初級翻訳・楽聖物語 第74話

楽聖物語

彼の音楽理論は感覚的な快楽を追求し、伝統を無視したものでしたが、結局のところカンディンスキーの絵画と同じように、理論に溺れてしまい、その優れた才能を十分に伸ばしきらないうちに亡くなってしまったという印象です。
 しかし、視覚や嗅覚までをも音楽に取り入れようとした試みは、非常に大胆不敵で興味深いものでした。「法悦の詩」と「プロメテウス」はその代表作で、幸いなことにビクターからストコフスキー指揮のレコードが出ています(7515―8)。ピアノ曲にもなかなかの名作があり、「ピアノ・ソナタ第九番」と「同第十番」は、シュンキエウィッツの演奏で十数年前に日本ポリドールの名曲鑑賞会から発売されましたが、さすがに録音は古くなっています。ほかにもポリドールから、ブライロフスキーの演奏で「練習曲 変ニ長調」と「前奏曲(作品11の10)」が出ています。

レーガー
(マックス・レーガー 1873―1916)

 ドイツの保守的な作曲家です。歌曲「マリアの子守歌」はとても美しい曲ですよ。ビクターの「名演奏家秘曲集」の中に、ゲルハルトが歌っている良いレコードがあります。
 楽器のための曲もいくつか収録されていますが、面白いものは特にありません。この人が得意としていたオルガン曲のレコードは、まだ出ていないようです。

シェーンベルク
(アルノルト・シェーンベルク 1874―1951)

 無調音楽(調性にとらわれない音楽)を主張し、それを実際に形にした、最も破壊的で、同時に最も大胆な新しい道を開いた作曲家です。オーストリア生まれで、今も活躍しています。
 「浄夜」は初期の作品で、弦楽六重奏曲ですが、美しさも兼ね備えています。オーマンディがミネアポリス交響楽団を指揮したレコードがあります(ビクター JD777―80)。

アーン
(レイナルド・アーン 1875―1947)

 フランスの歌謡曲を作っていた作曲家です。
 レコードでは「ベアトリス・デステの舞踏会」などが収録されていますが、やはりニノン・ヴァランが歌った「最後のワルツ」や「風景」などの方が良いですね。

ラヴェル
(モーリス・ラヴェル 1875―1937)

 ドビュッシーの影響を受けましたが、同時にドビュッシーにも影響を与え、フランス音楽の中に独自の境地を打ち立てたのがラヴェルです。ドビュッシーほど詩的な雰囲気はありませんが、ドビュッシーよりも現実的で、技術はさらに繊細で、簡潔かつ力強いものでした。
 レコードは数え切れないほどたくさんあります。
 「マ・メール・ロワ」はおとぎ話の『マザー・グース』を題材にした組曲で、美しく清潔感のある曲です。コロムビアから出ているピエルネ指揮のものは、古い録音ですが美しいですよ(J8649―50)。
 「ダフニスとクロエ」は、舞踊曲の代表作です。楽しさという点では少し欠けるかもしれませんが、精巧で驚くほど見事な作品です。第一組曲はコッポラ指揮のものがあり(ビクター JD443)、第二組曲はゴーベル指揮のものがあります(コロムビア J7749―50)。
 「スペイン狂詩曲」は、コロムビアのピエルネ指揮のものが、録音は古いですが騒がしくなくて良い出来です(J8295―6)。
 「ボレロ」はラヴェルの作品の中で、映画の題材として使われたこともあってか、最もよく知られ、愛されています。しかし、これは実に巧みに作られていて、その単純さが一般の人々に受け入れられているのでしょう。無数にレコード化されていますが、ポリドールから出ているラヴェル自身の指揮によるものは、録音は古いですけれど面白いですよ(E186―7)。次におすすめなのは、ビクターのクーセヴィツキー指揮盤でしょうか。
 組曲「クープランの墓」は有名ですし、良い曲です。古風な舞曲の中にラヴェルらしい新鮮さを盛り込んでいるところが面白いですね。コッポラ指揮のものが良いでしょう(ビクター JH157―8)。
 室内楽では「弦楽四重奏曲 ヘ長調」が名品で、コロムビアのカペエ弦楽四重奏団による演奏が美しいです(S1119―22)。
 ピアノ協奏曲については、「左手のためのピアノ協奏曲」があります。これは前の世界大戦で右手を失ったピアニスト、ウィットゲンシュタインのために書かれたもので、ポリドールに女流ピアニストのブランカールが吹き込んだものがあります(E167―8)。ほかに「ピアノ協奏曲」がもう一つあり、コロムビアのロンによる演奏が名演です(J8035―7)。
 ピアノ曲の「ソナチネ」をコルトーが弾いたものは、古い録音ですが美しいです(ビクター JD576―7)。「道化師の朝の歌」はギーゼキングの演奏があり(コロムビア JD6011)、「水の戯れ」にはコルトーの名演があります(ビクター JD577)。どちらも古い録音ですが、良いレコードです。
 ヴァイオリン曲の「ツィガーヌ」は、ラヴェルらしい野心的な意図が込められた作品です。ビクターにメニューインとハイフェッツの演奏があり、コロムビアにフランチェスカッティの演奏があり、それぞれに良さがあります。
 歌劇は「スペインの時」の全曲に近いものがコロムビアにありましたが、残念なことに廃盤になったようです。
 「三つのヘブライの歌」はグレエ(ソプラノ)の独唱で、ラヴェル自身がピアノを弾いているレコードがあります(ポリドール 50043)。もう一つ、「マダガスカル島民の歌」もグレエが歌っており、ラヴェルが指揮するトリオの伴奏で、これも面白いものです(ポリドール 50044―5)。
 こうしてたくさん並べると、どれが良いのか分からなくなってしまいますね。私の趣味から言えば、コルトーの「ソナチネ」と「水の戯れ」、それにカペエの「弦楽四重奏曲」が一番親しみやすいです。一般的には「ボレロ」が人気ですが、聴いていると少しバカにされているような気分にならないでもありません。「ダフニスとクロエ」の良いレコードがあれば、それが一番楽しめると思いますよ。

クライスラー
(フリッツ・クライスラー 1875―1962)

 今、最も有名なヴァイオリニストです。ウィーンに生まれ、今はアメリカに住んでいます。最近、自動車事故でケガをしたそうですが、幸い快方に向かっているようです。ヴァイオリニストとしてあまりに有名なので、作曲家としての顔は忘れられがちですが、ウィーン風のヴァイオリン小曲には、言葉では言い表せないほど可愛らしいものがたくさんあります。
「ウィーン狂想曲」「愛の喜び」「愛の悲しみ」「美しきローズ・マリー」「支那の太鼓」などは、どれも作曲者自身が演奏したレコードがビクターから出ています。
「弦楽四重奏曲」などもレコード化されていますが、こちらはあまり面白いものではありません。

ファリア
(マヌエル・デ・ファリャ 1876―1946)

 現代のスペインを代表する作曲家です。洗練された手法と、その土地ならではの香り高い雰囲気が特徴です。
 「スペインの夜の庭」は、非常に印象深い作品です。ナヴァロのピアノ、アルフテル指揮のスペインの管弦楽団による演奏が収録されています(コロムビア J7771―3)。

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