夕日に照らされて茜色に染まっています。
「あそこに着く頃には、ちょうど薄暗くなるだろう」
舵をとりながら、モレロは話を始めました。顔にある傷跡が、いっそう恐ろしげな凄味を加えています。
「俺たちはこっそりと、奴らの巣に忍び寄っていくんだ」
「卵を盗るんですかい?」
「卵じゃねえ、宝物だ」
「宝物? 恐竜の宝物ですか?」
「恐竜が宝物なんぞ持っているか。海賊ブラック・キッドの宝物さ」
「げっ、ブラック・キッドの!」
フランソアが驚きのあまり叫びました。
「しっ、大きな声を出すな」
ラルサンも目玉が飛び出るほど見開いています。フランソアなどは、大きな口をあんぐりと開けたまま驚きを隠せません。
「俺はちゃんと知っているんだ。今度の探検は、表向きは南海の孤島の調査ということになっているが、本当の目的はキッドの宝物を探すことだったんだ」
「へえーっ」
「船長のセキストン伯爵は、何かの記録からキッドの宝物がここ隠されていることを知ったんだ。それで第一回の探検をやった。宝物は確かにあった。だが、恐竜のために命からがら逃げ出すことになり、宝物どころの騒ぎじゃなかったんだ」「お前も知っているだろう」
「ええ、団長一人だけが助かったという話ですね」
「セキストンにしてみれば、その宝が手に入らなかったのは、悔しくてたまらない。なんとかして、それを手に入れようと考えたんだ」
「なるほど」
「ところが、その話が俺の耳に入ったのが、すべての始まりさ」
「へえ」
「港の酒場で、俺が『キッドの宝』の噂話をしていたら、ポンと肩を叩く奴がいたんだ」
「ええ、え」
「それが奴(セキストン)だったのさ。お前はキッドの宝がどこに隠されているか知らないだろうが、俺は知っている。しかも、実際にこの目で見たというんだ」
「……」
「最初は俺も、『この爺さん、かわいそうに少し頭がいかれているな』と思って相手にしなかった。だが、だんだん話を聞いてみると、まんざら嘘でもなさそうなんだ。そこで、いろいろと相談することになったわけさ」
「……」
「おい、そんなに身を乗り出さなくていいから、しっかり漕げよ」
「そこでな、俺は持っている金をすべて出した。それでも船を雇うには足りないし、水夫も集められない。考えた挙句が、この探検船さ。そうなると、物好きで冒険好きのアメリカの映画屋たちがすぐに賛成してきた。マルタンという野郎も、珍しい島ならそれをネタに一儲けしようという下心でついてきた。一番厄介なのは、ツルガ博士という考古学者の先生だ。ああいう学者は足手まといになるし、金も持っていない。だが、表向きが『島の探検』ということになった以上、連れて行かないと世間から変に思われる。だから仕方なく連れて行くことにしたのさ」
「それじゃ、張とかいう中国人は?」
「あいつがマルタンのように下心があるのか、ツルガ博士のように勉強のために来たのかは分からねえ。だが、参加費用だけは出したんで、連れて行くことにしたんだ」
「なるほど、お話を伺えば、いろいろと分かってきましたよ」
「それで、キッドの宝は見つかったんですか?」
「それがよ、恐竜の巣のあたりにあるらしいんだ」
「『あたり』って、モレロ親分は自分の目で見ていないんですかい?」
「ああ、俺自身が見つけたわけじゃない」
「じゃあ、どうして巣のあたりにあるってことが分かったんです?」
「まあ、そんなことくらい分かるさ。まずセキストンがあの崖の上から覗き込んで、喜びの声を上げた。その瞬間に、俺は『奴が宝が無事なのを確認したんだ』と確信したのさ」
「その次に、奴は縄で降りていったんだろう。そして、欲張りな正体をさらしたわけだ」
「というと?」
「他の連中に横取りされないうちに、自分一人で独り占めしようとしたんだ。その結果がアレさ。縄につかまったまま、真っ逆さまに落ちていった」
「助かったんでしょうかね」
「さあ、それは分からねえ。アメリカ人たちが探しに行ったが、どうなったことやら」
「助からなかったとしたら、ちょっと困りますね」
「何がさ?」
「宝のありかですよ」
「馬鹿野郎、だからお前はいつまで経っても水夫止まりなんだ。宝はある。確かにあるんだ。セキストンが飛び込んだことが、その何よりの証拠さ。あの辺りにあるってことさえ分かればいいじゃねえか」
「でも、哀れでしたね」
「仕方ねえ、欲張った罰さ。俺はそんなことはしねえ。お前たち二人に手伝ってもらったんだ、分け前はちゃんとやるよ」
「ありがとうございます」
「礼を言うには及ばねえ。働きに対して相応の報酬を得るのは当然のことだ。

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