神州天馬侠

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第149話

「隠密だ、隠密だーッ! 伊那丸の隠密が入り込んできたぞ! 誰か来てくれッ――」 そこで蛾次郎が大声で叫んだので、竹童はぎょっとして、その悲鳴を封じるべく、思わず脅しに使っていた火独楽を、「こッ、こいつめ!」 と、相手の横顔めがけて叩きつけた...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第148話

城内の者ならば、なにも好んであんなところにひそんでいる必要はあるまい。第一、なんだかその影も大人にしては少し小さい。「ははあ」思い当たることがある。奥庭で殿さまが飼っている猿――あの三太郎猿じゃないか。とすれば、抱いて寝てやろうか、あいつは...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第147話

だから、いきなり門から入ることはせず、こっそりと裏へ回ってみたり、壁の板に耳をぴたりとつけてみたり、窓の節穴から中をのぞいたりしてみると――あぁ、天のたすけか運命のめぐり合わせか、寝ているどころか、普段よりもずっと大きな声を出して、あの耳障...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第146話

それよりは、お前が伊勢参りの道中でさらわれたという、末の男の子を捜し出して、その子を頼りに暮らすのがよい」「はい……ですが旦那さま、そんなことは、とても望めないことなのでございます」「いや、世の中には十年ぶり、二十年ぶりなどで母子が再会した...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第145話

その少女の話で、前後の事情、裏切り者の毒水の詭計、咲耶子の働き、またそのために捕らわれの身となったことなど、すべて明らかに知ることができた。ただ一つ、わからないのが竹童の行方。これには伊那丸もいたく心を痛めたが、いまは落人同様の境遇ゆえに、...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第144話

「あれっ?」独楽を目で追っていた見物たちの視線は、ふわっと宙をさまよった。一番驚いたのは蛾次郎太夫である。「手の内にあるはずの玉を取られた」という言葉通り、彼はパニックになって「おや、コマは? コマはどこへ行った?」とキョロキョロと見回した...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第143話

彼は城下の馬場の外れに立って、皿回しの大道芸人の口上を真似し、例の竹生島で菊村宮内からもらってきた水独楽の曲回しをやりだした。不思議な独楽の乱舞を、かれの技術かと目を丸くする往来の人や暇人たちが、次々と銭や拍手を投げる。――蛾次郎はそれをか...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第142話

おとなしくして……」 ふところから刷り物の紙を取り出し、仲よくひとりへ一枚ずつ配ってあげます。見ると、なるほど、子供が欲しがりそうな美しい刷り物です。紫色の地に、金色のインクで地蔵様のお姿が刷られています。そしてその脇には、こんな文句が書い...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第141話

「おっ、人がいる……」 その通り、人がいます。女性です。とても美しい人でした。琴台(きんだい)の上に乗せられているのは、二本の弦を持つ焼桐の八雲琴(やくもごと)。彼女は心を静めてそれを奏でています。すると、ふいに琴の手を止めて、蛾次郎のほう...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第140話

「まだ朝飯が配られませんね」「寝るから起きるまで、食うことばかり言っていやがる」「いえ、私は何ともないですが、親方がお腹を空かせているのではないかと思いまして」「余計な心配をするな」「へい」「それより貴様も谷間へ降りて、なぜ皆と一緒に働かな...
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