山本 周五郎

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山本 周五郎

初級翻訳・末っ子 第6話

平五は叔父の居間で話をしたが、その部屋はたった三畳しかなかった。窓の外には板塀に鼻がぶつかりそうなほど狭い庭があり、痩せたアオキの木がしおれた葉をだらりと垂らしている、いかにも暑苦しくて寂れた景色だった。 話はすぐに終わり、平五は十五分...
山本 周五郎

初級翻訳・末っ子 第5話

涙が止まりませんでしたよ」「二分一分となるとね」と米良が計算して言いました。「二分に一分というと、ううむ、五両一分になるのか」「それから私に預けるようになったのね」と、くには言いました。「お姉様がこの家に嫁いで間もなくのことでしたね」と平五...
山本 周五郎

初級翻訳・末っ子 第4話

侍長屋の人間や小者たちは、喜んで買ってくれましたよ」くにはもともとでのんきな性格ですが、弟のこの驚くべき告白にはよほどこたえたらしく、「情けない」「外聞が悪い」「こんなことってあるかしら」などとしきりにため息をついて嘆きました。「しかしねえ...
山本 周五郎

初級翻訳・末っ子 第3話

平五はその帰り道、榎坂(えのさか)の米良(めら)の家へ立ち寄りました。米良平左衛門(めらへいざえもん)も、助三郎の話は本当だと笑いました。「とぼけているのか、本気なのかよくわからないがね。おそらく、とぼけているんだろうと思うが」「あの叔父さ...
山本 周五郎

初級翻訳・末っ子 第2話

おやじの骨董じまんにはいりそびれたのだろう、と平五は思っているが、今年はさらに減って五人しか来なかった。平河町の森内膳。神谷町の木下杢之助。薬師小路の土方市之丞。田村小路の新庄主殿。それから榎坂の米良平左衛門という顔ぶれであった。「おやおや...
山本 周五郎

初級翻訳・末っ子 第1話

一 彼に対する一族の評 祖父の(故)小出鈍翁は云った。「平五か、そうさな、まあ悪くはあるまい、ばあさんが可愛がりすぎたから、少しあまったれのようだが、まあそう悪くはないだろう、すばしっこいところもあるし、いい養子のくちにでも当れば、案外あれ...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第51話

……ふたりの目の前はすぐに崖になっていて、その下には深い森に覆われた谷(そこはすっぽりと霧に包まれていた)が広がっていた。谷の向こう側には、甲斐駒ヶ岳の連峰の一部が、思いのほかものすごく間近に迫ってそびえ立っていた。あまりの雄大さに、彼は少...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第50話

花世はすっかり気まずそうな様子で、話題をあちこちにそらしながら、自分で持ってきたお弁当の包みを開き、もちろん半之助にも無理やり分け与えながらきれいに平らげてしまった。そして、ついにあきらめたのだろう、雨のことには一切触れず、十時すぎに半之助...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第49話

村人たちは口数が少なく、無表情で、おまけにすごく不愛想に見える。それは長い間、ほかの地域と関わらない閉ざされた生活をしてきたからだろう。だけど気持ちはとてもピュアで、細かいところまでよく気がつく優しい心を持っていた。それこそ針や糸の心配まで...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第48話

「そこもとは一つ木の安倍の縁者だろう、南部坂の昌雲寺で会ったことがあるぞ」「それがどうした」「刀をひけ、われわれは安倍の友人だ」「寄るな」千之助は叫び返した、「安倍には恨みがある、きさまたちのしんしゃくも受けぬ、抜け」抜け、と叫んだとき、千...
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