それは秋のこと――。
ちょうど小学五年生の、今くらいの時期だった。
いつもと同じように、裏手を流れる川の土手に青々と茂り、高くそびえ立つ椋(むく)の木に登って、繁(しげル)、正彦(まさひこ)、勝次(かつじ)、そして僕の四人は楽しく遊んでいた。
裏手の川は、長い日照り続きですっかり干からびていた。
川上から転がってきた小さく丸い小石が一面に敷き詰められたその上を、赤トンボが可愛らしい影を落としスイスイと飛んでいた。
みんなは何もかも忘れて、ただ椋の実を採ることに夢中になっていた。
小さな青い椋の実をたくさん採ってもみ殻の中に入れておくと、ちょうど霜が降りて寒くなる頃には黒く柔らかくなる。
竹馬に乗って、日の当たるお寺の白い壁にもたれながらそれを頬張るのが、たまらなく美味しいのだ。
だから、「誰よりも自分がたくさん採ってやるぞ」と、できるだけ高く、できるだけ誰も行ったことのないような枝へと登っていく。
小さくて身軽な勝次は、今まで誰も行ったことがないような場所に、枝がしなるほど実った青い椋の木を見つめながら、赤い顔に笑みを浮かべて叫んだ。
「今に見てろよ! 俺が誰よりもたくさん採ってきてやるからさ!」
それからみんなは自分のことさえ忘れて、勝次がたくさんの椋の実を夢中で採っている嬉しそうな姿を、うらやましそうに見つめていた。
勝次はやがて、ふっくらと膨らんだ胸元を押さえながら、また元の枝を伝って降りかけただ。
その時の彼の顔は、本当につややかで得意げだった。
だが、その時――。
みんなは一斉に驚きで目を見張った。
なんとその瞬間、彼の体がまるでボールのように下へ落ちていくのだ。
みんながあわててやっとの思いで木から下りた時、勝次の体は冷たい石の上にうつぶせになって倒れていた。
彼の胸元からは、青い椋の実がまわりにパラパラと散らばっていた。
勝次は足を骨折していてみんなに運ばれ、ついには遠くの病院へと担ぎ込まれていった。
そして、いまだに村には帰ってきていないのだ。
みんなが先生に何度も尋ねたこともあった。
けれども、やっぱり先生も何も知らないようだった。
今はまた、裏手の川が干からびる季節だ。
勝次の胸元からこぼれ落ちたような青い椋の実が、今もあの石のまわりに散らばっているだろうか。
勝次はいったい、どうしているのだろう――。
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