ハイドンが作ったオーストリアの国歌は、世界にある数多くの国歌の中でも、芸術的に美しく優れたものとして有名です。
ハイドンの自信通り、攻め込んできたフランス軍は、ハイドンの家に何をするでもなく、それどころかフランスの士官たちはわざわざ老ハイドンを訪ねて敬意を表したほどでした。
その年の五月三十一日、ハイドンの魂はついに天に帰りました。質素ではありましたが、立派な葬列には、敵国であるフランスの儀仗兵(ぎじょうへい)までが付き添いました。
その明朗な性格
ハイドンはバッハが「マタイ受難曲」を作った年に生まれ、ベートーヴェンが「田園交響曲」を完成させた年に亡くなりました。
まさにこの二つの曲が物語っているように、彼はバッハの対位法的な古典音楽と、ベートーヴェンの情熱的なロマン派の音楽をつなぐ架け橋のような存在でした。
ハイドンは優れたメロディーメーカーであると同時に、ソナタ形式を完成させた人物です。同時に、ケルビーニの跡を継いで弦楽四重奏曲の基礎となる形を整え、バッハの子供たちの仕事をさらに発展させて、近代音楽の最高形式である「交響曲の四楽章形式」を定めた最初の人でもあります。
ハイドンがいなければ、モーツァルトもベートーヴェンも、今日私たちが知っているような姿では存在しなかったことでしょう。
ハイドンは古典音楽の最後の巨人であり、同時に近代音楽のスタートを切った人でもあります。その功績は、数多くの作品と共に、百年先、二百年先の未来まで語り継がれるはずです。
彼の作曲は、整った美しさと明るさが特徴です。自分の感情に溺れるようなことは一度もなく、安らぎと明るさが曲全体を支配しています。
おそらく、ハイドンという人間そのものの良さが、そのまま作品に映し出されているのでしょう。
代表作としては、オラトリオの『天地創造』『四季』があり、百曲以上ある交響曲の中から『驚愕』『軍隊』『告別』『オックスフォード』などが挙げられます。
弦楽四重奏曲はハイドンならではの素晴らしい世界で、七十七曲の中から『セレナーデ』(作品三の五)『皇帝』『ひばり』、その他十数曲を数えることができます。
いつも身近に置いて、生活の慰めや元気をもらうのに、ハイドンの音楽ほどぴったりなものはありません。
誰にでも、何の迷いもなくおすすめできるのがハイドンの音楽だと言えるでしょう。
ハイドンの作品とレコード
ハイドンのレコードは、バッハの三分の一、ヘンデルの三倍くらいの数があるでしょうか。
ハイドンの音楽はその穏やかで分かりやすい性質から、ひとりでゆっくり過ごすとき、瞑想するとき、家族団らんのときなど、最高の伴奏役を務めてくれるに違いありません。
誰からも愛されることこそ、「パパ・ハイドン」の音楽の素晴らしさなのです。
交響曲の中から
ハイドンの数多い交響曲の中から、最も有名な『驚愕交響曲』を選ぶとして、クーセヴィツキーとブレッヒとホレンシュタイン、一体誰の演奏を聴くべきか、非常に迷うところです。
新しい録音は演奏が自分の好みと合わないことがあり、演奏が良いものは録音が古すぎるということもあります。
いっそのこと、トスカニーニが指揮した『時計交響曲』(ビクターJD一四九五―八)、ワルターが指揮した『軍隊交響曲』(コロムビアJS三八―四〇)、ならびに『オックスフォード交響曲』(コロムビアJS一一七―九)などを選ぶのが良いかもしれません。
これらの一つ一つは名盤と言えるもので、ハイドンの良さを存分に味わわせてくれるはずです。
その他に私は、「パパ・ハイドン」の茶目っ気を発揮するものとして、『玩具交響曲』を挙げておきたいです。
たった一枚の両面レコードですが、街へ行って玩具の楽器を買い集め、驚き呆れる楽団員たちに演奏させたという、ハイドンのいたずら心が溢れていてとても楽しい曲です。
コロムビアから出ている、ワインガルトナー指揮のレコードが最も長い演奏時間となっています(J七九八二)。
室内楽
弦楽四重奏曲の形式を整え、何十曲もの名作を残して、後世のために室内楽の宝庫を築き上げたハイドンの功績は計り知れません。
H・M・Vのプロ・アルテ四重奏団は「ハイドン・ソサエティ」の名の下に、ハイドンの弦楽四重奏曲を片っ端から録音し、六枚ずつ七集まで発売しました。日本ビクターも第三巻から第七巻まで出しています。プロ・アルテの演奏は冷たいという意見もあり、反対する人もいるかもしれませんが、この偉大な業績は尊敬を持って受け止めなければなりません。特にハイドンのような、古典音楽の真髄とも言える弦楽四重奏曲を、あまりにも甘い雰囲気で感傷的に演奏することは避けるべきです。私はむしろ、プロ・アルテ四重奏団のさっぱりとした、飾り気のない演奏の方に賛成することが多いのです。
独立したハイドンの室内楽レコードとして、まず第一に挙げなければならないのは、コロムビアから出ているカペエ四重奏団の演奏による「弦楽四重奏曲 第67番ニ長調(ひばり)」(カペエ協会 S5001-3)です。
この第一楽章に表現された、高貴で美しいひばりの歌声は、春の野原の麗しさをそのまま思い出させてくれます。これは今は亡きカペエ四重奏団による、傑作レコードの一つです。
続いて、レナー四重奏団の「弦楽四重奏曲 ハ長調(皇帝)」(コロムビア J8471-4)も挙げるべきでしょう。
しかし、この曲に関しては、ハイドン・ソサエティ第四巻に収められたプロ・アルテ四重奏団の演奏とどちらが良いか、甲乙つけがたいところです。
有名な「弦楽四重奏曲 ヘ長調(セレナーデ)、作品3の5」は、愛好家協会の第一集にプロ・アルテ四重奏団の一枚物がありますが、二枚組で収録された、録音は古いもののコロムビアのレナー四重奏団による演奏も悪くありません(J7661-2)。また、ロート四重奏団の「弦楽四重奏曲 ハ長調(鳥)」(コロムビア J8680-2)も、ハイドンの特徴をしっかりと活かした良いレコードです。
世界最高の芸術的団体といえば、カザルス(チェロ)、ティボー(ヴァイオリン)、コルトー(ピアノ)の組み合わせによる「カザルス・トリオ」を挙げないわけにはいきません。
その一人ひとりが一流中の超一流であるだけでなく、カザルスをリーダーとするこの三人の巨匠が一つにまとまった演奏は、他に比べるものがないほどの素晴らしい芸術性を放っているからです。
カザルス・トリオのレコードはたくさんありますが、録音が古いという欠点があったとしても、ハイドンの「ピアノ三重奏曲 ト長調」(ビクター JF78-9、および家庭名盤集第三集に収録)などは、ベートーヴェンの「大公トリオ」と並んで、レコード界の宝物のような傑作です。盤の上で玉が転がるようなその名演奏は、長く記憶され、尊敬されるべきものだと思います。
チェロ協奏曲
「チェロ協奏曲 ニ長調」も、ハイドンの代表的な名作の一つです。
二、三種類出ていますが、コロムビアのフォイアーマンによる演奏が良いでしょう(J8511-4)。
ランドフスカ夫人の弾く「クラヴサン協奏曲 ニ長調」も、決して聞き逃してはならない一枚です(ビクター JD1316-8)。
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