これからは、そっちをおやり。ね、そら、
お空。
お空。
お空のちちは、
つめたい雨の ザァザザザ、
かしわのしずくトンテントン、
まっしろきりのポッシャントン。
お空。
お空。
お空のひかり、
おてんとさまは、カンカンカン、
月のあかりは、ツンツンツン、
ほしのひかりの、ピッカリコ。」
「そんなものだめだ。面白くもなんともないや。」
「そうか。僕は、こんなこと、まずいからね。」
ベゴ石は、静かに口をつぐみました。
そこで、野原中のものは、みんな口をそろえて、ベゴ石をあざけりました。
「なんだ。あんな、ちっぽけな赤頭巾に、ベゴ石め、へこまされてるんだ。もうおいらは、あいつとは絶交だ。みっともない。黒助め。黒助、どんどん。ベゴどんどん。」
その時、向こうから、眼鏡をかけた、背の高い立派な四人の人たちが、いろいろなピカピカする器械をもって、野原を横切って来ました。その中の一人が、ふとベゴ石を見て言いました。
「あ、あった、あった。すてきだ。実にいい標本だね。火山弾の典型だ。こんな整ったのははじめて見たぜ。あの帯の、きちんとしてることね。もうこれだけでも今度の旅行は十分だよ。」
「うん。実によく整っているね。こんな立派な火山弾は、大英博物館にだってないぜ。」
みんなは器械を草の上に置いて、ベゴ石をまわってさすったりなでたりしました。
「どこの標本でも、この帯の完全なのはないよ。どうだい。空でぐるぐるやった時の具合が、実によくわかるじゃないか。すてき、すてき。今日すぐ持って行こう。」
みんなは、また向こうの方へ行きました。
角のある石たちは、黙ってため息ばかりついています。そして気のいい火山弾は、黙って笑っておりました。
昼過ぎ、野原の向こうから、またキラキラ眼鏡や器械が光って、さっきの四人の学者と、村の人たちと、一台の荷馬車がやって参りました。そして、柏の木の下にとまりました。
「さあ、大切な標本だから、壊さないようにしてくれ給え。よく包んでくれ給え。苔なんかむしってしまおう。」
苔は、むしられて泣きました。火山弾は、自分のからだを丁寧(ていねい)に、きれいな藁(わら)やむしろで包まれながら、こう言いました。
「みなさん。
長い間、お世話になりました。
苔(こけ)さん。
さようなら。
さっきの歌を、あとで一度でもいいから、歌ってくださいね。
私の行くところは、ここのように明るくて楽しい場所ではありません。
それでも私たちはみんな、自分にできることをしなければならないのです。
さようなら。
みなさん。」
「東京帝国大学校地質学教室 行」と書かれた大きな札がつけられました。
そしてみんなは、「よいしょ。よいしょ。」と声をかけながら、その包みを荷馬車の上に乗せました。
「さあ、よし、行こう。」
馬はプルルルと鼻を一度鳴らすと、青く澄み渡る向こうの野原の方へ、ゆっくりと歩き出しました。
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