その中でも特に優れているのは、メンゲルベルク指揮による「コンチェルト・グロッソ イ短調 作品3の8」(テレフンケン23660―1)ではないでしょうか。
非常に輝かしく、誰が聴いても楽しめる曲です。
バッハ以前の古典から、愛聴するためのレコードとして、ひとまず私はこれらを選んでみました。
……と、書き終えてから気づいたのですが、ドメニコ・スカルラッティ(1685―1757)の「クラヴサン奏鳴曲集」、ランドフスカ夫人による演奏(ビクターJD682―7)を入れ忘れていました。
この古く穏やかな二十曲のソナタは、音楽史的に興味深いだけでなく、家族団らんの場を彩る素朴な音楽として、誰にでも喜ばれるはずです。
世にも美しく、明るい一連の名曲集です。
バッハ以後
バッハの子達
バッハの子供達の中で、長男のフリーデマン・バッハ(1710―1784)は、不肖の息子と見なされ、あまり幸福とは言えませんでしたが、作品は一つだけレコード化されています。
ビクターから出ている、ブライロフスキーのピアノによる「コンチェルト ニ短調」がそれです(VD8004―5)。
次男のエマヌエル・バッハ(1714―1788)は、ソナタ形式を確立してハイドンに先駆け、近代音楽の発達に大きな功績を残しました。
レコードでは、コロムビアの音楽史の中に「ピアノ・ソナタ ヘ短調」が収録されています。
末っ子のクリスティアン・バッハ(1735―1782)は、イタリア風の美しい曲をたくさん作りました。
レコードも三人の息子の中では最も多く、ビクターの「ハープシコードと二挺のヴァイオリン及びチェロのための協奏曲 ト長調」は、シャンピオンの演奏で美しい響きを聴かせてくれます(JA1252―3)。
コロムビアの世界名盤集には、同じくシャンピオンの独奏で「クラヴサンの協奏曲 ハ長調よりのロンド」があり、もう一つ、メンゲルベルクがニューヨーク・フィルハーモニックを指揮したビクターの「交響曲 変ロ長調」は、十年以上前の録音ですが、名演奏と呼ぶにふさわしいものです(7483―4)。
グルック
(1714―1787)
ドイツが生んだ近世歌劇の改革者であり、当時世界を席巻していたイタリア歌劇の伝統を打破して、劇的な要素を初めて取り入れた人物です。
幸いなことに、彼の代表作である歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」全三幕の、ほぼ全曲に近いものがコロムビアから発売されています。アンリ・トマジがヴラソフ・ロシア合唱団とパリ交響楽団を指揮し、独唱の主役であるアルトのアリス・ラヴォが素晴らしい歌声を聴かせてくれます(JS130-7)。
ボッケリーニ
(ルイジ・ボッケリーニ 1743-1805)
イタリア古典音楽の中でも、特に興味深い作曲家です。チェロのための曲や室内楽に優れた作品が多くあります。中でもカザルスが演奏する「チェロ協奏曲 変ロ長調」は、曲そのものの古風で素朴な美しさと、演奏の素晴らしさが相まって、まさに絶品と言えるでしょう。管弦楽の指揮はロナルドです(ビクター JD1023-5)。このようなレコードを聴くのは、本当に楽しいものです。
ウェーバー
(カール・マリア・フォン・ウェーバー 1786-1826)
ドイツの歌劇(オペラ)の歴史に新しい時代を切り拓いた大作曲家で、ロマン派音楽の開祖とも呼ぶべき人です。歌劇「魔弾の射手」が代表的な傑作として知られています。全曲盤のレコードはありませんが、ポリドールから短縮版が出ており、序曲についてはフルトヴェングラーがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したものが名盤です(ポリドール E217-8)。一枚物の歌としては、レーマン(ソプラノ)による「アガーテの詠唱」があります(コロムビア J8586)。「舞踏への勧誘」はピアノ曲として書かれた名作の一つで、古い録音ですがコルトーのレコードがあります(ビクター JE185)。ベルリオーズが管弦楽用に編曲したものを、ストコフスキーが指揮したレコードも有名です(ビクター JD1325)。また、ワインガルトナーが自身の編曲を指揮したレコードもコロムビアから出ています。「ピアノ協奏曲 ヘ短調(作品79)」については、カザドシュスがパリ交響楽団(ビゴー指揮)と共演したコロムビアのレコードが良いでしょう(J8591-2)。そのほか、ピアティゴルスキーがヴァイオリン・ソナタをチェロ用に編曲して収録したビクターのレコードなどもあります。
ロッシーニ
(ジョアキーノ・ロッシーニ 1792-1868)
軽快で美しいロッシーニのイタリア歌劇が、当時どれほどヨーロッパ中を熱狂させたか、今では想像もつかないほどです。レコードでは、歌劇「セヴィリアの理髪師」の全曲が、モラヨーリの指揮、スカラ座のベストメンバーによって収録されています。本場ならではの優れた演奏です(コロムビア J8732-9、8740-7)。この歌劇からの一枚物としては、「序曲」にトスカニーニ指揮の名盤があり(ビクター JD1287)、有名なアリア「今の歌声は」にはテトラツィーニ(ビクター JD259)やガリ=クルチ(ビクター 7110)の録音があり、「陰口は静かに」にはシャリアピン(ビクター 6783)のレコードがあります。歌劇「ウィリアム・テル」の序曲は、品の良いポピュラー音楽として大変な人気です。コッポラがパリ音楽院管弦楽団を指揮したもの(ビクター JF9-10)と、トスカニーニがN・B・C交響楽団を指揮したもの(ビクター JE208-9)は、どちらも素晴らしい出来栄えです。ほかに、歌劇「セミラミーデ」序曲のトスカニーニ指揮盤も見事です(ビクター JD943-4)。
レーヴェ
(カール・レーヴェ 1796-1869)
当時はシューベルトよりもはるかに人気があったと言われています。バラードに優れた作品があり、スレザークが歌った「魔王(トム・デア・ライマー)」などは名演ですが、日本では発売されていません。「鳥刺しのハインリッヒ」と「オイゲン王子」をヒュッシュ(バリトン)が歌ったレコードがおすすめです(ビクター JE71)。
ドニゼッティ
(ガエターノ・ドニゼッティ 1797-1848)
イタリア歌劇の作曲家であり、伝統の守り手です。歌劇「ランメルムーアのルチア」や「連隊の娘」などが有名です。「ルチア」の「狂乱の場」は、コロラトゥラ・ソプラノの歌唱力を見せつける絶好の曲で、昔はテトラツィーニが、最近ではダル・モンテやガリ=クルチが得意としています。「ルチア」の「六重唱」も有名で、カルーソーを中心に古い録音で三通りも存在します。「連隊の娘」の詠唱にも、ダル・モンテによるレコードがたくさんあります。
ベルリーニ
(ヴィンチェンツォ・ベルリーニ 1801-1835)
ロッシーニやドニゼッティの跡を継いだイタリア歌劇の作曲家です。歌劇「夢遊病の女」や「ノルマ」が知られています。歌劇全体としてはそこまで面白いというわけではありませんが、随所に出てくるイタリア風の美しい詠唱が有名です。ダル・モンテなどのレコードに良いものがあります。
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