島崎 藤村

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島崎 藤村

初級翻訳・桜の実の熟する時 第1話

ふと、彼は拾い上げた桜の実の匂いをかいで、まるで大きなおとぎ話の世界に入り込んだような、うっとりとした気分を味わった。それを、若かりし日々のまばゆい幸せのしるしであるかのように、心の中で思い描いてみたのだ。これは、自分が書いたこの物語の中で...
山家ものがたり

初級翻訳・山家ものがたり 第5話

まったくもって、これほど生々しく身震いするような夢があるものだなあと、幾度も自分の悲しい心を洗い清め、あそこに見える新しい卒塔婆こそが路雪の墓地に違いない。なんと古い職人の情熱と心意気であることか。そう思えばいよいよ腹立たしく、憎らしく、自...
山家ものがたり

初級翻訳・山家ものがたり 第4話

わたくしはこの通りすっかり酔っぱらってしまっておりまして、大変失礼とは存じますが、まあどうぞ少し気楽にして、一緒にのんびり花見をしようではありませんか。わたくしは藤村と申しまする旅の者でございます。そしてわたくしは西行と申す気まぐれ者でござ...
山家ものがたり

初級翻訳・山家ものがたり 第3話

凡庸な骨が静かな庵の守りとなり、ここから幾千年の春の移ろいと哀愁を見つめ続けたいと言うならば、一時代を築いた俳句の宗匠(達人)たる者、まさにこうあるべきだと誰もが感心するはずなのに、どうにも許しがたいのは、その路雪の隠された裏の顔である。私...
山家ものがたり

初級翻訳・山家ものがたり 第2話

松や杉の梢のあいだに身を隠しながら、まるで「友達が見つかったぞ!」と言わんばかりに、惜しみなく美しい声を響かせている――いったい、この声はどこの谷の入り口から鳴り響いてきたものなのだろうか。杉の丸太をかついで山を下りていく木こりの姿が見えた...
山家ものがたり

初級翻訳・山家ものがたり 第1話

夜空を見上げて、星くずがキラキラと明るく光っているのを見つめていると、自分の心の中にも小さな星があって、心の暗闇を明るく照らしてくれているんだなぁと感じる。ちょろちょろと流れる谷間の小さな川が、草の間を縫うように流れていくのを見ていると、自...
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