神州天馬侠

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第89話

しかし、言葉は一切かけず、そのままスタスタと通り過ぎていきました。「あいた……どなたですか……ありがとうございました。本当に、ありがとうございました……」竹童は遠ざかる足音に向かって何度も礼を言いましたが、両手で顔を押さえているため、どんな...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第88話

その時、ギュッとひっつかまえてやればいい」「ああ、おいらもそう思って、北国街道から雪の降る橡ノ木峠を越えて、この京都まで来たけれど……まだ鷲の影さえ見当たらないんだ」「そう短気なことを言ったって無理だよ。物事には何でも辛抱が肝心だからな……...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第87話

「それとは違って、世にも不思議な噂でござる」 蔦之助は伊那丸の顔を仰ぎ見ながら言いました。「若君、どうか驚かないで聞いてください。その噂というのは、お家滅亡の折、あえなく討ち死になさったと人も信じ、また我々までもが疑わぬ……四郎勝頼さまのこ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第86話

しかし、京都は徳川家の勢力圏ではありません。どうしても羽柴側に手配を頼みたいという懇願です。事件も人物もただ事ではないため、どう返事をするべきか、三人の旗本たちは口々に相談していました。「ふむ……勝頼が、か」 秀吉もこれを聞くと、しばらく目...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第85話

この分で一晩降り続けば、お宮もすっかり埋もれてしまい、山の木々も二、三尺(約60~90センチ)ほどに小さく見えてしまうかもしれない。「オオ、寒ッ!」 あまりの寒さに耐えかねて、お堂の中から飛び出してきたのは一人の少年だった。寒いはずである。...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第84話

間諜でもないらしい」「かしこまりました」石弥が立ち上がり、一同が散らばりかけたその時です。四十九間の長廊下を、取り乱して駆けてくる人影がありました。小谷の方を先頭に、局や侍女など奥の者ばかりが、それぞれ鞘を払った薙刀を構え、雪洞(ぼんぼり)...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第83話

「もし、伴天連さま」きれいな侍女たちが三、四人、駕籠から降りて腰をかがめました。伴天連に化けている呂宋兵衛と蚕婆は、もっともらしく祈祷の手を止めると、「はい、何かご用でござりますかな」「あの駕籠の中においでなされますのは、ご城主さまの奥方、...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第82話

どさくさに紛れて、甲州から信濃の国を我が物にして、こっそり領分を広げてしまった。……だが、ゆくゆくの天下取りは、どうしても秀吉だろうな。北ノ庄の柴田勝家、こいつも指をくわえてはいまい。今に秀吉と、のるかそるかの大勝負だ。……うむ、のるかそる...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第81話

ザアッと舷(ふなばた)から二度目の波頭が押し寄せ、鯔を海中へ巻き返そうとしたが、海賊の部下たちはこれこそ山賊の使う蛮流幻術による変身だと勘違いし、我先にと手づかみにしようと競い合った。しかし、死に物狂いで跳ね回る魚は、人間一人を捕まえるより...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第80話

これで命も無事だったし、なにか食べ物にもありつけるだろう……」すぐにキョロキョロと見回して、漁師が干していた小魚を見つけると、火で炙ることもせず、引き裂いて食べ始めました。食べながら波打ち際を見ると、黒い蛮衣を着た大男が、小手をかざして熱心...
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