リップの家にはもう手伝わなければならない用事もありませんでした。それに、もう周りの人からあれこれ言われないくらいの、立派な年寄りになりました。だから彼は何の遠慮もなく、昔と同じように居酒屋の前のベンチに座り、村の人たちからは「物知りなおじいさん」として、また「戦争が起きる前のことを知っている生き証人」として敬われるようになったのです。
リップの話がスラスラとよどみなくなり、彼が眠っていた間に世の中がどう変わったのかを本当に理解できるようになったのは、それからだいぶ後のことでした。
大きな「独立戦争」があったこと。国がイギリスの支配から抜け出したこと。そして、かつてはイギリスの国王陛下の家来だったリップが、今では「アメリカ合衆国」という自由な国の国民になったこと。そうした変化が、少しずつ、しっかりと彼の心に刻まれていったのでした。リップはもともと政治家ではありませんでしたから、国の移り変わりについてはあまり気にしていませんでした。でも、そんな彼にも、昔はある「厳しい支配」の下で、ため息ばかりついていたことがあったのです。
それは、奥さんの厳しい支配でした。
幸運なことに、この「奥さんという名の政府」は、もう倒れてなくなっていました。彼は夫婦の束縛から解き放たれて、家をいつ出てもいつ帰っても誰にも怒られない、本当の自由の身になったのです。
「ヴァン・ウィンクル夫人」という奥さんの名前を聞くたびに、リップは相変わらず頭を振ったり、肩をすくめたり、どこか遠くを見たりしました。このしぐさは、自分の運命をあきらめた証拠のようにも見えましたが、あの厳しい支配から逃げ出せた喜びを表しているようにも見えました。
ドゥーリトルさんの宿屋に新しいお客さんが泊まるたびに、リップは自分の身の上に起きた不思議な出来事を話して聞かせました。最初の方は、話すたびに内容が少しずつ変わることもありましたが、それは彼が長い眠りから覚めたばかりで、考えがまだあちこち混ざっていたからでしょう。
でも最後には、今ここでお話ししている通りの内容にしっかりと決まり、近所に住むおじいさんもおばあさんも、若い人も子供たちも、みんながそのお話の最初から最後までを詳しく知るようになりました。
中には、どうしてもリップの話を信じない人もいました。「あのおじいさんは、ずっと頭がおかしくなっていたんだろう。もともとちょっと変わった人だったからね」なんて言う人もいたのです。
それとは反対に、リップの話を心の底から信じていたのは、昔からこの土地に住んでいるオランダ人たちの子孫でした。
今でも、夏の日の午後にキャッツキル山の方からゴロゴロと雷の音が聞こえてくるたびに、彼らは決まってヘンドリック・ハドソンとその仲間たちがボウリングをしているお話を繰り返します。そして、毎日の暮らしが大変で困っている人たちは、「ああ、自分もリップ・ヴァン・ウィンクルが飲んだあの不思議な飲み物を、一口だけでも飲ませてもらいたいものだなあ」とつぶやくのでした。
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