吉川 英治

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第159話

秀吉は、人の考えなどには頓着しない様子で、ますます打ち解けた風に床几を勧め、「ところで、本日はどのような用件で?」「はっ」 信濃守は、よそへ向けていた意識を呼び戻し、「ほかのことではございませんが」「うむ」「詳しくは主人の書状に認めてござい...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第158話

そして、百川の末に青々と澄んだ浪華の海には、山陰、山陽、五畿、東山の国々から、寄進された巨材や大石を積み込んだ大名の千石船が、おのおの舳先(へさき)に紋所の旗を立て並べ、満帆に風をはらんで、まるで船の陣形を組むように、四方の海から整々と入江...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第157話

男たちは真っ黒になって茶店の入り口になだれ込み、宮内があっけにとられている隙に、床几(しょうぎ)の上に置いてあった地蔵菩薩の笈摺(おいずる)を、ひとりの男が土足でガラガラと蹴り落としました。「ううむ……」宮内の目尻が、怒りで真っ赤に裂けまし...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第156話

おお、それから鞍馬の竹童も」「えッ、竹童もか」宮内は久しぶりに、あの気に入っていた少年のことを心に思い浮かべました。そしてその竹童も無事にこの館を破って逃げ延びたと卜斎から聞き、敵でも味方でもないけれど、なんとなく嬉しく感じました。虹色の陽...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第155話

「うーむ、遅かったか!」熊蔵は、余一が泣いているのが馬鹿らしくなってきました。「仕方がない。この上は殿にありのままを報告して、少しでも早く、他へ手配をつけるのが肝心だ」一同が手ぶらで屋根から降りようとした、その時でした。下に待機していた老臣...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第154話

「では、失礼いたします」腰を屈めてスッと下がった老臣の伊東十兵衛は、袴のひだをつまみ上げました。いま、殿の部屋に入る時は脇部屋の外に置いておいた手槍を持とうとして、そこを見ると、あるはずの槍が見当たりません。ガラガラガラと妙な音が向こうへ駆...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第153話

「狩谷はおらんか! 狩谷軍太夫はおらぬか!」しかし返事はありません。殿中はただなんとなく騒がしく、じっとしていられなくなった長安は、錠口まで急ぎながら叫びました。「誰かおらぬか! おお、伊部熊蔵はどうした!」呼び立てながら角を曲がると、出会...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第152話

「それ、蛾次郎を生け捕れ!」その中の一人がこう叫ぶと、きらめく小太刀の陣が霜の歯車のように蛾次郎の周りをぐるりと囲み、有無を言わせず、彼を高手小手に縛り上げてしまいました。「やあ、燃え上がったぞ」「遅れては一大事だ」「奥へ、奥へ向かうんだ」...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第151話

ではおまえは、お使番になってこの館へ、家康さまの手紙を持ってきたのですね」「少しも早く石見守さまのお手へお渡ししなければ、役目がすみません。宿直(とのい)の方をお呼びするには、どこから声をかけたものでございましょうか」と小姓の星川余一はまた...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第150話

(矜羯羅童子、制多迦童子……)一まるで夢のようだった。一瞬の疾風。たしかに竹童の愛鷲クロのようだったが――見間違いであったかしら? 幻であったかしら? ――と、咲耶子はあとの静けさの中で錯覚にとらわれた。しかし、錯覚ではない。いまの名残で吹...
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