これでいよいよ、宴会に連れていってもらえるものと思ったからです。
ところが、まま母は、
「だめだめ、灰かぶり。
おまえには着物もないじゃないか。
おまけに、おどりかただって知らないだろう。
みんなの笑いものになるだけさ」
と言いはなったのです。
それを聞いて女の子がわっと泣きだすと、まま母は、こう意地悪く言いました。
「それじゃあ、今度は一時間以内に、灰の中から、お豆を『ふたつの皿』いっぱいにひろい出せたら、いっしょに連れていってやるよ」
でも、心のなかでは、
(そんなこと、絶対にできっこないさ)
とバカにしていたのです。
まま母がふた皿ぶんのお豆を灰の中にめちゃくちゃにぶちまけてしまうと、女の子はまたうら口からお庭へ出て、大きな声で呼びかけました。
「かわいい飼いバトちゃんに、山バトちゃん、それからお空の下の小鳥ちゃん、みんなでここへ飛んできて、あたしのお豆ひろいをお手伝いしてちょうだい!
いいお豆は つぼの中、
わるいお豆は ごはんのぶくろへ。」
その声をききつけて、たちまち、白い小バトが二羽、台所からはいってきました。
つづいて、山バトが、何羽も何羽もはいってきました。
そのうちに、バタバタ、バタバタと羽の音をたてながら、空の小鳥たちが一羽残らず集まってきて、灰のまわりにおり立ちました。
小バトたちはかわいい頭を下げて、コツコツコツとお豆をつつきはじめました。
すると、ほかの鳥たちも、みんな一緒になってコツコツコツとお豆をつつきだしました。
そして、いいほうのお豆は、ひと粒残らずお皿の中にきれいにひろい入れたのです。
こうして、三十分もたたないうちに、みんなは灰の中からお豆をすっかりひろい出して、また外へとびだしていきました。
そこで女の子は大よろこびで、お皿をまま母のところへもっていきました。
今度こそ、きっと宴会につれていってもらえるものと思っていたのです。
ところが、まま母は、こう言い放ちました。
「なにをしたって、おまえはダメだよ。
おまえなんかいっしょに連れていけるわけがないだろう。
だって、きれいな着物もなけりゃ、おどりもできないじゃないか。
おまえなんかを連れていったりしたら、わたしたちが恥をかくにきまってるよ!」
こう言いおわると、まま母はくるりとむこうをむいて、お高くとまったふたりの娘を連れ、さっさとお城へ出かけていってしまったのでした。うちにだれもいなくなりますと、灰かぶりはおかあさんのお墓のハシバミの木の下へいって、大きな声でよびかけました。
ねえ ハシバミさん ゆれてうごいて
金と銀とをおとしてちょうだいな
すると、いつもの鳥が、金と銀の糸で織った着物と、絹糸と銀の糸でぬいとりした上ぐつとをおとしてくれました。
女の子は、おおいそぎで着物をきかえて、宴会へでかけていきました。
でも、ねえさんたちにも、まま母にも、これが灰かぶりだとはわかりません。
たぶん、どこかよその国のお姫さまだろうと思っていました。
金の着物をきた灰かぶりはそれほど美しく見えたのです。
三人は、これが灰かぶりだとは夢にも考えてみませんでした。
いまごろ、あの灰かぶりはうちで、きたないもののなかにすわって灰のなかから豆でもさがしているだろうと思っていたのです。
灰かぶりのすがたを見ますと、王子はさっそくむかえにでて、その手をとって、いっしょにおどりはじめるのでした。
そして、ほかのものとはだれともおどろうとはしませんでした。
ですから、王子はいちどとった灰かぶりの手を、いつまでもはなしませんでした。
だれかほかのものがやってきて、灰かぶりといっしょにおどりたいといっても、王子は、
「このひとはぼくの相手だよ」
と、いって、ことわりました。
おどっているうちに、日がくれましたので、灰かぶりはうちにかえろうとしました。
すると王子は、
「ぼくがいっしょにおくっていってあげよう」
と、いいだしました。
というわけは、王子は、この美しいむすめがどこのむすめなのか、知りたかったのです。
でも、灰かぶりは王子のそばをうまくすりぬけて、ハト小屋にとびこみました。
王子がそとで待っていますと、やがて、灰かぶりのおとうさんがでてきました。
そこで、王子はおとうさんに、いまよそのむすめがこのハト小屋にとびこんだ、と、おしえてやりました。
その話をきいて、おとうさんは、
(いまはいったのなら、それは灰かぶりのはずだが……)
と、思いました。
そこで、おとうさんはおのとなたをもってこさせて、ハト小屋をまっぷたつにたたきわってみました。
でも、なかにはだれひとりおりません。
それから、みんながうちのなかへはいってきますと、灰かぶりはいつものよごれた着物をきて、灰のなかにねころんでいました。
そして豆ランプがひとつ、煙出しのなかでぼんやりともっていました。
つまりそれは、こういうわけだったのです。
灰かぶりは、ハト小屋のなかにとびこみましたが、すばやく小屋のうしろからとびだして、あのハシバミの木の下へかけていったのでした。
そこで、きれいな着物をぬいで、お墓の上におきますと、いつもの鳥がそれをどこかへもっていってしまったのでした。
いっぽう、灰かぶりは、それから、ネズミ色のいつものうわっぱりをきて、台所へはいって、灰のなかにもぐりこんでいたのです。
そのつぎの日にも、また宴会がもよおされました。
おとうさんとおかあさんと、それに、ふたりのねえさんたちがでかけてしまいますと、灰かぶりは、さっそく、ハシバミの木のところへいって、よびかけました。
ねえ ハシバミさん ゆれてうごいて
金と銀とをおとしてちょうだいな
すると、いつもの鳥が、きのうよりも、ずっとずっとりっぱな着物をなげおとしてくれました。
灰かぶりがこの着物をきて、宴会の席にあらわれますと、だれもかれもがその美しさにあっとおどろいてしまいました。
ところで、王子は、灰かぶりのくるのをずっと待っていました。
ですから、灰かぶりのすがたを見ますと、すぐにその手をとって、灰かぶりとばかりおどりつづけました。
だれかほかのものがやってきて、灰かぶりといっしょにおどりたいといっても、王子は、
「これはぼくの相手だよ」
と、いって、ことわりました。
そのうちに、日がくれましたので、灰かぶりはうちにかえろうとしました。
すると、王子はあとからついていって、灰かぶりがどこのうちにはいるか見ようとしました。
ところが、灰かぶりは、王子のそばからすばやくにげだして、うちのうしろの庭のなかにとびこみました。
庭には美しい大きな木が一本はえていて、それには、まことにみごとなナシの実がなっていました。
灰かぶりはリスのようにすばしこく、この木によじのぼって、たちまち、枝と枝とのあいだにかくれてしまいました。
そのため、王子には、灰かがどこへいってしまったのやら、わからなくなりました。
でもそこで待っていますと、やがて、灰かぶりのおとうさんがやってきました。
そこで、おとうさんに、王子はいいました。
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