潜航艇「鷹の城」

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小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第15話

その古風な風見鶏が回っている岬の一軒家には、痩せてひょろ高い浜草が、漆喰の割れ目から生え伸びているほどだった。屋根は傾き、塗料は剥げ、雨樋は壊れ落ちて、蛇腹や破風は海燕の巣で一面に覆われていた。そうした時の破壊力には、歴史的で動かしがたい思...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第14話

だから、ブレーク、ベックリン、ロセチ、それにドーレの『失楽園』や、キャメロンの『水神』、『ニーベルンゲン譚詩』のデイリッツなど――ああした、すこぶる幻想的な挿絵を見るとだね……」言いかけた時、断崖の突き当たりにある岩壁に、二つの日傘が並んで...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第13話

私はそれを摘み取ろうとしましたが、いくら取っても数え切れません。やがて、誰かが悲しげに嘆く声を聴いて、私はハッと目が覚めました。「僕はフロイド(心理学者)じゃないけれどね。これは一種の、色っぽい夢じゃないかな」と検事はタバコの煙を吐き出し、...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第12話

深度計を見ながら、機関部に「いま海底に着くぞ」という声をかけようと唇を開いたとき、艇体に微かな震えを感じた。これで、艇体が完全に着底したわけである。私は底荷水槽に水を入れ、動揺を防いだのち、艇首から艇尾まで徹底的に点検させた。それが終わり、...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第11話

その森には清らかな泉がありました。疲れたジーグフリードが喉を潤そうと身を屈めたとき、突然背後から、きらめく長槍が突き出されました。そうして、肩に残された唯一の弱点を貫かれ、ジーグフリードは、あえなくハーゲンの手によってこの世を去ったのでした...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第10話

もともと素材はスカンディナヴィア神話にあり、ヴィベルンゲンの伝説やニーベルンゲン伝説など、いくつかの断片をまとめたものに過ぎません。ところが、ワーグナーによって壮大な楽劇になると、初めて新しい、生々しい息吹が吹き込まれました。それは三部作の...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第9話

ところが、この奥の部屋には、先ほどから朝枝(あさえだ)という娘がいるそうですが、こんな静まり返った場所で、盲人の鋭い聴覚が、ドアノブを回す音一つ聞き逃すはずがありません。それに、その娘は今朝、この『鷹の城』には乗り込んでいなかったはずなので...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第8話

それは、現場が扉と鍵によって閉ざされていたにもかかわらず、潜航艇の中をくまなく探しても、八住を刺したはずの凶器がどこにも見つからなかったことです。しかも周囲は厚い装甲で守られており、その外側は海なのですから、現場はまさに「三重の密室」と言え...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第7話

そして情けないことに、オーストリア国民は、その付和雷同の心理をまんまと利用されてしまったのです。聞くところによれば、その男の幽閉は一九一八年から始まっており、最初はグラーツの市街を、身体中に薔薇や蔦(つた)をまとって、まるで痴呆症か乞食にし...
小栗 虫太郎

初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第6話

いずれにしても、艇長の死と遺体が消えてしまったということが厳然たる事実であることは、そのあとに艇を引き揚げた日本海軍の記録にもはっきりと記されているのです」風はやみ、夜明け前の暗闇も去って、朝霧が晴れはじめました。犬射は、感慨深い口調で、す...
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